浴室事故は交通事故より死亡例が多いそうです。ヒートショック、転倒など危険因子が浴室には多数あるからだと思います。そのため高齢者向けの浴室の安全対策は各種存在しています。まずはプライマリな選択として、事故を起こさないようにすることが先決なので、浴室のリフォーム等を通じて
- 浴室暖房、断熱材などのヒートショック対策設備
- 転倒防止用の床、出入り口、手すりなど
- 転倒および溺れ事故対策のある浴槽
物理的な対策を施すのが基本であると思います。しかし、事故になりかかった、あるいは事故になってしまった場合を早期に検出して知らせる「見守り」機能は、最後の歯止めとなり得ます。電子デバイスが主として活用されるのはこの部分であろうと考えます。今回は、浴室向けの見守り装置を調べてみることにいたします。
まずは、浴室内からの「緊急通報」装置をいくつか列挙してみたいと思います。この場合の想定は、入浴中の人が、「自ら」緊急事態を通報する、というものです。なお、最近の給湯システムの多くでは、浴室内設置の給湯コントローラと浴室外設置の給湯コントローラ間で何等かの通信ができると思います。このような機能を使えば、特に専用の通報装置がなくてもなんらかの通知はできそうではあります。しかし、給湯コントローラのチャイムなどが緊急通報には適さない場所にあるなどのケースでは専用の通報装置がある方が確実であろうと考えます。
もともとこのシステムは、レストランなどでの「呼び出し」ボタンとしてよく見かけるタイプのものです。ボタンを押せば、小電力無線で遠くのアラームが鳴る、という一方方向の通信。通常の卓上型の送信機とは別に、浴室向けと銘打った送信機が存在します。型番は
ECE1704P
426MHz帯の小電力無線。一応通信距離は40m目安。単4電池2本で日に10回通知(緊急通報用途であれば、そんな頻度で使うことはないでしょうが)で1年。気になる防水性能ですが、「防浸型」とは書いてありますが、取説等には明確に防水規格は記載されていませんでした。これと家庭向けの受信機を組み合わせれば、お風呂場からの緊急通報を所望の場所で受けられるという仕組みです。わざわざ大がかりな工事をしなくても、送信機を壁に取り付けるためのホルダを設置すれば取り付けられるので設置は非常に簡単。
似たような防水ワイヤレスチャイムシステム(特定小電力)は、ELPA(朝日電器)にもありました。通販サイトなどでは在庫品がまだ売られれているのだと思いますが、ホームページ上では「生産完了品」と表示されていました。残念。
センサ専門会社の竹中エンジニアリング社も
という装置(特定小電力)を出しています。こちらはヒモが付いているので、ヒモを垂らしておいて、浴槽の中やトイレに座った状態からでも通報できるところがミソでしょうか。見通し100mの通信距離、単4電池2本で日に10回発報で5年というスペックです。中継器なども出しているので、それらを使えば距離を伸ばすことは可能に見えます。
ここまでは、入浴中の人が自ら通報するタイプでしたが、自分じゃどうしようもないような場合もあり得ます。それらに対処できる、入浴中の人の異常を感知したら緊急通報を行うとともに、浴槽の排水など物理的な対処まで行えるようなシステムも存在します。
長寿タスカルの方は、入浴を検出するセンシングは焦電型人感センサ(PIRセンサ)による検出に留まりますが、検出後のアラート送信先の対応装置がなかなかバラエティに富んでいます。人感センサによる検出なので、動きが止まってからの時間による検出です。まず停止40秒で本人向けに「警報おくっちゃうけど大丈夫?」的な音と光での通知、それに反応ないとその10秒後に発報という段取りです。単純に離れた場所にある受信機に警報を送るというだけでなく、オプション品ですが、外部緊急排水ポンプ起動、電話回線を通じた外部への緊急通報、玄関ロックの自動開錠といったことまで無線でトリガすることができるようです。入浴時のセンシングが焦電センサだけという点が検出精度の面でちょっと引っかかるのですが、その後の対処は非常に充実していると思います。外部への緊急通報機能、玄関ロックの自動開錠などは独居の高齢者宅などに向いた機能ではないかと思います。
これに対してバスセーフの方は、入浴時のセンシング機能に見るべきものがあります。浴槽に入った、出たというトリガは「ビームセンサ」(詳細不明)での検出ですが、入浴中のバイタルを浴槽内に設置したマットセンサで拾うようになっています。呼吸と脈拍が取れるようなので、誤発報は減り、異常検出の確度はかなり高くなるのではないかと期待できます。また、マットセンサには、転倒防止効果もあるのはちょっといいかもしれません。マットセンサで拾ったバイタルから検出した異常を無線で離れたところにある受信機に送信します。自動排水についてはオプションが存在するようです。なおこちらは「本商品は施設向けの商品です」と注釈が書かれています。また、この手のバイタルを取る装置にはありがちなのですが、以下のようなお断りが書かれてもいます。引用します。
この商品は自己健康管理用であり生命救済・生命維持を目的とした商品ではありません