土木でエレキ(14) 土石流の監視、有線?無線?

雲仙の「土石流被災家屋保存公園」行かれたことがあるでしょうか?雲仙普賢岳の噴火の後の大土石流で埋まってしまった家屋を保存してある公園です。普賢岳からはかなり離れていて、主要道路ぞい、海もそう遠くないような場所で、元は結構、人が住んでいた場所のようです。保存のため綺麗に整備され過ぎている感はありますが、「家がここまで埋まるんだ」と驚きました。法面や斜面の崩落も怖いですが、土石流も怖い。斜面崩落、地すべり、土石流、これらは監視対象としたら「親戚筋」かもしれません。

土石流の監視システム、ちょっと調べただけでも取り扱っている企業は数十はありそうです。それだけ需要があるということでしょう。目的としては、

  1. 定常的な河川の流域の監視
  2. 河川での土木作業時のスポット的な監視(工事の安全管理)

の2種類がある感じです。1の場合は、据え付けたら常時稼働させ、万が一の場合には流域(下流)に警報を出し避難等を促す。2の場合も似たようなものですが、通知する先が限られ稼働期間が短いことから、その分、電源の確保の仕方とか、見張る場所と通知する先の接続方法とかの条件が変わってくるようです。

土石流のセンシングに関しては、定番の方法があります。

ワイヤセンサと雨量計

ワイヤセンサは、ワイヤに電流を流しておいて切れたら警報を発するタイプ、あるいは、ワイヤに一定以上の張力がかかったら検出するタイプなど。土石流の危険個所に、事前に張っておく形です。これと、降雨量を観測する雨量計を組み合わせることが多いようです。場合によっては、監視カメラ等を組み合わせたり、斜面の崩落モニタリングに用いるような各種のセンサと組み合わせたりもするようです。

一方、上流で発生を検出した土石流を下流で警告する手段としては、スピーカと点滅/閃光灯、パトライトの類がまず第1であって、2次的にネット等を使ってWebやメールで知らせるという方法をとるようです。なにせ、上流で検出してから、人がいる下流まで、数十秒程度で到達するようなケースも想定しないとならないようなので、まずは警報を鳴らして即避難、という形になるようです。

なお、常設型の装置の電源としてはソーラーパネルが一般的なようです。設置場所の多くが山間地でACが取れないケースが多いためだと思われます。仮設の装置では、自動車用のバッテリなどもありました。またソーラと風力コンボのハイブリッド型発電機(東芝インフラシステムズ)などもありました。

上流、下流(相対的なもので、どちらも山間地を想定。上流がセンサを仕掛ける発生検出エリア、下流が警報を発したいエリア)間の通信には、結構いろいろな通信方式が使われていました。LPWA応用のようなものがあるかいな、とちょっと期待していたのですが、調べてみた十数社の製品の範囲では見当たりませんでした。

  1. 有線
  2. 特定小電力無線
  3. 小エリア無線(アナログ)
  4. デジタル簡易無線(DCR=Digital Convenience Radio
  5. 携帯系
  6. 地中無線通信システム

「有線」と一括りにしていますが、ここにはいくつかの方式があります。

  • ワイヤセンサのワイヤそのものを引っ張る
  • センサとは別に通信ケーブルを引っ張る
  • NTTの回線を使う

断線で検出する型式のワイヤは数kmといった距離を伸ばしても検出できるようです。沢筋の複数の支流を通過するように張っておいてそのまま引っ張っていって検出といったことも可能なようです。ただし、ある無線系のシステムを売っている会社のサイトでは、引っ張ったケーブルを野生動物とかにかじられるなど誤報の例があげてありました。勿論、有線の場合は山間地に線を架設していく手間もかなりかかることは間違いありません。

そこで無線の出番となるわけですが、それぞれの方式で一長一短があると思います。特小無線は、電気もあまり食わず、免許も要らず登録料もかからないのはよいですが、距離的には数百mレンジでしょう。この手の山間地利用では、アンテナを工夫したり、中継器を使ったりして数kmといったレンジまで引き延ばしている例もあるようですがやはり検出場所と警報を受ける場所の距離が遠いと辛い。その点、小エリア無線は出力が大きいので、特定小電力よりは距離が飛ぶでしょう。数kmどころか10kmとか行くのでは。また、無線局の申請(当然お金もかかる)が必要であります。しかし、一番の問題は以下でしょう。

総務省 電波利用ホームページ

2022年の11月末日までしか使えんというところ。今からやるなら上記のホームページから以下に引用しましたとおり、項目4のDCRにしておくべきでしょう。(それにしても土石流では誰もLPWA系やっている人いないのかいな。。。)

引き続き簡易無線を使用される場合は、デジタル簡易無線(DCR=Digital Convenience Radio)への買換え等が必要です。

もちろん、FOMAなどの携帯インフラを使った通信もアチコチの会社が採用しているのですが、どちらかというとネットワークとか、クラウド側との接続に使う傾向がある感じです。センサの上流との接続にはあまりお勧めでない? 多分、山間地では「圏外」になるケースもあり、ということでしょうか。そのためか「衛星携帯電話」と接続可能というシステムもありました。

最後の地中無線通信システムは、坂田電機です。搬送波8.5kHz。電波というよりは磁界の世界。通信可能な距離は100m程度なのでメインにはなり得ませんが、特殊な局面では活躍しそうです。こちらについてはいろいろ興味もあり、別の回でまた調べてみたいと思います。

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