大雨が降る度、また地震の度に聞こえてくる土砂災害、がけ崩れ、斜面の崩壊。これだけ問題になっているのだから、法面(斜面)を見張る(見守る)技術もいろいろある筈と思って調べ始めました。すると思った以上にいろいろあります。それに、活躍している電子デバイスの種類も実にいろいろ。これは食いつかないわけにはいかないです。しかし、いろいろ調べる切り口がありすぎます。まずは第一回ということで、ともかく活躍する要素を列挙、分類し、おぼろげながらの全体像を描きたいと思います。
まず見守る対象ですが、
- 自然斜面
- 土木工事の結果としてできる法面
これは両方ともカバーすべきかと思います。崩れてしまえばどちらも災害。
もっとも基本的な見守りの方法は
目視
それを客観的に行うならば人手による測量(そうそうできないが)
であると思います。しかし、ここで取り上げるべきは(本投稿の趣旨からして)、
24時間365日の監視=装置(電子デバイス)によるもの
に絞っていきたいと思います。(一部そうじゃないものも含んでしまうかもしれませんが、ゆるゆるなのでご勘弁を)
登場する要素技術をまず大まかに分類すると以下のようになります。
- センシング技術(対象の斜面、法面の動きや状態を知る)
- 通信技術(センシングした結果をどこかに伝える)
- データの蓄積と処理(送られてきた結果を蓄え、処理して人に伝える)
- 上記の装置を動かすための電源技術
もっとも多様な技術が見られるのがセンシングの部分です。ここをさらに分類すると以下の3分類が主なものになるようです。これらの内の一つだけで見張りをするようなシステムもあれば、複数を組み合わせるものもありです。
- 斜面、法面の幾何学的な形状を知るためのセンサ。傾斜計、伸縮計、移動計、方位センサ、GPSなどの位置センサ、レーザ距離計やレーザスキャナ、レーダ、そしてカメラなど。
- 斜面そのものや法面の抑止工に掛かる力を計測するためのひずみ計、荷重計、土圧計など。
- 斜面安定に大きく関係する「水」にかかわる計測をするもの。雨量計。水位計。水圧計、土壌水分量センサなど。
同じ傾斜や伸縮を測る目的でも多様な方法があり、また、それぞれに特徴もあるので、比較したり、特定のものを深くほじくったりする必要が出てきそうです。
次の通信技術ですが、無線、有線どちらもありました。目についたものを列挙すれば以下のようです。
- 無線。920MHz帯、429MHz帯(特小)、2.4GHz帯、FOMAなどの移動体通信。
- 有線。Ethernet, CAN
無線は予想どおりでしたが、有線もあるのは意外でした。それにCANです。たしかに1つのバスに沢山の子機をぶら下げるのには良さそうですが。まさか車載系からとは思えないので、工場系CANの技術の流用でしょうか。何でもありですね。
無線の多くは当然という感じで
マルチホップのネットワーク
が頻出します。もっとも実践的に「センサネットワーク」している分野かもしれません。なお、無線を通信に使うだけではなく
電波の位相差により送信機の位置の移動を知る
というセンシング利用も兼ねた方式もありました。なかなかハイテクです。
データの蓄積と処理についてはこれまたピンからキリまであります。異常な信号が出たら、その場でパトライトを回して警報を出す、といったシステムから、比較的単純なロガーもあり、勿論、クラウドにデータを送るものもあります。当然、クラウドに送れば、世の流行り、AI使って異常検出もありでしょう。
さらに電源の部分にも注意が必要です。対象となるような土砂災害の危険があるような斜面は大体が不便で危険な所が多いので、簡単に電源線を引っ張っていくとか、人間が電池を交換するとかできないケースが多いからです。よって、エナジーハーベスティング系の技術(といってソーラーパネルが一番簡単ですが)の出番もあり、また、電池でやるにしても長時間のセンシングと通信に耐えうるような方式が必要とされるからです。
次回から、実例を経めぐりながら、奥深い法面/斜面モニタリングの世界を勉強していきたいと思います。