このところ「抵抗1本で」思いのままに電圧を作れたり、周波数を作れたりするデバイスなど便利なものばかりを取り上げております。これでは「今更学ぶ」ことにならないだろーということで、「初心に帰って」プリミティブな回路に立ち戻って実験することにいたしました。ツエナーダイオードで電圧を「レギュレート」する、と。しかし、思いもかけずそこに闇がありましたぜ。
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別連載でやっている「中華部品キット」話では、闇のある?デバイスとお付き合いさせていただいております。しかし闇とは言っても文書の闇で、デバイスそのものは常に正しく動いており、動かないのは何時も私のバグです。今のところ。それに対して、こちらの連載では、全てのデバイスではないですが、アナデバ様のADALP2000部品キット内のデバイスを結構使わせていただいております。今回初心に帰って、一番プリミティブなツエナーダイオードをやろうとしたときに見つけたのも、ADALP2000を念頭に置いている筈の以下のページでありました。
StudentZone―2019年12月 ツェナー・ダイオードで構成したレギュレータをADALM2000で評価する
ADALM2000は持っていないですが、Digilent Analog Discovery2が「ほぼ同等」の機能を持っていることは前に述べた通りです。上記のページを参考にすれば「一撃」で迷うことなく「正しく」学べる筈、と確信いたしました。実際上記のページで使っているツエナーダイオードは 1N4735なのですが、ADALP2000部品キットの箱にも「1N4735が入っている事になっている」のです。以下はADALP2000の蓋に書いてある「お品書き」です。
ADALP2000のページからは、部品それぞれのデータシートに飛べるようになっており、1N4735からは、
VISHAY 1N4735A 降伏電圧6.2V
であることが分かります。実際、上のリンクでも降伏電圧6.2Vということで実験をしています。さて、1N4735を箱の中から見つけねばなりません。上の方のアイキャッチ画像を御覧ください。
- 1N914
- 1N3064
- そして問題のツエナーダイオード
が並んでいます。これをぱっと見て識別できる人を私は尊敬します。何時もどおり、老眼の目で虫眼鏡にはりつき、1N914と1N3064(マーキングからはフェアチャイルドーー現オン・セミコン製とみました)を識別しました。すると残りが1N4735の筈。しかし、虫眼鏡で読み取った型番は、
PHC3V6
Phillips製?の互換品?どうみても1N4735ではなさそうです。それどころか3V6という型番からは、降伏電圧6.2Vではなく、3.6Vなんじゃないか。。。電圧半分?
動かしてみればわかる筈ということで動かしてみました。回路は、上の参考文献の最初の例題回路どおりといたしました。1kΩの抵抗2本。こんな感じ。
Analog Discovery2との接続の様子はこんな感じ。
C1の方が、ツエナーダイオードの両端の電圧で、C2の方が電源側の抵抗の両端の電圧です。入力電圧としてはまず8Vをかけてみました。ツエナーダイオード両端の電圧は3.1Vちょいで3.6Vには達していません。3V6でヒットした似たようなツエナーダイオードの降伏電圧の規定はツエナーに5mA流れたときの値でした。電源側の1kΩ抵抗には約4.8Vかかっているので、全体でも4.8mAしか流れていません。その上負荷抵抗1kΩにツエナー両端と同じ約3.1Vがかかっているので、負荷抵抗に流れるのは3.1mA。結局、ツエナーには1.7mAしか流れていないです。すると電圧低めにでるのも当然かと思われます。
手っ取り早くも少し電圧上げれば、もすこし電流流れるでしょう。Analog Discovery2の限界のプラマイ5Vをつかって、10Vかけてみました。こんな感じ。
3.4V近くまで電圧あがりましたが、これでもツエナーには3mAくらいしか流れていないので、まあ、順当なところか。3.6V出すには抵抗の調整が必要そうですが、それはまた後で。
結局、降伏電圧は3.6V品
と結論いたしました。1N4735じゃない。
まあね、米国製、アナデバ様のキットだからといって全部の部品がOKなんてことはない、と。(流石に自社製部品は完璧にそろっていましたよ、念のため)もしかすると降伏電圧6.2Vじゃ実験しにくいから半分にしてやれ、という親心?だったのか。謎です。
その昔を思い出しました。シリコンバレーに出張に行く度に、ちょいちょいパソコンの部品とかソフトとか買ってきていたのです。しかし、買ったら必ずホテルの部屋で箱を開けて「ちゃんとそろっているか」調べる習慣でした。日本に帰ってから何か足りない、となっても困るので。あるとき、CD-ROMドライブのセットを買いました。ドライブ、ISAバスのカード、ケーブル、そして沢山の付属ソフトのCD-ROMが入っている結構大きい箱です。中を調べると「ドライバ」のフロッピイがありません。いくらハードとCD-ROMがあってもデバイスドライバ無ければ手も足もでません。(当時はインターネットでドライバダウンロードできるような世界ではなかったです。)慌ててパソコンショップに戻り、ドライバのFDが無いと文句をつけました。するとマネージャと思しき人物がやってきて、同じキットの別な箱を開け、お前の欲しいものはこれか?といってFDを見せました。それ!というと渡してくれました。今でももう一つの箱の行方が気になります。米国もね、そういうことがあるんだった。。。