お手軽ツールで今更学ぶアナログ(4) AliceでFormula波形表示

JosephHalfmoon
JosephHalfmoon

第2回で、愛用のアナデバM1Kには負電源無いしなあ、などとブーたれておりました。しかし、「そいつは心得違い」だということが、アナデバ様のウエブサイトを読んでいて気付きました。0Vから+5Vまでしか出力が出ない筈のM1Kを使って、プラマイ5V、10Vの電位差の実験をやってました。魔法?ではなく、算術。しかしその為には、M1Kの制御ソフトであるAliceにFormula(式)の計算をやってもらわないとなりません。

基礎は何事でも大事です。アナデバ社の学習実験ツールADALM1000(M1K)を使いこなすために、AnalogDialogueというアナデバ社のブログの中で最も基礎的と思われる辺りを読ませていただいておりました。記事がありました、日本語訳です。

SMUとは何なのか?

SMU、M1Kでは「必須」の概念なのですが、私は(心の中で)即答できませんでした。1行引用させていただきます。

SMU(ソース・メジャー・ユニット)は、1つのピンまたはコネクタにソース機能と測定機能の両方を持たせた、計測器です。

まさに、M1KのCH.AとCH.Bという2つの端子はSMUなのでした。まずそこには、第2回で恐る恐る行ってみたような、2.5V電源を中心に、0Vを-2.5V, 5Vを+2.5Vとみて実験する方法が書かれています。先に読んでおけば良かった。しかし、さらに次にあった1文にビックリ。また、1行引用させていただきます。

1つのチャンネルを0Vから5Vまで掃引しながら、もう一方を5Vから0Vまで掃引することで、DUTの両端には-5V~5Vの電圧を生成できます。

私は、GND絶対主義に陥っていましたです。目から鱗。確かにGND基準では0Vから5Vなのだけれど、一方のチャネルから他方のチャネルを見れば、自分より+5V電圧が高くて電流が自分の方に流れてきている状態から同電位を経て、自分より-5V電圧が低くて、自分の方から電流を流し出している状態へと変化することになります。

SMU凄い

と思いました。そこで例として挙げられている回路は、非常にシンプルな直列接続、

CH. A — R1 100Ω — D1(ダイオード) — CH. B

です。CH.Aと、CH.Bに位相が180度ずれた三角波をいれれば、抵抗とダイオードには単体CHの2倍の電圧範囲で特性を測れる、ということになります。さっそく、部品キットADALP2000の中から抵抗とダイオードを取り出して実験回路(DUTと呼びましょう)を作りました。ブレッドボードに刺すのは一瞬ですが、

老眼の目にはダイオードが皆同じに見える。

キットには4種、7本のダイオードが含まれております。どれでも良いような気もしましたが、一応データシートをダウンロードして確認する手間は外せないので、「それが何だか」知りたいです。一瞬、半田付け不良の発見 に使った顕微鏡を持ち出さないと型番が読めないかと思いましたが、手元のルーペでなんとか読めました。流石米国製キット、伝統のフェアチャイルド(今はオン・セミコンダクタですが)製のダイオードのようです。小さすぎて写真映りが悪いのでせめて大書しておきます。

1N3064

これにM1Kを接続して、三角波を加えるのは容易いです。DUT作成から電圧印加まで、数分、ほとんどはAliceの設定時間。

時間波形は、こんな感じです。このグラフを作ったときは三角波は0~3Vで動かしていて100Hzでした。緑はCH.Aの電圧、黄色はCH.Bの電流です。ダイオードにかかる電圧が、ダイオードのVf超えると、電流が流れます。電流を制限するために100Ω(これが入っていないとM1Kの流せる電流を容易に超えてしまう)が入っており、これのお陰でピークでも25mAくらいの電流で済んでいます。

赤こそが、今回の主題と言って良い、M1KのFormula計算機能で計算した値です。ダイオードに印加されている電圧のグラフ。赤が負から0.6V付近までの電圧のときは電流が流れず、Vfの0.6V付近になると急に電流が流れるようになるのが分かります。そのまんまダイオードですね。しかし、AliceのFormula計算機能、ちょっとクセがあって、実は思ったように動かすまで、しばらく試行錯誤してしまいました。その件を後でまとめます。

 

上記のように時間グラフが描けたので、AliceのXYグラフを呼び出して、ダイオードにかける電圧(上の赤線)に対する電流値のグラフ(上の黄線)を描いてみます。下のような感じ。なお、こちらのグラフを描いたときには三角波を0~4Vにしているので、先ほどのグラフよりはちょっとプロット範囲が広がっています。まずはダイオードの特性らしいグラフがかけました。

しかしね、こんな「簡単な」グラフを表示させるのに、Aliceの設定、かなり難しかったんです。まず、上記のX-YグラフのX軸、Y軸の設定、ちょっと変です。X軸の電圧は、Formula計算なのでMathという設定は当然なのですが、Y軸もMathというのは変。Y軸はCH.Bの電流なのでCB-Iで良さそうなものです。

しかし、そうするとグラフが現れなかったです。

Formula計算(Math)で、XYグラフ書くときには、両方Mathにしてやらないとダメだった、というのが第1の経験です。実際、Formulaを設定する画面を下に示します。時間グラフでもXYグラフでもMATHボタンを押せば、同じこのウインドウが開きます。

Formula(式)を書く欄が3つあります。この欄で計算した値は3つとも時間グラフに表示可能です。時間グラフでは、下の画面キャプチャのようにCurvesというプルダウン・メニューで、表示したい項目を選ぶようになっていますが、

  • X Math Traceの式は、Math-Xをチェックすると表示
  • Y Math Traceの式は、Math-Yをチェックすると表示

とX,Yは、分かりやすいです。しかし、一番上のFormulaにあたる項目はプルダウン・メニューにはありません。その表示は、上のMath FormulaウインドウのBuilt-in ExpでFormulaを選択してやると時間グラフに表示されるのでした。消したかったら none選択しないといつまでも表示されます。さて注意点が2つ

  1. Formula記述したらCheckボタンを押す(式に問題ないとFormulaという字が緑になる)
  2. そして対応付けるAxisを設定してApplyする

さらにツボにハマったのが、ダイオードに印加される電圧を計算するFormulaでした。

VBuffB[t] – VBuffA[t] – IBuffB[t]*0.1

SMU2本間の相対電圧から、抵抗での電圧降下分を差っ引いてやったのがダイオードにかかる電圧、という式です。しかし、0.1って何?

元々のアナデバ様のページに書かれていたのは、

VBuffB[t] – VBuffA[t] – IBuffB[t] x 100 Ω

という式。流れる電流に抵抗値をかければ、電圧降下じゃん。しかし、そのまま100で計算すると、グラフがとんでもないところに行ってしまった、のです。このことになかなか気付かず時間を使ってしまいました。どうも電流値は、mA単位で計算されるようです(それで自分で設定ウインドウで単位をmAと書き込みました。元はAと書いてありました。)。よってmAを1000で割ってAに直してからΩを書けないと電圧降下がVで求まりません。端折って先に100を1000で割った結果が0.1です。

そして、XYグラフで両方Math指定すると、何も言わずX Math TraceをX、Y Math TraceをYにしてグラフを書きます。先ほど述べたとおり、両方Mathにしないとダメだったので、Y Math TraceにはCB-Iそのものに相当する関数を書き込みました。これでようやく、上の方の特性グラフが描けたです。

使っていない機能を使うとトラブルのは普通、か。

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