このごろ高齢者を対象にした「実証実験」のニュースを頻繁に目にします。この手の実証実験、昔からあることにはあったと記憶しているのですが、最近どうも増えている、いや増えすぎな気もします。昨日、IoTネタの方で投稿した件でも2件、高齢者向けの実証実験が含まれていました。それらを当方の勝手にてざっくり分類させてもらうと
-
- 自動運転で高齢者の移動手段確保
- センサ+無線で高齢者の安否見守り
- AIなど応用の認知症予防や高齢者のQOL向上
- ICT活用の助け合い
といった感じでしょうか。本日は2018年から2019年にかけて実施されたか、実施中の各種実証実験をいくつか調べてみたいと思います。
※「介護の隙間から」投稿順index はこちら
まず、自動運転で高齢者の移動手段を確保しようという実証実験について調べてみます。山間地や過疎化の進んだ地域でのお年寄りの移動手段や生活物資の物流手段の確保がまず思い浮かぶのですが、市街化地域でもニュータウンなどでは高齢化が進んで問題になっているようです。とりあえず今年2019年になってからニュースで流れていて目についた地域を列挙してみます。
-
- 秋田県上小阿仁村
- 多摩ニュータウン諏訪・永山団地エリア
- 多摩ニュータウン豊ヶ丘団地エリア
- 兵庫県三木市の緑ヶ丘ネオポリス・松ヶ丘ネオポリス
- 岐阜県郡上市明宝地域
- 山口県宇部市
山間地、過疎地域に当てはまるのは上小阿仁村、郡上市明宝地域、宇部市です。なお上小阿仁村は昨年つづいての実験で、昨年よりエリアを拡大した模様。残りの3つは住宅地ですが、「かっての」ニュータウンで市街地全体の高齢化が進んでいる地域でないかと思われます。気付いた地域を上に列挙しましたが、これらの地域だけではなく、まだまだ実証実験を実施している地域があるようなのです。
この実証実験の多さ、誰か黒幕(?)がいるに違いない
ということで調べたら、直ぐに分かりました
上小阿仁村、多摩ニュータウン諏訪・永山団地エリア、兵庫県三木市の緑ヶ丘ネオポリス・松ヶ丘ネオポリス、岐阜県郡上市明宝地域、山口県宇部市などはこのプログラムに乗っています。上記のプログラムのホームページから見ると、他にも沖縄、滋賀県などでも実証実験があるようです。また、国土交通省の以下の資料も参考になるかもしれません。
「多摩ニュータウン豊ヶ丘団地エリア」についてはSIPではなく東京都の「自動運転技術を活用したビジネスモデル構築に関するプロジェクト」で神奈川県中央交通とソフトバンクグループのSBドライブという会社がやっているようです。
これらとは別に東急電鉄が横浜市青葉区で郊外住宅地におけるMaaSの実証実験というのは、自動運転ではないのですが、交通事業者が高齢者の外出支援に取り組んでいる点、上記の実証実験とは別に注目したいところです。
センサ+無線による高齢者の安否見守り
これもざっと列挙してみたいと思います。まず昨日のIoTネタでも取り上げさせていただいた愛知時計電機のNB-IoT水道メータによる実証実験2つ。
水道使用量データを活用した「見守り・ヘルスケアサポート」の実証実験について:大阪市
NB-IoTを利用した水道使用量にて健康管理を行う実証実験について:郡上市
同じ大阪でも大阪府住宅供給公社の方は、京セラのSigfoxつかって振動センサで高齢者見守りの実証実験やっています。
NB-IoT, Sigfoxとくれば、当然のようにLoRaを使った見守りの実証実験もあります。
沖縄県におけるLoRaを活用した見守り自動販売機実証実験の実施
上記の沖縄の実証実験は、NTTドコモでも九州支社なのですが、NTTドコモは神戸市と組んで高齢者見守りなどの実証実験をやるために協定を結んだ(もともとあった協定を改定した?)ようです。神戸市の発表資料。高齢者向けの実験システムは、呼吸や脈拍などを遠隔で把握できる、検知には電波を使うということなので、24GHz帯のドップラーセンサー使ってバイタルを測定し、結果を携帯インフラで通信というスタイルかなと想像しています。
NTTドコモがあれば、NTTコミュニケーションズもありで、こちらは、静岡の磐田市で子供・高齢者見守りシステムの実証実験に参加しています。
インフラ系の会社と言えば、電力会社もこの手の見守りの実証実験をやっているところがあり、九州電力は福岡で、中部電力は袋井市で実証実験をやっています。
他にもセンサ+無線での高齢者見守りの実証実験は多数あるのですが、割愛して次のカテゴリに進みたいと思います。
AIなど応用の認知症予防や高齢者のQOL向上
神奈川県では、富士ソフトの人型コミュニケーションロボット”PALRO”使った「うながし」の実証実験をやっています。高齢者相手のロボット応援団長みたいな感じですかね。ただ、神奈川県は「さがみロボット産業特区」というもので毎年かなりな数の実証実験をやっているようなので、その中の一つということだと思います。
セコムとユカイ工学という会社も高齢者のQOL維持、向上目的でロボット“BOCCO”というものを使った実証実験をやっています。東京杉並のセコムのサービス提供エリアでの実施のようです。
ICT活用の助け合い
これは高齢者だけでなく、移動時にいろいろ困っている人を対面で手助けするのをICTで後押ししようという方向の取り組みです。
まずは東京都がソフトバリアフリー実証実験というものを実施したようです。実際には2つの参加社があり、一方は大日本印刷がビーコンとアプリを活用して行うもの、もう一方はみずほ情報総研と数社(こちらには凸版印刷が入っている)がアプリを使って行うもののようです。
同様な趣旨に見えるものは、福岡県の天神でも実証実験されていて、こちらはインフラはLineを使っています。実験メンバには再び大日本印刷が含まれています。