特許の失敗学[13] 特許庁の広報(4) 特許庁の商標出願


特許庁の商標出願


 前回の投稿、特報 特許庁の特許 では、特許庁の特許出願のスクープ(ここは報道機関でないので不適切か?)しました。そのフォローアップ調査をしていたところ、更に謎は深まる結果となりました。そこで発見した謎は「特許庁の商標出願」です。特許庁(またしても出願人は特許庁長官)は、商標も特許庁に出願していました。

 前回の投稿に記載した疑問については、連休中で特許庁に電話が通じないため、特許庁HPの「お問合せフォーム」で広報室に問合せしました。 結果は来週か?乞うご期待 Don’t miss it.

◆ 前回の宿題

「まさか本件は、Arahaが最初にブログ記事を書くの?」
この疑問は特許庁に訊くわけにいかないので、自分で調べます。

・Google検索「特許庁の特許」
この検索では期待した情報は得られませんでした。最近の事案なので、検索条件を「ツール→期間指定 1か月以内」として再検索します。
ArahaはGoogle検索の設定で「ページあたりの表示件数=50」としていますが、4ページ(200件)を見ても疑問を解決するような検索結果はヒットしません。

そこで、登場するのが「pseudo patent search」であります。結局、それでも疑問は解決しませんでしたが、「特許庁の商標出願」を知ることになりました。

「pseudo patent search」とはいかなる検索技術か。実は、特許の先行文献調査の手段として紹介しようと考えていたのですが、今回の調査に使用することになりました。特許検索に「pseudo patent search」を利用するケーススタディは、今後の「特許の失敗学」で紹介します。

 Arahaが米国に最初に赴任した時代のお仕事は、NMOS回路のデバイスをCMOS回路に変換するプロジェクトでした。(人はそれをエンジニアでなくチェンジニアと呼ぶ。)回路設計者として「pseudo static circuit」を作成しました。

 「pseudo static circuit」とは、「疑似静的回路」というCMOSもどき回路です。通常のCMOSのようなComplementary構成ではなく、より少ないMOSゲートでStatic動作を可能とする回路です。NMOS回路を単純にCMOS回路に変換すると、ランダム論理回路は約2倍のトランジスタ数となります。論理合成が使えなかったNMOS時代に多用されたPLAという回路は、単純にCMOS回路に変換できません。プロセス技術がゲート長1.5umであり現在の1000倍であった時代は、トランジスタの数をいかに減らすかは重要な課題でした。
 当時の半導体技術の遺物は、以下ご参照ください。
 pseudo static circuit – Google Scholar
 https://scholar.google.co.jp/scholar?q=pseudo+static+circuit


◆ pseudo patent search

 さて「pseudo patent search」とは何か。
その日本語は「なんちゃって特許検索」であります。その実態は『Google画像検索』です。Google検索「特許庁の特許」を行い、検索窓の下の「すべて」の右側に並ぶ「画像」をクリックするだけ。実にお手軽「なんちゃって検索」であります。

「画像」をクリックすると、そこは別世界。
いきなり「リケジョ」の写真に目を奪われますが、「後で見る」として先に進みます。先日の投稿記事の『特許ステータスレポート2020』『商標拳』が出てきます。

更に進むと「特許庁の商標出願」が出てきました。
これについては、ニュースサイトの記事がヒットしています。

  2018/9/13 07:00 神戸新聞NEXT
  130年余で初 特許庁が自ら商標権取得したロゴとは
  https://www.kobe-np.co.jp/news/sougou/201809/0011633219.shtml

  商標登録を審査する特許庁が、前身組織の設立から130年余りの歴史で初めて、出願者として商標権を得たことが分かった。同庁が推進する特産品のブランド化施策「地域団体商標制度」のロゴマーク。審査機関が自らの出願をチェックし、権利を登録するという手続きに、担当者は「ロゴの役割を重視した極めて例外的な措置」とする。

 「特許庁が商標出願した」というニュースは、さほど世間の注目をひかなかった模様です。今回の「特許庁の特許出願」はどうなるのでしょうか。


◆「特許庁の商標出願」を検証

例によって、J-PlatPatの商標検索「出願人:特許庁」です。
ところが、
検索ヒット件数は0件、何もヒットしません。

念のため、「特許庁の特許」の検索で知った識別番号で検索します。
 特許庁長官 【識別番号】718000266
申請人識別番号:718000266」の検索条件で検索。
すると、検索ヒット件数は2件です。

またまた、ところが、
「地域団体商標制度」のロゴマークはヒットしません。
ヒットした2件は、「アドパス」と「ADPAS」
2件共にステータスは「審査待ち」です。

アドパス  商標出願 2019-103296 係属-出願-審査待ち
ADPAS  商標出願 2019-103297 係属-出願-審査待ち

「アドパス」の出願情報のみ、抜粋転記します。
「ADPAS」は、商標名記事が「ADPAS」であるほかは同じ内容です。

出願記事 商標 2019-103296 (2019/07/30)
出願種別(通常)
出願人・代理人記事
 出願人 東京都千代田区 (718000266) 特許庁長官
 代理人 対象出願人人数(1)
 代理人(国内) (100099759) 青木 篤
 代理人 代理人(国内) (100088775) 田島 壽
 代理人 代理人(国内) (100101797) 外川 奈美
商品区分記事
 9  コンピュータソフトウェア用アプリケーション
 42 ウェブサイトの作成と保守,検索エンジンの提供,
  電子計算機のプログラムの設計・作成又は保守,
 45 知的財産権に関する助言,知的財産権に関する情報の提供
商標名記事 アドパス
称呼記事 アドパス
標準文字マーク記事 標準文字使用 有り
出願細項目記事   査定種別(査定無し) 通常審査
更新日付 (2019/08/06)

「アドパス」をGoogle検索するとヒットするのは、せどり業者

  アマゾン出品代行&せどり各種代行サービスなら
  ADPAS SHOP http://adpas.net/

商標は、カテゴリーである「商品区分」が異なれば、同じ商標名でもよいのでしょうが、特許庁が「せどり業者」と同じ商標名を選択したのは何故でしょう。

(1)  登録されたという「地域団体商標制度」のロゴマークはどうなった?
(2)「出願人:特許庁」で検索するとヒットしない理由?

謎は深まると思ったら、
「出願人:特許庁長官」で検索したら、(1)(2)の疑問は解決しました。
「地域団体商標制度」のロゴマークの2件と、「アドパス」と「ADPAS」の計4件の商標がヒットします。

◇ 特許検索との違いは、J-PlatPaの検索条件が異なるためのようです。
 ・特許検索:近傍検索 → 「特許長官」も一致する。
 ・商標検索:一致検索 → 「特許長官」は一致しない。

この記事は「特許の失敗学」のシリーズなので、「特許庁の商標」を探るのはここまでといたします。


◆ Afterword

 「Google画像検索」は、簡単なキーワードの入力で、思いもよらない検索結果がヒットします。そこから新しいアイデア発想のネタも得られます。しかも、画像なので通常の検索結果よりも楽しく見ることができます。思わず、調査をしていることを忘れて寄り道をしてしまいます。

「特許庁の特許」画像検索で、『週刊ザテレビジョン』の表紙のようなレモン持ち写真がありました。何だろうと見ると…

 「特許庁ステータスレポート2019」について
 https://pat-tm-fuku.com/blog/1904041/

神戸の特許事務所のブログページでした。
  福島特許商標事務所
  https://pat-tm-fuku.com/

こんなビジュアルなブログを置いている特許事務所は初めて見ました。