部品屋根性(25) Seeed社Groveビギナ・キットに見る野望?

Joseph Halfmoon

最初は「電子ブロック」的な教育用玩具?クリスマスプレゼントに最適な(余計なお世話か)と思ったんであります。美麗なパッケージにオールインワン、Grove Beginner Kit for Arduino。Seeed社伝統のGroveインタフェース接続の電子部品に加えてArduino互換機まで入っております。確かにBeginner向けにいたれり尽くせりなのですが、しかし、その裏にSeeedStudio社の野望?が隠されていることに気付きました。

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私のSeeedStudioの認識は、中国深圳本拠で開発用ボードなどのメーカというものでした。しかし、Seeed社の方向性は開発ボードのメーカなどという範疇に収まるものじゃなかったです。今回それを痛感しましたぜ。

Seeed社製品、何気に結構お世話になっています。RISC-V搭載GD32VF103の開発ボードなどは最近もちょくちょく使わせていただいております。玉石混淆とした中華メーカの中で、SeeedStudio社はボードの作りがシッカリしていることといい、Groveインタフェースなどのデファクトスタンダード化(?)といい、玉の方の旗手ではないかと思います。

今回、つい、クリスマス商戦に浮かれ(?)買ってしまいしたのが、Groveインタフェース接続の各種モジュール10種類とArduino UNO互換機が入ったGrove Beginner Kit for Arduino。アイキャッチ画像にパッケージを掲げましたが、パッケージを開けばこんな感じの「ワンボード」なんであります。Grove Beginner Kit Board

中央のボードがキット本体でありますが、各所に切れ込みが入っており、10個のGroveモジュールと、Arduino互換機を切り離せるようになっています。実は、

切り離さなくても、ソフト書き込まなくても実験できる

ように考えられています。詳しくは後で述べます。そして、箱の左にはGroveインタフェース用のケーブル、右にはUSBケーブルが格納されています。各ボードをこの基板から切り離した場合には左側のケーブルで接続し、電源もしくはPCと接続する場合には右側のケーブルで接続する、と。これさえあればOKっと。

ボード中央の基板がArduino互換機、Seeeduino Lotusと呼ばれています。ソフトウエア的には、Arduino UNOとしてArduinoIDEで書き込みできます。しかし、見慣れた純正Arduino UNO本体や、最近よく使っているAruduino UNO互換機とは見た目が全然違います。ソフトは互換なのですが、ボード上には、Seeed社Groveコネクタが3x4個も並んでいるためです。まさにGroveモジュール接続に特化したArduino互換機と言えましょう。マイコンはというと、DIPの純正品と異なり、表面実装パッケージ品になっており、PCとのコネクタもマイクロに変更されています。電源アダプタのコネクタもありません。とはいえ、Arduinoの端子はちゃんと出ているので、Arduino UNOとしても普通に使えるでしょう。これで純正品の本体価格と比べてお得感のある価格で購入できました。お買い得?

ちょっとピンボケですが、Seeeduino Lotusボードの拡大写真も下に並べておきます。Groveインタフェースの物理形状は同じなのですが、出ている端子は異なります。以下の4種類が並んでいます。

    • Digital用
    • Anlog用
    • I2C用
    • UART用

Seeeduino Lotus

いままで、私はGroveコネクタというもの、誤解してました。これみて認識を改めました。すみません。結構、好きな端子を(電源、GNDと信号2本ですが)出して良いものなのですねえ。

Seeed Studioのこのキットのホームページへのリンクを以下に貼り付けておきます。

Grove Beginner Kit For Arduino

さて、これだけであれば、何気に、GroveインタフェースでセンサとかArduino(互換機)に接続して電子工作のお勉強?ができるキットで済んでしまうところです。ホームページの説明も丁寧だし、添付されているモジュールも皆実績があって、Arduino環境ではサポートのライブラリ等も直ぐGetできるものばかりなので、何の困難さもありません。しかし、上のホームページの一番下あたりに来てちょっと、これでBegineerかい?と思ったんであります。

その辺には、定番、無償の電子回路CADであるKiCADの紹介あり。さらに見ると、以下のページへのリンクも貼り付けてあります。

Seeed Fusion PCBA service

Seeed社の運営しているPCB(プリント基板)のオーダーサイトです。これって、KiCADで回路図描いて、PCBのレイアウトも作って、ガーバーファイルをUPLOADしろということ?いくら何でもBegineerには敷居が高いんでないかい。。。

しかし、SeeedStudioはそんなことオミトオシです。Geppettoなるサービスが「推し」になっていました。これもリンク貼っておきます。

Make Your Customized Arduino Board for Under $50

日本でも、ガーバーファイルをネットで渡せば素早く安くプリント基板を製造してくれるようなサービスやっている会社あるんじゃないかと思います。しかし、このGeppettoというものは、

回路なんど分からなくても、大体の雰囲気で基板つくれちゃいます

というサービスなのでした。ぶっちゃけ、Begineerキットに含まれているGroveモジュールのこれとこれをArduino互換機に引っ付けて、このくらいのボードサイズに収めるようにしてちょうだい、といった感じの「レイアウト」を描くと1週間くらいで設計ができて、20日くらいで基板が製造されてくるようです。リンクの先の動画を見ると、電子回路なんか知らないんですけど~みたいなおネイサンが、Geppetto使って「自分の基板」作ってました。

makersとかの時流乗ったサービス

と言えましょう。それをSeeed社が延々と積み上げてきているGroveモジュール群が支えている構図です。半田付けどころかブレッドボードも作らずにモジュール接続すれば試作はOK。Groveモジュールであれば、面倒なソフトの下回り部分はライブラリ化されているので、アプリは簡単につくれる。動いたらGeppettoで直ぐに専用基板化してGO!私のような頭の古い者共には眩暈のする世界ですが、確かにすごい。こういう世界から次世代が登場するのでありましょう。まさにSeeed社の野望を具現化するツールかも。

眩暈がしたところで、現物に火をいれてみましょう。先に述べたとおり、このKitは切り離さなくても、Groveコネクタを接続せずとも、全モジュールを動かしてみることができます(切り欠きの橋のところに配線が通っています。)そして、良くできた全モジュールを動かすデモソフトが初期状態で書き込まれています。

中央のLotusボードのUSBコネクタに電源さえを供給すれば、PC側で何の準備もしなくてもデモが起動します。下の画面のような感じ。

InitialFirmware

右側半面の5個のモジュールに対応するデモが含まれており、どのデモを選択するかは、左下の方にあるポテンショメータの回転で指定します。その選択のトリガとなるのは左下のボタンで

    1. 長押しすると現在のデモを終了
    2. そうしたら選択モードになるので、ポテンショメータを回して選択
    3. 短く押すと選択したデモ起動

という操作方法です。何を選択しているのか、また、動作の結果がどうなのか、今の温度とか、気圧とか、を表示するのには、左側中央のOLED画面に表示されます。また、選択するときなど、左上のLEDが点滅し、ブザーが鳴ります。

ということで、10個の全モジュールが皆使われています。

とは言え、実際にソフトを書き込めないことには意味がないので、ArduinoIDEを立ち上げて、ArduinoのシリアルモニタにHello Worldする小さなプログラムを書きこんでLotusボードに書き込んでみました。Arduino UNOと設定しておけば、なんの問題もなく動作しました。

しかし、デモ用の初期ファームウエアがかなり良いものだったので、これに戻せるのかな、と見たところ、ちゃんと以下のページが用意されていました。

Initial Arduino Firmware Demo

ここからソース等をダウンロードし、各モジュールが必要とするライブラリをインストールすれば、ファームウエアのビルド成功、書き込めば初期状態に戻りました。ついでに搭載のGroveモジュール用のライブラリもIDEに設定できたのでOK。

いやいや、これは、玩具ではありませぬ、世界征服のツールか?

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