土木でエレキ(12) 法面(斜面)モニタリングの世界その2

JosephHalfmoon

前回、がけ崩れ、斜面の崩壊、地すべりなど、自然の斜面や人工的な法面などをモニタリングする方法について、その技術的な要素から調べさせていただきました。今回は、その歴史的な発展と傾向といったものを調べてみたいと思います。その手がかりとして使わせていただくのは例によって特許です。

今回「ざっと」見てみたのは、

斜面や法面の崩壊、地すべり

といった記述を含む1970年代から最近公開されたばかりのものまでの出願約600件弱ほどです。まず、全体を眺めて一目で分かるのが、

多くは法面を安定させるための工法とか材料に関する出願

であって、全体的にみれば崩壊などをモニタ(見守り、監視)するものは少数派だということです。全体を通してみればその割合は1割強ほどにしかすぎません。しかし、最新の20件(2015年以降出願の新しいもの)に限っていえば内9件がモニタに関する出願でした。つまり、

昔は如何に崩壊しない法面を作るかというところに集中

していたのが、この頃は、

崩壊の検出、警報、予知といった部分に力が入っている

ように見えます。素人には、工法の面では進むところまで進んでしまってなかなか進展がなくなったために監視側に焦点が移ってきたのか、それとも経済的な視点から、闇雲に工事もできなくなってまず監視ということになったのかは判断できないですが、需要があるところに出願あり、と考えれば、今の世の中、モニタリング(監視、見守り)の要求が高まっているとは言えそうです。

また、最近と昔の比較ということであればもう一つ、

昔は斜面や法面の崩壊やその予兆をどう検出するかというハード

に焦点があった感じですが、近年の出願を見ると、

崩壊の危険や予兆をどう計算して求めるかというソフト

面の比重が高まっているように見受けられます。

 

年代を追ってその時期の出願の特徴を考えてみたいと思います。

1970年代末

日本国有鉄道(知らない若者へ。今のJR各社の前身です。)から傾斜計使った「斜面崩壊予知方法」という出願が出ています。これは特許として成立していませんが、もっともはやい時期の傾斜計を使った斜面モニタリングではなかろうかと思われます。この時期、まだ土木系の各社は工法はともかくモニタリング分野での動きは鈍かったようです。その中で、鉄道系の組織は早くから現在にいたるまでこの問題に継続的に取り組んでいることが読み取れます。

1980年代

変位計や移動量計、歪計測といった装置をつかったモニタリングの特許が成立するようになります。既にこの時代に現在でもつかわれている斜面、法面モニタリングの基本的なアイディアは出ていたようにも見えます。この時代の中で少し目立つのが、

雨量、含水比

などの水に着目して、斜面崩壊等を検出する出願が出てくることです。どうも特許を読み込んでいると、この時代にあった大規模水害がそのトリガの一つとなっているようです。

1990年代

土木系の会社がこの分野に「本格参戦」してきた感じで、特許出願数が増え始めます。その中で目立つのが、

  • 光ファイバをセンサに使ったモニタリング
  • AE(アコースティック・エミッション)を使ったモニタリング

の2つです。光ファイバを使ったモニタリングは、その後も「手をかえ」て時々出願されてくるのですが、AE(微小な破壊のときに出る音を検出する)を使うものは、この時代に「流行った」感じの現れ方です。何か限界というか、実運用上での障害などがあってその後の進展があまりないのでしょうか?

2000年代

1999年ごろから2001年くらいにかけて、この分野に出願が相次いでおり、何か「ピーク」があったように見受けられます。また、鉄道や土木といった分野に直接関係なさそうな、電子・電気系のメーカーの参戦も相次いでいます。なにかトリガを引くようなイベント(何かこの分野に皆を振り向かせるような「お金」の匂いを振りまいた事件)があったのではないかと推測するのですが、今回、特許しか見ていないので不明です。しかし結果的にはいろいろ幅が広がったのではないかと思います。例えば

2001年出願で、ニューラルネットを使っているもの

も出現しています。最近でこそ、AI全盛、その中でもニューラルネット系が本流みたいになっていますが、2001年では、AIなどホントにつかえるんかいな?、ニューラルネット?といった世界であった筈。検出方法もちょっと「電波系」だったためか、残念ながらその特許は成立していないようですが、時代を先取りはしていた出願でした。

2010年代(現在に至る)

それまで検出のためのハードウエアが主体であったものが、ソフトウエア(あるいは方法)が主体になってきます。ハードウエアとしてのxxセンサが登場しても、必要な情報を取り出すための末端のお道具という役割で、主体は情報処理部分に移ってきます。長年、この分野に継続的に取り組まれてきた鉄道系の組織も例外ではなく、鉄道総合技術研究所などの出願もソフト化していきます。

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