特許の失敗学[16] 特許と英語(1) なんちゃって英語学習

特許の失敗学

 前回特許と英語(0) 私の英語歴」では、US特許のため英語能力の必要性を述べました。「うちは日本特許だけで勝負するで」と仰る方は「英語」は不要かもしれません。しかし、特許庁の「アドバス」が稼働すると、外国語文献が引例の先行技術として拒絶理由通知に示されることが予想されます。その場合は、先行技術文献は英語の可能性が高い。機械翻訳が完璧でない現状では、英語能力は必要となります。

ここで問題です。
fly on the wall を和訳せよ。


『 fly on the wall を和訳せよ。』の解答は…
 「わてはイディオムだって知っとるで~」という方には釈迦に説法でしょう。Google検索すれば解答はすぐに出てきます。その和訳(自然な日本語)が予想外であった方は、以下の英語学習をお勧めします。


◆ お金をかけずお手軽に、なんちゃって英語学習

 『特許の失敗学』のミッションは「お金をかけずお手軽に特許収入を目指す」です。個人発明家は、特許収入の目的では、英語学習にお金や時間をかけられません。英語能力といっても、必要なのは英語Reading、それも機械翻訳を補完する能力と考えます。

 それぞれの言語には、その言語を特徴づける基本があります。例えば日本語の『てにをは』であり、かたや英語では『前置詞』です。前置詞「on」をいつでも「上の」と翻訳してしまうのは、前置詞「on」の概念を理解していないためです。


◆ がっちゃん

 ご案内のとおり、外国人「がっちゃん」とは、YouTubeで英語に挫折した日本人に英語を教えるカリスマ韓国人ブロガーです。

 カリスマ韓国人ブロガー・がっちゃんによる驚愕の日本人向け英語学習動画!
 https://eigokoryaku.com/study/korean-gatchan

 がっちゃんは英語学習法について特許出願しています。ともあれ、がっちゃんのYouTube英語学習動画は無料であり、動画広告すらありません。スマホとパケット容量があれば、どこでも勉強できます。『なんちゃって英語学習法』は、がっちゃん動画を見るだけ~であります。

 がっちゃん曰く、前置詞「on」のイメージは「ペタッとくっついている」です。最近は英語の概念を教えるHPも多数ありますが、がっちゃん動画は楽しく英語を学べます。

 特許クレームにおいて、前置詞「on」はとても便利な概念です。前置詞「on」は、床、壁、天井のいずれにも使えます。かたや、日本語「上の」は方向性を持つ概念なので、壁や天井には違和感があります。「device on board」 を「基板の上のデバイス」と翻訳した場合、基板を上下反転してデバイスを下の方向に実装した場合のクレーム解釈が問題となります。

 がっちゃん曰く、日本語の『てにをは』は超便利。日本語は順番を変更しても『てにをは』のおかげで文の意味が変化しません。英語は語順を変えると文の意味が変わります。英文を理解するためであれば、語順は英文のままで和文に翻訳すればよろしい。英文を読むときに、英文の語順は変えずにそのまま理解するのは速読のコツでもあります。

      •  例えば、「I love you.」英文の語順そのまま翻訳は「私は、愛する、あなたを」です。特許英語の理解に必要な能力は、「I love you.」を「月が綺麗ですね。」と訳する文才ではありません。


◆ 機械翻訳の限界

 それでは、現状の機械翻訳の限界を「Google翻訳」で簡易検証してみます。

 日本語        →   英語
壁にとまっているハエ  → 〇 A fly on the wall
AはBとCの家に行く。  →   A goes to B and C’s house.
Aは、BとCの家に行く。 → 〇 A goes to B and C’s house.
AはBと、Cの家に行く。 → ✖ A goes to B and C’s house.
AはBとでCの家に行く。 → 〇 A goes to C’s house with B.
Cの家にAはBと行く。  → ✖ A goes to B in C’s house.

  英語         →   日本語
fly on the wall       → ✖ 壁に飛びます
a fly on the wall      → ✖ 壁にハエ

 「fly on the wall」と「AはBとCの家に行く。」を例文として、翻訳の適否を○×で示してます。Google翻訳の英訳、和訳の性能はあいまいな例文や、読点には対応していない様です。有料の機械翻訳は、Google翻訳よりも優れているかもしれません。しかし、現状で翻訳者が失業したという話は聞きません。

◆ Afterword

『入れた手のお茶 アチッ』

 機械翻訳のFEPとして「かな漢字変換」の機能が必要でしょう。その昔、MS-IMEに対するATOKの優位性を宣伝するCMがありました。当時のMS社は、IME2000で「淹れたてのお茶」と変換するその場しのぎの調整を行いました。しかし、さすがに現在のIMEでは問題ありませんでした。

▼新品の「NANOTE」でIMEの初期状態を調べてみた。
 かな入力 「いれたてのおちゃ」
 文節認識 「いれたての・おちゃ」
 変換候補
1 いれたての
2 入れたての
3 入れた
4 容れたての
5 淹れたての
6 入れ立ての

 「入れた手の」は変換候補に出てきまへん。IME利用者の好みに応じて、変換候補の学習機能を優先する設計思想やろう。「特許」て1回変換確定すると「と」て入力したら「特許」が変換候補のトップに出る。ATOK総合ページによると「淹れたてのお茶」が単純に正解ちゃうんやな。

(出典)

▼入れた手のお茶 入れ立てのお茶 誤変換
一太郎 ATOK ジャストシステム JUSTSYSTEM 1998年
 https://youtube.shattered-blog.com/uie8tkutqqi/
 (注:内田由紀のCMのURLはここにあります。)
このCM当時はMSIMEで「入れた手のお茶」となった気がしますが、今はなりませんね(「入れたてのお茶」となった)。

▼入れた手のお茶?
 https://linux.srad.jp/story/01/08/28/2156203/
 ストーリー by wakatono 2001年08月29日 6時55分
 IME2000では「淹れたてのお茶」でした 部門より
 okome 曰く,”「入れた手のお茶」は、むかーし、ATOKがMS-IMEより変換効率がよいということで内田由紀などをCMに使い比較広告を大々的に出していたことで有名な漢字の変換候補であるが、じつは、ATOKの変換する「入れ立てのお茶」も正しくなく、「淹れる」の候補のほうが正しいという説もjustsystemにより掲載されている。

▼ATOK総合ページ:ATOKの作り方~「入れ立てのお茶」のナゾ~
 https://www.justsystems.com/jp/atok/information/tea/tea_1.html
 KOJI先生:そのお茶を「作る」方法を表す場合に「淹れる」「煎れる」という違った表記が出てくるんぢゃ。「淹」という漢字には、「(水で)おおう」という意味があって。湯を注いでお茶を作る意味に使われておる。 「煎」は、「煮詰める」という意味で、茶葉を煮出してお茶を作るということぢゃ。それでは、文学作品で「お茶をいれる」がどのように表現されているか調べておいたから、それを見てみよう。