介護の隙間から(27) 服薬管理、いろいろあるけど

今回取り上げさせていただくのは「服薬管理」の問題です。お年寄り、それも要介護、要支援ともなれば、各種の持病あり、服薬は必須でしょう。その上、記憶力、認知の問題もあり、この管理はなかなか難問なようです。一般社団法人全国介護者支援協会さんのサイトに、ちょっと古い(2012年)資料ですが、この問題に関するアンケート調査結果(介護する側の人に対する)がありました。引用させてもらうと、

服薬管理は在宅介護者の大きな負担

だそうです。資料を拝見すると要介護度があがるほど、薬も増えれば、苦労も増えるという傾向が見てとれます。当然、介護する側の苦労だけでなく、服薬する側の高齢者の方には、薬を「ちゃんと飲めない(飲み過ぎる危険もその中にあります)」リスクが大。そんな「服薬管理」に電子デバイスは何か貢献できる部分があるのでしょうか。

まずは電子デバイスに頼らない、トラディショナルな管理方法から。ある程度自立して生活できる方向けの方法だと思います。

  • ピルケース
  • 服薬管理カレンダー

100円ショップなどでも服薬管理用のピル・ケース、曜日毎、あるいは曜日に加えて、朝、昼、晩に寝る前などのしきりがあるものなどが売られています。大抵のものは1週間分なので、そこに薬を詰めて置き、表示の通り、月曜の朝はこれ、と飲んでくれればなんの問題もありません。介護者は週に一度薬を詰めるだけ。

しかし、飲み忘れるのですね。

もっと怖いのは、飲んだのに飲んでないと思うか、昼飲まなかったから夜2など、隣のしきりなどから重ねて飲んでしまうこと。こちらのリスクの方が大きいかもしれません。

また、薬は多くの場合、1か月単位くらいで処方されることが多いと思います。日に一度の薬が主ならば、1か月分のカレンダーに薬を入れるポケットが付いている服薬管理用のカレンダーを使うのもよろしいかもしれません。これなら月に1度詰めればOKと。しかし、忘れてしまう問題、日付や曜日を間違えた場合の重複問題などピルケース同様の問題があります。

飲み忘れを防ぐための時計つきのピルケース

なども存在します。一応、32kHzのクリスタル、LCDパネルと時計用マイコンくらいが搭載されている筈なので、一応電子デバイス応用かと。アラームが鳴ったら、薬を飲む。飲み忘れ防止にはある程度の効果がありそうですが、飲み間違いには無力だと思います。

ネットを検索すれば大量に見つかるのが、

服薬管理アプリ

ですね。服薬管理に特化(時間になったら知らせる、服薬したら何か押す、というのが基本機能だと思います)したものから、薬局のお薬手帳連動型までいろいろ見つかると思います。普段からスマホを手放せず、マメに入力できる人であれば何の問題もないのですが、

スマホを使えて かつ マメに入力できる

高齢者(要介護者)の方がどのくらいいるか、というと、勝手な想像ですが今のところ極めて少ないのではないかと思います。冷蔵庫管理のアプリと一緒の問題です。そこで薬を出す管理までコンピュータで全部やってくれる装置があれば、というのは多くの人が考えつくのではないかと思います。飲み忘れないように知らせるだけでなく、間違えたり、2重に飲めないようにもなっているような。当然、そういう装置が存在します。とりあえず日本製、大手企業の2機種のみ、以下にリンクを貼り付けてみました。

  1. エーザイ。見守り支援機能を搭載した服薬支援機器「eお薬さん」の販売開始
  2. クラリオン。服薬支援ロボ KR-1000A

どちらも定められた時間に、定められた薬だけを飲めるように管理してくれる装置です。一定の時間が過ぎるとある時刻用の薬は取り出せなくなるので、2回分続けて飲んでしまう、といったことは起こらないようになっています。

2社の製品を比べると、狙っているところの違いが少し見えてきます。エーザイの方は、服薬管理兼見守り用途用のクラウドに接続し、介護者がこれを使って服薬状況を管理できるようになっています。勿論、情報は暗号化されています。また、介助者にリマインダー用のメールも配信可能なようです。クラウド利用なので当然ネット環境が整っているか、導入する必要があります。そして、薬の「搭載量」は1週間分。なお、薬を介助者以外が取り出せないように鍵もついています。おひとり暮らしの高齢者の方が在宅で使って、見守る側が遠隔地からクラウド介して見守るという目的にも使えると思います。一種の遠隔見守り装置と考えてもよいかもしれません。また、在宅以外の介護施設などでの運用も考えている感じのスペックじゃないかと思います。

それに対してクラリオンの方は、「搭載量」が大きいです。1か月分。通院でもらってくる処方をそのままロボットが飲み込める形です。運用としてはスタンドアロン型です。ネットにつなぐ必要もなく、これ一台で完結。一応、USBメモリにデータを書き出せるようになっており、パソコンにデータを持って行っての管理も可能なようになってはいます。こちらは、見守りには向かず、服薬管理に絞り込んだ感じの装置になっています。ちょっと勝手なことを書かせてもらうと、希望小売価格、ちと高めじゃないかと。ホームページを見る限り、これだけのカッコいい装置を、当面それほど数量も見込めない市場に出しているので、このくらいは、という気持ちは良く分かるのだけれど、エーザイより高いのはちょっとね。実売価格は違うのでしょうかね。(エーザイの方が発表は後)

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