お手軽ツールで今更学ぶアナログ(51) M1K不調につき代替測定、周波数補償の件

Joseph Halfmoon

毎度思ったようにはいかずグダグダになる本連載でありますが、前回は珍しく順調。今回もと思ったらそうは問屋が卸さない。いつも以上にグダグダ、後でやり直しだな。テーマは「周波数補償を施した分圧器」であります。オシロスコープにプローブ接続したときの「補正」の原理。たまにやるアレです。

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「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」、今回は、ようやくたどり着いた2019年11月号であります。記事へのリンクを以下に貼り付けさせていただきます。

「ADALM1000」で、SMUの基本を学ぶトピック11:周波数補償を施した分圧器

私のようなアナログ素人には「周波数補償を施した分圧器」と言われて一瞬なんのことだが分かりませなんだ。しかし読んでみてようやく理解いたしましたよ。オシロスコープを使ったことのある人であれば、必ず1度や2度やったことがあるアレと同じことです。

    • プローブを取り付けて
    • CALと書いてある端子をプローブで咥えさせて
    • キレイな方形波が見えるようにプローブについているネジを回す

「これで新しいプローブが使えるようになりました」という感じ。この回を読めば、コレが良く理解できるんでありますが、いろいろグダグダで実験はうまくいかず。

補正、校正?

今回テーマは「周波数補償」なので、その文脈では「補償」という呼び方で良いと思うのです。しかし、プローブ(の根元に大抵ついている)のネジを回す行為をどう呼ぶか、ということにちょっと引っ掛かりました。ビンテージ物?のオシロの端子には以下写真のように記されています。

CALIBRATORcalibrator

そのままキャリブレーションと呼べば穏当でしょうが、Web検索すると日本語では、「補正」と呼ばれている場合と、「校正」と呼ばれている場合が混在していました。ううむ、どう書いたらいいのかな。気になると夜も眠れません。

 

オシロの話です。オシロといえばテクトロ、老舗中の老舗、定番中の定番のテクトロニクス様がどう呼んでいるのか調べてみました。

オシロスコープのすべて 第5章オシロスコープの設定と操作

「プローブの補正」「オシロスコープの校正」(周囲温度が5℃以上変化すると自己校正」が走るそうな)と言葉を使い分けていました。よって「補正」で決まり。寄らば大樹的な決定だな。。。

さて課題の実験

さて課題の実験なのですが、最初に申し上げておきます。指定された手順で手元のADALM1000(M1K)を操作しても、ボーデ線図のところがうまく行かず途中で断念してしまいました。しかたがないので、

雰囲気が似た回路を作ってAnalog Discovery2のボーデ線図で代替観察

してお茶を濁してしまいました。M1Kのボーデ線図機能、この間も使ったのだけれど、何で動かんのかな~。不思議です。もう一度調べ直してから再挑戦だな~。とりあえず本日はDigilent Analog Discovery2の結果で雰囲気だけ出してみた、と。

そんなグダグダですが、いつものとおり課題の解答記事へのリンクも貼り付けておきます。

November 2018 StudentZone Quiz Solution

今回、M1Kであるべきなのは、ちょっと実験が「M1Kに特化」しているからです。指定の実験回路がM1KのSMU内部の抵抗と浮遊容量を含むものだからです。内部抵抗は仕様1MΩと分かっていますが、浮遊容量は不明。その辺の推定も実験結果から行うべき設定になっているのです。M1Kで時間プロットがとれてもボーデプロットがとれないので、片手落ち、なんであります。

まずはM1Kでとれる時間プロットから。

M1Kによる時間プロット

EXP1_TIME緑がCH-A電圧、オレンジがCH-B電圧です。外付け1MΩの抵抗の両端にCH-AとCH-Bを接続しています。明示的にGNDには接続しておりません。CH-A側からはMIN 1V, MAX 4Vの方形波で駆動しています。CH-Bはそのときの電圧波形を測定です。このときCH-BはM1K内部にて1MΩの抵抗を介してGNDに接続しているので、1M:1MでCH-Aの電圧の「半分」の電圧が見える、というのがテーマの「分圧器」の実体なのであります。直流的には単純な分圧器ですが、実際には浮遊容量が存在するので、上の図のオレンジのように鈍った波形が観察されます。

上の図から容量を推定してみると190pFとかなりな容量(本当か??)。

さて、上のように期待どおりの時間波形がとれました。そこでCH-Aの駆動波形をサイン波、振幅を1Vppに設定しなおしてボード線図を描かせようと試みました。課題的にはこちらのボード線図のカットオフ周波数からもCを推定せよ、というご指定なのです。なぜだがボード線図描けませぬ、断念(残念。)

しかたないので、ブレッドボード上に以下のような回路を作成いたしました。

    • 抵抗2個1MΩ直列。
    • 直列2本の片方はGND、他方は信号源とオシロ端子Aに接続
    • 抵抗2本の中央はオシロ端子Bに接続
    • GNDに近い方の抵抗と並列に139pF(100pF+39pF)をいれる

GNDに近い方の抵抗とコンデンサがM1Kの内部回路の模造ということであります。

Analog Discovery 2によるボードプロット

ADbode0こちらでは問題なくボーデ線図とれます。黄色が入力、青が出力。青の-3dBのところの周波数測るなとお茶の子さいさい(などといって間違うなよ。)カットオフ周波数から推定したCの値は60pFくらい。自分で139pFつけているのに少なくないかい。

M1Kであれば、測定端子はSMUなので、CH-AとCH-B内部の構造は対称に近いと仮定できそうですが、 Analog Discovery2の場合、オシロの端子と信号源の端子は別々なので、A側とB側でそもそもリード線の本数から異なります。きっと、A,B内部の浮遊容量のアンバランスが影響しているのだと。。。本当か?

補償キャパシタ無の時間波形

こんな感じ。当然、補償が不足で鈍った波形が観察されます。

AD_TIMEこちらの時間波形から推定したCの値は85pF。やっぱり小さくないかい?

139pF

ADcap139B側にコンデンサ139pF分つけているのだから、A側にも対称に139pFつけてみた波形が上です。計算上はこれでピッタンコな波形になるはず。しかし、過剰な補償の波形です。補償のキャパシタ大きすぎるんでないかい。やっぱりA側にとりつけてある信号生成器のリード+オシロのリード2本分のキャパが、B側のオシロのリード1本のキャパよりきっと大きいのでは?

66pF

無補正時の測定から補正に必要なのは60~85pFという推定値を得ています。まずはボーデ線図から得た60pFに近い66pF(22pF並列3本)で波形を観察。ADcap60p今度は補償がチョット足らない感じ。

88pF

次に時間プロットから推定した85pFに近い88pF。多少の傾きは見えるものの、かなりいい感じ。

ADcap80p

補償キャパシタ88pFつけたときのボード線図

そこで88pFで補正したときのボード線図とりました。見事に意図通り、フラットな周波数特性。やったね(そんなことで喜んでいいのか。)

ADbode80p一応「周波数補償」できたので喜んでおります。しかし、M1Kを使わず「代替案」での実験だったので積み残し大有りです。もう一度M1Kのボーデ線図に向き合ってからリベンジだなこれは。気力がないから次回じゃないね。でも忘れるなよ、自分。

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