介護の隙間から(18) 介護/見守り用途とセンサ

JosephHalfmoon

ここまで介護保険適用になる徘徊検知機器を中心に調べてきました。ここからは少しスコープを広げ、介護保険適用にならない各種の見守り機器についても調べていきたいと思います。「徘徊」には当てはまらないのだけれど、「見守り」は必要というシーンは多いと考えられるからです。第2回に要介護度とその対象者の人数の統計を引用しましたが、介護保険でサービスを受けている方々の約半数はそもそも「徘徊検知機器」の貸与の対象にはなりません。そして要介護度2以上だからといって徘徊検知機器が必要かと言えば、そんなことはないわけです。要介護者の方々に必要なケアは千差万別、要介護度の数字でデジタル的に分けられるわけもなく、また、介護する側の事情も千差万別でしょう。介護保険の福祉用具貸与の対象にならない「支援は必要だけれど、自分で結構やれる」方々に対してこそ、電子デバイスによる「見守り」は有効なのではないか、とも思われるのです。

以下の表は、電子デバイスでサポートできる「見守り」ジャンルとそこで使われている/使えそうなセンサを列挙したものです。

離床検知/ベッドからの転落防止マット型センサ
荷重センサ
赤外線センサ
超音波センサ
クリップスイッチ
人感センサ
呼吸/心拍モニタ(ベッド内)ドップラーセンサ
圧力センサ(マット)
生活リズム温度センサ
湿度センサ
人感センサ
スイッチ
イメージセンサ
加速度センサ
屋内事故警報スイッチ
加速度センサ
音センサ
イメージセンサ
外出/徘徊開始検知ドアセンサ
マット(フロア)型センサ
人感センサ
RFID
イメージセンサ
位置検出(屋外徘徊)GPS
特小ビーコン

最初にあげたのは「離床検知」と「ベッドからの転落防止」です。「離床検知」は「徘徊検知」の主要な手段の一つ(介護保険適用の福祉用具貸与になる)で、ベッドから起き上がって移動したことを検出するものです。同じくベッド回りを見守り、かつ、類似のセンサを利用することが多いため同じカテゴリに入れたのが「ベッドからの転落防止」です。こちらは要介護の方が、ベッドから転落するような危険な姿勢になったこと(あるいは転落したこと)を検出して警報するものです。この分野で使われる主要なセンサの一つが、ベッドやベッドサイドに敷いて用いるマット型(床に敷く場合はフロア型とも)のセンサです。身体の重さを感知して信号を出力するものですが、電気的に検出するもの、内部の空気圧の変化を検出するものなどいくつか種類があります。また、同様なことをベッドの足に取り付けた荷重センサで検出する方法もあります。荷重以外にでも、人感センサ(パッシブな赤外線センサ、ドップラーセンサ)、赤外線センサ(赤外線LEDとその検出器の組み合わせ、あるいは赤外線レーザによる測距センサ)、超音波センサ、単なる紐とスイッチの組み合わせなどが、離床、転落の検出のために用いられます。

同じくベッド上でのセンシングなのですが、目的が異なるのが、「呼吸/心拍モニタ」です。介護対象の方のバイタルをモニタすることで、眠りの状態を見守り、また、異常を把握しようとするものです。ただしこの機能を使って「離床」も把握できるのが普通なので装置としては上記の「離床検出」目的と合わせてしまっているケースも多いです。センサとしては、24GHz帯などの無線を使うドップラーセンサや、空気圧式のマットの空気圧を高精度の圧力センサで拾う方法が用いられます。

「生活リズム」の遠隔での見守りは、単純な装置から各種装置を組み合わせた「サービスビジネス」形態まで非常に多岐にわたります。スマートホーム的なネットワーク機器との連動も考えられる分野です。介護保険適用でない分野で電子デバイスの需要が最も大きいのがこの分野だと考えます。電気ポットや携帯電話内蔵の歩数計(加速度センサ応用)からメールを飛ばすようなシステムはこの分類に含められるでしょう。この分野では、インターネット接続あるいは3G/LTE回線利用の接続があることが前提となります。単純な温度センサ、湿度センサでも生活パターンによる変化がモニタできますし、熱中症の恐れのある室内温度になっていないか、など異常も検知できます。また、人感センサで、各部屋などを見守れば、通常のパターンなのか異常なのかわかります。場合によっては、見守り対象の方に積極的にボタンを押してもらうことで、生活リズムや服薬の管理をするようなシステムも存在します。当然、イメージセンサにより動画、静止画での見守りもここに含められます。単純なウエブカメラでの動画垂れ流しでも見守りは可能ですが、撮影している画面の動きの解析や、人感センサ等と組み合わせて、録画にトリガを掛け、メールなどでの通知機能と連動させる、あるいはクラウド上のストレージと連動させるようなシステムが存在します。

次の「屋内事故警報」は、生活リズムのような多くのデータからのモニタリングとは異なり、転倒事故などの突発事故対策です。「生活リズム」をモニタリングするための仕組みのいくつかはこの目的でも使用されます。もっとも単純で直接的な方法は、無線スイッチを持ち歩いてもらって、事故が起きてしまったら、本人にボタンを押してもらう、すると連動する緊急通報機能が動作するという方法でしょう。

その次の「外出/徘徊開始検知」は、「生活リズム」の見守りでも外出した、帰宅した、といった見守りは必要ですが、「徘徊」の場合は、より切実に外へ出てしまうポイントの検出ということになります。このため、「徘徊検知機器」の場合、出入り口での動きを検出すると「声掛け」をする(スピーカから音声を流す)ようなシステムもあります。ともかく出入り口を見張ることになるので、使用されるセンサは、ドアセンサ(多いのは磁気スイッチ)が基本になります。人感センサや踏むと反応するマット(フロア)型センサを出入り口にしかけるという方法でも可能です。ただし、出入り口は要介護の方だけでなく他の人も通過するようなケースでは誤報が問題となるので、その識別のため、アクティブ型/パッシブ型のRFIDを使用しているシステムもあります。対象者の方にRFIDをもってもらうために、靴に取り付けるタイプや、バッグに取り付けるお守り型のタイプなど各種の工夫がされています。また、警報を出したくない人にRFIDをもってもらい、RFIDを持たない人が人感センサ前を通過すると警報を出すようなシステムもあります。当然、出入り口でもイメージセンサで動画で見張りをすることはできますが、中には顔認識を行い、予め登録された人の顔を検出すると警報を出すようなシステムもあるようです。

最後は屋外での位置検出です。これは対象者の方がスマートフォンなど持ち歩いてもらえるケースであれば技術的な問題はありません。問題になるのは「徘徊」のケースに限られます。やはり基本はGPSでの測位ですが、自宅付近、かつ介護保険適用のケースでは、特小ビーコンを使っての測位のシステムも存在します。

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