今日は迷いました。「鳥なき里のマイコン屋」は、マイクロコントローラ(MCU)を経めぐるつもりのものですが、これってMCUに入れて良いのかどうか。しかし、「自己規定」として、microcontroller、MCUの文字が見えるので、やっぱり持ち主の判断を優先するべきだろうと考えました。さらに言えば、この「持ち主」の会社というのもこれまた迷うのです。開発元、型番的には台湾半導体大手、Androidのスマホ向けSoCなどでおなじみのMediaTek社の製品です。しかし、MediaTek社の該当製品の紹介ページから引用させてもらうと、
Please note this product is now managed and sold by AIROHA, a MediaTek subsidiary.
ということで子会社のAIROHA社に移管されているようです。というわけでMT2523シリーズ・マイクロコントローラにGo!
※「鳥なき里のマイコン屋」投稿順Indexはこちら
シリーズといっても、商品として動いていそうなものは2機種、過去に存在したらしいけれど今は見当たらないものを入れても3機種しかありません。しかし、データシートを見る限り、
Arm Cortex-M4 コア + フラッシュROM + SRAM + PSRAM + 沢山の周辺I/O
ちゃんとマイクロコントローラの必須条件、ROM、RAM、CPUを積んでいること、を満たしています。けれど、ちょっと引っかかるのが、PSRAMです。
PSRAM(疑似SRAM)はSRAMじゃない
ホンマの中身はDRAMです。SRAMに見せかけたDRAM. ネイティブなマイコン屋なら、おや、怪しいと思う筈。トラディショナルなマイコンにまずDRAM利用などありません。プロセス違うから。そうなのです。MT2523というのはSIP製品なのでした。SIP=System in Packageです。複数のダイ(チップ)を1個のパッケージの中に納めて、見かけ上は1個のLSIに「見せかける」(とは人聞きの悪い、小さくするための手段です)技術です。スマホになる前の携帯電話のころから、ともかく小さくするために発達してきた組み立て方法です。スマホがお得意のMediaTekならお手のものでしょう。それだからできる異種プロセスのダイの混載です。載っているのはPSRAMばかりではありません。
-
- FLASH
- GNSS(GPS)
MT2523Dという型番の機種は、Armコア搭載の「マイコン本体」とPSRAMとFLASHの3チップ、MT2523Gという型番の機種は、「本体」+PSRAM+FLASH+GNSSの4チップを1個のパッケージの中に格納しているようです。お陰で、機能的に、マイクロコントローラとしては大変リッチです。
-
- コアはArm Cortex-M4、浮動小数点まではいってMCUとしては上位機種
- 無線はBluetoothがもれなくついてくる
- データやプログラムを格納できるFlashは4Mバイト(普通は数百K程度)
- 主記憶はPSRAMで4Mバイト
- それ以外に本物のSRAM160Kバイトをコアの横に積んでいる(キャッシュにこの一部を割り当てる)
- SPI, I2C, UARTなどは勿論、USBもオーディオI/FもMIPIも接続可能(カメラやLCDディスプレイにもつながる)
これにGバージョンであれば、さらにGPSが使えるのです。これほど充実したマイクロコントローラ無いよな~と思ってみていて、気付きました。
これってスマホのサブセットじゃね。
スマホとして見ると、全てがくすんで見えます。コアだったらCortex-Aシリーズのスーパースカラーコア当然、それも最近はクワッドコアくらいじゃ足らない。無線はWiFiに、肝心なLTE、まだ3Gもいるし。メモリはGバイトでしょ。Mなんてありえないよ。カメラやディスプレイはつながればいいってもんじゃないんだ、ディスプレイには強力なGPUも必要だし、カメラには入力画像を処理するためのISPが必要でしょ。そうです。
スマホ向けSoCプロセッサの方からみるとかなりチープ
当然かもしれません。MediaTekはこれをつかって「スマホのお供」に使うウエアラブルな小物を作るつもりだったようです。スポーツ用なのか、ヘルスケア用なのか、
スマートウオッチ
あたりが元々のターゲットでしょう。性格的にも技術的にもスマホ=SoC側に近くて当然でしょう。しかし、一歩離れて遠くからみてみたら、
MCU(マイクロコントローラ)とSoC、ボーダないじゃん
とも思います。チップとか中身を気にしなければ、SiPであろうとなかろうと一緒でしょ。でもね、SoCとMCUの間には、半導体会社によってはあるんだ壁が、組織の壁が。