「なんちゃってな図」と「ほんわかした説明(数式なし)」により分かったような気分になる?シリーズの第3回です。今回はフツーの半導体製造では避けて通れない、シリコン・ウエファについて絵を描いてみます。まあ、金属光沢の丸い板なんだけれども。古代のナントカ鏡みたいな。違うか。ウエファの上に何個チップが載るのか?それが問題だ。
シリコン・ウエファは、現時点で主流のシリコン製の半導体を製造する場合に使われる最も基本的な材料です。純粋に限りなく近い(不純物濃度がコントロールされた)シリコン単結晶を「薄くスライス」した板です。まあ、ハムみたいなシリコン単結晶を薄くスライスしたような感じっす。勿論、シリコン以外の材質の半導体製品ではシリコンでないウエファーも使われるのですが、現時点では大多数がシリコン。業界の本流っす。
見た目は銀色に輝く金属プレートのようです。けれども金属のような粘りはなく、脆いです。ガラスみたいに割れるそうです(自分じゃ割ったことないけど。)
大きさも2インチ(5cmくらい)くらいから、この先の18インチ(40cm)くらいまでいろいろあるのですが、半導体工業というものが米国発祥であった関係でしぶとくインチ系の呼び方が残ってます。しかし実際にはモダーンな製品ではミリメータ系のサイズに統一されとります。それでも、まだまだインチ系のmil、1000分の1インチなどという単位が出てくる場合があるので、慣れておかないとなりません。例えば電子工作の御供、DIP型のパッケージのピンピッチは2.54mm、つまり10分の1インチっす。インチはしぶといよ。
そういうわけで最初の図は「よく使う」ウエファを並べたものです。
直径100mmから300mmまで、インチで言ったら4インチ、6インチ、8インチ、12インチです。ここにない2インチなんていう小口径のウエファや、5インチなどというちょっと「マイナー」なサイズも無いわけではないのですが、ほとんどの工場は上記のどれかじゃないかと思います。工場を建てるときに、この工場は「xxインチ」と決めて各種の製造装置を導入するものなので、特殊なものを除いては工場を「おったてる」時代の主流の装置を入れるものでないかと。最近の主力工場は300mmでしょう。多分4インチ、6インチレベルの工場はかなり退役しているのではないかと。
上記の図をみるとウエファは真円ではなく、端っこの方に平らなところとか、切り欠きみたいな奴が見えます。平らなところは「オリフラ」、切り欠きは「ノッチ」と呼ばれるみたいです。とはいえ鋭角の切り欠きなど作ってしまうとそこから割れてしまいそうなので、上記のいい加減な図のような鋭い角ではなく、良くみると「角が丸まってる」ハズです。上記はウエファのサイズ感はそれなりに出てる筈ですが、オリフラやノッチのサイズはテキトーです。
多分、ウエファのプロの人にかかるとオリフラやノッチについていくらでも語るのじゃないかと思いますが、この老人は素人なので多くを語りませぬ。しかし、単なる平らな辺ではなく、シリコンの結晶面にまで関係性がある、加工する上での1丁目1番地だと申し上げておきます。知らんけど。
なおシリコンウエファの厚みは上記で一番デカイ300mmでも1mm無いハズです。結構薄いのね。でもそれでも「モダンでファイン」なパッケージに対しては結構分厚いようです。それで前工程終わって、後工程へ行くとウエファの裏側を削って削って削りきって薄くペラペラな状態にしてしまうことが最近多いみたいです。透けて見える厚みとか、クルクル丸まっちまうぜ、という話は聞いたことがありますが、この老人は丸めたことは有りませぬ。
チップは綺麗に縦横だしてならんでます。「ダイシングソー」というノコギリでスッパリ切り分けるので、四角にしておかんとなりません。まあ、プロセスによってはチップ複数個にわたるようなテスト用の領域があることもありすが、そこはチップにならないので無視っす。念のためダイシングソーといえばディスコ社のDAD3240の製品ページはこちら。
上記ではチップは正方形に描いてますが、長方形であればOKです。通常のチップはなるべく正方形に近くして有効な回路面積が多くとれるようにしますが、チップ面積の割に端子数が多いドライバICなどでは極端に長い長方形、針みたいな形状になることもあります。
また、丸いウエファに四角いチップを載せるので、当然、ウエファの端の方に使えない部分ができます。使えない部分はモッタイナイですが、近代的なプロセスでは「ステッパ」と呼ばれる露光装置が使われ、ウエファの全面積よりはかなり小さい単位面積毎に露光するので、丸いウエファに四角い露光領域を適切に配置するのが肝心らしいです。最近のステッパは1台何百億円もするので、その使用時間はミニマムにしてスループットを上げたいと。
なお、ステッパの回数をなど考慮せず、丸いウエファに四角いチップを配置したときの取れ数を計算するための「Dies per wafer 電卓」というものを以下の過去回で作成済です。
やっつけな日常(52) 1ウエファのチップ数、Dies per wafer 電卓の復活。
ウエファの直径と、チップサイズなどを上記ページに入力する(JavaScriptでローカル環境で計算しています)と「ざっくり何個くらいとれるか」が計算できます(イールドはまた別ね。)ウエファを売買するときは1ウエファあたりいくらいくらとお値段が分かると思うので、そのお値段を上記個数で割れば、イールド別のザックリした単価が計算できる筈(1ロット25枚のウエファから採れる個数を見てまたビックリ?)
ダイシングソーはダイヤモンドの刃でスッパリ切り分けてくれる優れものですが、ちゃんと切り取り線分の隙間は必要です。単価を計算するときのチップの占有面積は、回路部分だけでないので念のため。コマケー話なんだが。