備忘録 2020.05.19 【感想】帰らざるMOS回路(12) なんちゃってNAND型ROM(もどき)


 帰らざるMOS回路(12) なんちゃってNAND型ROM(もどき
には、『作った「回路」は無駄にはしませんよ。チョイ変で、NAND型マスクROMを構成し実験してみました。』とあります。

 “Mottainai”は世界共通語となりつつある今日この頃、流石であります。ArahaはROMといえばNOR型しか考えてませんでした。『帰らざるMOS回路』のモチーフとなった、トランジスタ技術2020年5月号特集『大解剖!CPUはこうやって動いている』はNOR型ROMを採用しています。


◆ 『大解剖!CPUはこうやって動いている』に感じる違和感

 トラ技2020年5月号では、『ディジタル回路をトランジスタで作ろう!』と第2章で宣言しております。にも拘わらず、第7章(Page.114)のNOR型ROMはダイオードとスイッチでROM回路を実現しています。羊頭狗肉? MOSFETのドレインとゲートを短絡した「ダイオード接続MOS」を採用しない理由は、コスト以上に半田付けの工数を削減したいという事情かもしれません。

 NMOS時代のNOR型ROMの設計は、第7章(Page.114)のROM回路とは異なります。更には、レジスタ回路(Page.116)を見て頭がくらくらしました。NMOS時代(1個でも少ないトランジスタ回路設計した時代)には考えられられない設計です。半導体の古代技術を学んだ者としては、いろいろ違和感を感じる特集であります。トラ技2020年5月号特集の著者は半導体理論を理解されているのでしょうが(Arahaとは違うのだよ)、おそらくNMOS時代の設計者ではないと思われます。


◆ NOR型とNAND型の違い

では、NOR型とNAND型の違いは何か?
 説明図面を書くのがめんどいので(言い訳)、ネットで見つけた秀逸で短い解説をご参照ください。

高集積化にはNOR型よりもNAND型が有利
出典:SHG2Aシリーズ|TECH JOURNAL|TDK
https://product.tdk.com/info/ja/techlibrary/archives/techjournal/vol01_ssd/contents04.html

 補足すると、NAND型ROMのアクセス速度が遅いのは、トランジスタを直列にスタックするためだけではありません。大規模なメモリ回路を構成するためには、スタック数の上限があるので、階層化の設計が必要であることもあります。

(良い子は、コピペばかりしてはいけません。せめて自分で仮説を立ててから検索しましょう。引退した者は許してね)

出典:『映画 ひみつのアッコちゃん』
 パソコンを使って課題作りをしていたアッコちゃんは、使えそうな所を適当にコピペしてあっという間に研究新聞を作り上げてしまう。担任の先生に「物事には良い面と悪い面がある。ずるしてやった事は身に付かない。さっきの課題を言ってごらん」と言われたアッコちゃんは、思い出そうとするが言えない。「それじゃあ、意味ないだろ?一生懸命やった方が身に付くんだ。喜びも大きい…」と教えてくれる。


◆ Afterword

Often you have to rely on intuition.
しばしば、直観が頼みの綱になる。ビル・ゲイツ

 Arahaの最初の上司は、「メモリのように同じ回路を、大規模(高集積)にすることで価値が増す回路が最強なんだよ」と仰ってました。(正確なお言葉は忘れました)

 半導体技術のテクノロジードライバはメモリでした。CPUもメモリに迫りましたが未だにメモリの地位は盤石です。しかしCPUはマルチコアにするとしても高が知れてますし、CPUが増えるとメモリも増えるという関係にあります。マイクロプロセッサのイノベーションを確信した人も少なかったですが、磁気記憶装置が半導体メモリに置換わる時代がくると最初に確信した人は誰なのでしょう。

 ではメモリの他に無いのかといえば、FPGAが考えられます。FPGAは試作用途のデバイスと考えていたのに、量産製品に採用されたと知ったときには驚きでした。

 未来は?というとニューロ回路と予想できます。
そこで例によって「なんちゃって先行技術調査」であります

「ニューロ回路」 – Google画像検索
 半導体による「ニューロ回路」がヒットします。しかし「ニューロ回路」の量産品は知りません。「ニューロ回路」の配線(シナプス)がなければね。ということで、

「シナプス回路」 – Google画像検索
 やはり半導体の「シナプス回路」のヒットは限定的でした。それでも最後に興味深い記事を見つけました。(2017年の記事なのでちょっと古いですけど)

ニューロチップ概説 ~いよいよ半導体の出番(5-1) – セミコンポータル
https://www.semiconportal.com/archive/contribution/applications/170418-neurochip5-1.html

直観と思いつきに頼って(理論を理解しないまま)半導体業界と、知財業界とを渡り歩いてきた(幸運にもリストラされても新しい職に就けた)Arahaでした。