「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の2022年9月号の実習1回目です。前回BJTでTTLでした。今回はCD4007でCMOSロジックです。アナデバ様のなされることです、1とか0とかで済むわけがありません。今回はSPICE抜き最初から実デバイスで測定に入りたいと思います。
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アナデバ様のStudentZone 2022年9月号記事(日本語版)へのリンクは以下です。
ADALM2000による実習:「CD4007」を使って様々なロジック機能を実現する
毎度繰り返しておりますが、このアナデバ様のWeb記事のシリーズは、ADALM2000というアナデバ製の学習用「万能」ツールと、ADALP2000という学習用パーツキットで学ぶシリーズなんであります。
ただ、今回勉強するCD4007(オリジナルは多分TI)というMOSデバイスは手元のADALP2000には含まれてないのでありますな。残念。
以前にもCD4007があれば使え的な回があり、「ちょっと怪しげな中華販社」からCD4007を調達しておりました。今回はそれを使って実験してみます。調達時に書いた記事が以下に。
部品屋根性(81) CD4007入手、特別サービス?2種類入っていた。動作はOK、多分。
そのときにCD4007使ってCMOS論理回路を組み立てています。今回のStudentZoneの記事と内容が被っているか?と思いましたが、ほぼほぼ被らず。
なお、本当はADALM2000(M2K)で実験するべきところ、手元には持ち合わせがなく、Digilent社Analog Discovery2を使っております。ハード的には同じようなことが可能じゃないかと思います(制御ソフトの操作性などは違うみたいですが。)
CD4007を使って組み立てたCMOSインバータの静特性を測る
CD4007はNMOSトランジスタ3個とPMOSトランジスタ3個が同一IC内に集積されているチップです。P、Nそれぞれ3トランジスタのサブストレートは共通です。ソース、ドレインが独立の端子になっているものがP、N1個づつ、ドレイン共通でソース独立のP、Nペアで各1個、ソース、ドレインが独立だけれどソースとサブストレートが接続されているものがP、N各1個という塩梅です。おかげで結線次第で3入力までのインバータ、バッファ、NAND、NORなど作り放題。トランスミッション・ゲートなども構成可能です。
最初はソースとサブストレートが接続されているP、N各1個を組み合わせてインバータを構成し、その静特性を測れとの思し召しです。
その準備のため、まずは入力C1(黄色)に100Hz、2.5V振幅、2.5Vオフセットの三角波を与えて時間波形を取得したところが以下に。出力は青のC2です。
さて、上記の時間波形のC1、C2の電圧測定値をXYグラフに組み合わせれば、このインバータの静特性が得られると。X方向が入力、Y方向が出力です。
そして、そのときの電流も調べておけと。電源端子の100Ωの抵抗をとりつけてその両端の電位を測れば、I=V/Rということで、電流波形が得られます。時間波形が以下に。
ちょうどP、N両チャネルが半開き?状態のところでガツンと電流が流れていることがわかります。アナデバ様はこれを
シュートスルー電流
と呼ばれているようです。日本的には「貫通電流」かと。そういえば昔アメリカの学校出た奴に「貫通電流」って英語でなんていうの?と聞いたら知らんと言われた記憶が蘇りました。ダメな奴に聞いてしまったってこと?
動特性を測る
動特性の測定のために入力波形を500kHzの矩形波に変更します。時間波形が以下に。黄色C1が入力、青色C2が出力です。立ち上がり、立下りの測定機能があるのでその値を右に表示しています。
さて、最初は伝播遅延時間です。入力の立下りから出力の立ち上がりをVdd/2の位置で測ったものがTLHだと。こんな感じ。
52nsくらいですかね。
つづいて入力の立上がりら出力の立ち下がりをVdd/2の位置で測ったものがTHLだと。
こちらは61nsくらいっす。
すでに先ほど測定機能で測定してましたが、出力の立ち上がり時間Trと立下り時間Tfです。
まずはTrから。電圧10%点から電圧90%点までにかかる時間です。
68nsくらい。
つづいてTf。電圧90%点から電圧10%点までにかかる時間です。
こちらは82nsくらいかかっているのね。ほぼほぼツールの測定結果といっしょみたいです。
インバータの特性を測るだけで疲れてしまいました。残りはまた次回。