やっつけな日常(52) 1ウエファのチップ数、Dies per wafer 電卓の復活。

Joseph Halfmoon

スマホがまだ無かった「原始時代」にも黎明あり、PalmOS機やらWindowsCE機やらモバイルデバイス使ってました。そのころ使用の自前「アプリ」にDies per Wafer電卓あり。半導体の丸い円盤、ウエファから何個チップが取れるか概算するもの。既に失われて久しかった「アプリ」をこのほど復活。というほどでもないか。

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※以下で実際にDies per Waferを計算できますが、本ページをみていただけたら分かるとおり「ページにローカルなJavaScript」で計算しているだけのチョロイものです。

WafersとDies

ごく普通のシリコン半導体製品は、丸くて薄いシリコンの板であるウェファというものの上で作られます。サイズ的には、直径 4インチ、5インチ、6インチ、8インチ、12インチといったサイズが一般的です。インチで唱えるのは、半導体技術の発祥が米国であったからに他なりません。しかし今日的には300mmウエファ(12インチ)のようにミリメータで呼ぶことが一般的かと。

厚みは1mmないのが普通です。ほぼほぼ純粋なシリコン(Si)単結晶であるウエファは、見た目は金属的な光沢のあるものですが、物理的には親類のガラスに似たような脆い性質があり、その薄さもあって、落とせば割れる儚い素材です。

通常25枚とかを「ロット」という単位にし、工場内では普通、合成樹脂製のハコにいれて持ち運ばれます。ウエファ上にゴミやらなにやら落ちると、即不良となるので、極限までホコリなど取り除いたクリーンルーム内(半導体工場は巨大な空気清浄機のようなものです)で取り扱われます。人間は最大の汚染原因です。よって、ビニールで出来たような作業着(デブにはツライ一品)やら専用の靴、頭には被り物、マスクにメガネなど体表を露出せぬようにキッチリ着込んだ上に、エアーシャワーやらなにやら通過してクリーンルームに入ります。それでも汗が飛んだりすれば、その中のナトリウムイオンがトランジスタの不良を引き起こします。ましてや吸ったタバコの煙も吸い終わった後何時間汚染源となるので禁煙必須です。

さてそのような取り扱い注意のウエファ上に、半導体の回路を形成するのですが、これが一筋縄では行きません。何十(いまやもっとか)の段階(プロセス)を経て、薄い薄い層を積み重ねていくのです。その際、半導体回路のパターンは層毎にマスクまたはレチクル(ステッパの場合)に描かれているものを、光(最近の先端プロセスではとても短い波長の紫外線)でウエファの上に超薄く塗布されたフォト・レジストなる素材に転写、その後、現像的な処理を経てエッチングされたり、不純物を打ち込まれたりとされていきます。

1枚のウエファ上に後々1個1個の製品となるDieとよばれるもの複数を同時に形成していきます。なお半導体には2流派あり、カリフォルニア流じゃDieですが、テキサス流ではBarと唱えます(最近は皆Dieか?) 同じもんです。

Dieは小さな長方形の部分です。ウエファ上で沢山ならんでいるDieを後で「ノコギリ」引きにして1個1個分離して製品とします。よってDieが三角だとか、並びがデコボコしているとかはありえません。

Dieは1個だけ作るというのは不可能で、最低でも1ウエファ分のDieは同時に出来上がってしまいます。また、商業的にはロット単位の売買になるのが普通です。つまり、1枚のウエファから1000個のDieがとれるとしたら、1ロット25枚とすると25000個が一度にできるてしまうと(イールドによるケド。)

工場とプロセスが決まるとウエファ1枚の単価はだいたいきまります。勿論、、工場の稼働率や市況にもよりますが、ここでは考えません。

ウエファ1枚の単価が分かるということは、最終的な半導体製品の原価のかなりな部分を占めるダイの単価は、以下の質問に大きく依存します。

丸いウエファの上に四角いダイが何個載ってますか? 

つまり、半導体には不動産屋的側面ありの面積勝負デス。

Dies per Wafer電卓

そこで以下の電卓プログラムを使います。過去の自前のプログラムは残念なことに失われて久しいので、今回使用のプログラムは、かの偉大な教科書

Petterson & Hennessy著、Computer Architecture A Quantitative Approach

の初版に掲載されている公式を使ってます(詳しくは本ページに埋め込まれているJavaScript読んでね。)

    1. Wafer diameter欄には、8インチなら200(mm)とか1インチ=25mm換算の値を入力。なお、本物のウエファには機械的なハンドリングのためにオリフラとかノッチという切り欠き的なものがあり、その部分は当然使用不可なのですが、上記教科書の式では無視してます。当然大目に出ます。
    2. DieArea欄には、1個のDie(チップ)あたりの面積を平方mmで入力。たとえば3mm x 2mmのチップであれば 6mm2 という塩梅。
    3. Number of test dies欄には、ウエファあたりのテストダイの数を整数で入力してください。テストダイというのは工場内部で工程管理のために使用する部分で、製品になるダイとは別のパターンが形成されているものです。ただし、工場、プロセスによって流派あり、テストダイを使わぬ(製品ダイの隙間などに潜ませる)流儀もあるので、その場合はゼロということもありえます。
Wafer diameter(mm):
DieArea(square mm)):
Number of test dies(N)):

Dies per Wafer:

 

その検証用に上記の教科書に載っている例を引き写しておきます。6インチ・ウエファ時代のインテル80486のケースです。

    • 6インチウエファ=直径150mm
    • 該当プロセス上の80486のチップサイズ、15mm x 10mm = 150mm2
    • テストダイなし

この数字を上記欄に入力し、Calculateボタンを押せば、Dies per Wafer欄に84というお答えが得られるのではいかと。多分。。。

なお、教科書にはチップ写真あり、1ウエファ上に80個の80486が形成されているとのことなので、上記式だとちょっと大目に見積もられておるようです。

なお同じ6インチウエファでも、2 x 2 mm の小さいチップだと、何個になるか計算してみてくだされ。チップサイズが小さければ安くなるのよ。

なお、ここまで計算の値には「イールド(収率)」含まれてません。

半導体は農業

でもあり、イールドを乗じないと本当に出荷できる数は分かりませぬ。それはまた次回ね。

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