時々、米国には変な、というと申し訳ありませんが、ユニークな会社が存在します。このCybernetic Micro Systemsもそのような会社の一つではないかと思います。シリコンバレーの中心地、スタンフォード大あたりからだと、海岸の山地(結構高い)を越えて、太平洋の方まで出ないとなりません。当然「バレー」の中ではありません。お休みのドライブには良いかもしれませんが、ビジネス向けのロケーションではありませんな。この会社のメインは、ステッピングモーターのコントローラなどだと思うのですが、あるのです8051が。それもかなり「ユニーク」な味付け。
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まず、この会社の8051コアの製品名は「P-51」というのですが、
マイコン紹介ページの頭には P-51 とかかれた飛行機の絵
そうです水冷レシプロ(プロペラ)戦闘機です。もうお分かりでしょう、第2次世界大戦の米国戦闘機の傑作P-51 マスタング(ムスタング)です。単なる型番のごろあわせだと思うのですが、それをそのまま使っているところ、この会社の「乗り」が分かるというものです。その後に続くのは、以下の誇らしい一文。
The P-51 “Peripheral 8051” is a new concept:
言ってくれます、新機軸だと。なぜ彼らがそういうかは、このMCUには「ホスト」が要るからということなのです。ホストのバスに接続されて、プログラマブルな周辺回路としてホストのために動作するMCU、「どうだ、新しいコンセプトだろ」、というのです。でも、年寄りは誤魔化されません。
昔あった UPI-41シリーズと同じコンセプトじゃん
UPI=Universal Peripheral Interfaceです。41=8041、インテル8048シリーズ8ビット・マイクロコントローラの一族であり、UPI-41は8041の別名です。8048一族は、このシリーズで「レガシー」として追いかけている8051一族の一世代前のインテルのMCUで、これはこれで世に蔓延ったのですが、8051登場とともに世代交代していったものどもです。その中でも8041は特殊な石で、パソコン用のプロセッサ、8088とか80286などのバスの先っぽにつながって、周辺回路として動作させることができるものでした。今のパソコンの源流であるPC/AT(80286がCPUだった)の場合、8041のメモリ増版8042がキーボードコントローラとして使われていました。キーボードの本体には8048が居て、キーをスキャンし、それを本体側の8042に送信するのです。すると8042がホストが読めるキーコードの列にしてホストに渡す、といった8048ファミリ内分業でありました。
このP-51、まさにこのコンセプトじゃありませんか。ただし、さすがにそのままのパクリでもなく、プログラムメモリは、ホストからダウンロードできるRAMです。
ROM、RAM積むのがマイクロコントローラ
の「お約束」なので、このP-51はちと外れています。しかし、Flashベースのマイコンなど、ホストからプログラムROMを書き換えられるの普通でしょ、ということで、こちらではマイクロコントローラに分類いたしました。なにせ、8051コアですし。
そして肝心のホスト・バスは何につながるのというと、これまた懐かしいレガシーなバスが登場です。
ISA PC104
ISA=Industry Standard Architecture です。IBM PC/ATの拡張スロットに出ていたバスなのです。登場は1980年代。40年近い年代もののパラレル・バスです。8051もレガシーなデバイスですが、ISAバスも正真正銘のレガシー。しかし、未だに生き残っているのは、PC104という規格のお陰だと思います。PC104は産業用のボードコンピュータなどのために、ISAバスをベースにコネクタなどを定義した規格で、結構ヘビーデューティな用途向けにいまだに使われているようです。初期はx86系のCPU(386世代くらい)をそのまま使っていたのだと思いますが、今ではArmベースのボードなどもでているらしく健在です。(といっていまさら大ブレークするようなものではなく、ニッチなところで、細々と続いてきたという感じだと思うのですが。)
P-51は、PC104規格のボードにでも使えば、プログラム可能な汎用周辺回路、になるわけです。しかし、正直いって、
かなりマニアック、誰が買っているのか?