前回からのCMOSアナログスイッチの実験ですが、アナデバ様の参照記事ではCD4007というデバイス(遠くからみるとCMOSインバータに見えます)をご指定です。しかし手元にはCD4007の在庫はありません。今回は、変幻自在なCD4007の代打に入れるデバイスを手元在庫から選定したいと思います。
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※2022年8月20日追記:「選定したいと思います」と書きながら、結局、以下の手持ちデバイスではCD4007の代替は無理、という結論に達しました。偉大なるかなCD4007、このデバイスのミソはMOSFETのサブストレート(バックゲート)電圧とソースに異なる電位を与えることができるところです。改めてCD4007の入手を検討したいと思います。
冒頭アイキャッチ画像にCD4007の「ほんわか」した回路図を掲げました。機能的にはPMOS、NMOS、3トランジスタずつの合計6トランジスタのささやかな集積度のデバイスです。右端の方の回路をみると「インバータ」に見えます。しかし、よくよく見てみると、結線次第で2入力ですがNAND、AND、NOR、ORもできます(追記:NAND、NORでよければ3入力も可。)そしてINV、BUFそしてアナログスイッチまで構成可能です。変幻自在です。今日こういうデバイスでちまちまロジックを作るとは思えませんが、昔、登場した当初は重宝されたんだろな~。
前回はCD4007の変幻自在さにおっ被さる形で、アナログスイッチ実験のLTspiceシミュレーションをやってみました。ぶっちゃけ、CD4007の6トランジスタのうち、以下の図の赤枠のトランジスタと端子のみ使用するモッタイナイ使い方です。
さて次回実機実験をするにあたって、問題はCD4007の現物が無いということに絞られました。CD4007は、DigiKey様にでも発注を入れれば入手可能な筈ですが、なんとか手元在庫の代打で済ませたいデス。
普通のインバータでは無理
そういえば前々回、「アンバッファ」タイプのCMOSインバータTC74HCU04APを使って、アナログ的な反転アンプ回路を作りました。74HCU04使えないの?
以下に74HCU04の「ほんわか」した回路を示しました。74HCU04は6回路入りなので、以下のインバータがワンデバイスに6個入っております。しかしガチなインバータです。4007のようにドレインが分かれているトランジスタがないのであまり細工をする余地がありません。さらにVcc/GNDとサブストレートは全て結線済なのが決定的です。これでは無理ですな。
アナログスイッチ4066ではどうよ?
世の中にはCMOSアナログスイッチという「そのものズバリな」ICがあります。古典的な型番は4066です。手元にも在庫があります。HD14066。1番ピン横のマークの懐かしさに涙がちょちょ切れる人がおられるかもしれません。多分、製造は相当古そうな在庫品。でも私はつい最近仕入れました。まだ市場在庫あり売られてます。もちろんHD(日立)に拘らなければTC(東芝)など多分以下より確実に新しいものが、確実に手に入るでしょう。
4066の中身のアナログスイッチのホントの回路は結構複雑みたいですが、雰囲気だけで描いてしまうと、こんな感じです。
4066は4回路入りなので、ワンパッケージに上記が4個入っています。スイッチとしては当然なのですが、コントロールがOFFのときはP、N両方がOFF、ONのときは両方ONです。実験では、P、N片側だけONにして動かすようなことをしているので、残念ながら適合しません。だめだなこれは。
デュアルMOSFET、FDS4897でどうよ
以下の写真のデバイスは、老舗フェアチャイルド社(現在はONセミコンダクタ社傘下)のFDS4897です。PMOS+NMOSのデュアルMOSトランジスタのデバイスです。モータとかを制御するのにも使える結構電流を流せるやつ。CD4007のような小信号向けのデバイスではありません。
でもま、MOSFETを1個ずつ制御できるデバイスとなるとこういう電気を流せるタイプくらいしか見つからないのだよね。。。
FDS4897のこれまたホンワカした回路が以下に。PMOS、NMOSがワンパッケージに入ってはいるものの、MOSトランジスタのソース、ゲート、ドレインが独立4端子が全て独立している(追記:ソースとサブストレートの電位は同じ)。
仕方ない、今回はこれか?でもオン抵抗が小さすぎてうまく測れないかも。。。大丈夫か?結果は次回。追記:一瞬できそうなことを書きましたがよく考えたらダメです。残念。)