SPICEの小瓶(9) hFE、意外と「境界線上」のその実体?ホントか?

Joseph Halfmoon

特性の「揃った」BJT2個を並べて使いたい(ワンチップに2トランジスタのデバイスを買えば不要ですが)です。hFEが近い値ならいいんじゃね、と思いました。いろいろあるけれども hFEなら手元のハンディDMMで測れるし。しかし、ついテスタの測定条件とデータシートの測定条件を見て不安に駆られましたぞ。アナログ素人には皆目。

前回はバイポーラトランジスタのGm(トランスコンダクタンス)を微分とることでグラフ表示してみました。今回のhFE、それにもまして基本中の基本のパラメータじゃないですかね。ベース電流に対するコレクタ電流の増幅率(で良かったんだよね。知らんけど。)hFEの値で、販売グレード(お値段)が変わりますよね。よってこれ知らないと注文もできない、と。

デバイスによってばらつきは「おおきい」ものの、温度以外の条件(電流、電圧)が多少変わってもあまり変化しない値、とオボロゲな記憶。しかし、今回以下の記述を見てちょいと不安になったのでありますな。デバイスは2SC1815です。手元の現物は互換品ですが、データシートはオリジナルの東芝のものを参照しとります。

    1. データシートでには2つのhFE、hFE(1)とhFE(2)が記載されている
    2. 部品のオーダーコードでO、Y、GR、BLなどと書かれているのはhFE(1)の値によるグレード
    3. hFE(1)の測定条件はVce=6V、IC=2mA
    4. hFE(2)の測定条件はVce=6V、IC=150mA
    5. hFEを測定可能な手元の中華DMMWH5000AのhFEの測定条件はIB=2μA、Vce=1V(この条件でコレクタ電流Icを測っているみたい。)

ううむ、素人目にはDMMの測定条件とデータシートの測定条件が違い過ぎるようにも見えます。それにデータシートのhFE(2)の測定条件も怪しい。データシート上、Icの絶対最大定格150mAであります。絶対最大定格で規定というのはどゆこと?限界のときの値なのね。

LTspiceのシミュレーションしてみた

前回の回路を流用してチョイ直し(電圧源を電流源に変更)でお茶を濁しています。2SC1815のモデルパラメータは「怪しい」30年もの?です。前回は、Vbeに対するIcのDCシミュレーションでした。今回は、

    • コレクタにかける電圧は2通り。データシート記載の6Vと、DMMの1V。これを .STEPコマンドで。
    • IbeはDMM記載のほぼ2uAより小さいところから、データシートの測定ポイントを確実に上回るであろう2mAまで

といたしました。シミュレーション用回路が以下に。

circuit

シミュレーション結果が以下です。

      • 黄緑の下に張り付いているのが入力となるIbe電流。
      • 青がコレクタ電流Ic
      • 赤が、Ic/Ibeとして求めたhFEの計算値

なお、青線、赤線とも上がVce=6V、下がVce=1Vのときです。

Graph1

青色細線矢印で書き入れたのがデータシートhFE(2)の測定ポイントです。縦軸左目盛りの150mAが絶対最大定格なので、青線グラフのここより右上は絶対最大定格を上回ってしまっているヤバイ領域です。

これに対して上記グラフでは縦軸にほとんど張り付いている hFE(1) VCE=6V、IC=2mAのポイントがデータシート上のhFE(1)、もうひとつのVCE=1V、IB=0.002mA点がDMMの測定点です。

こうしてグラフに書いてみるとどちらもベース電流としては似たような値のところで規定していることが分かります。データシートではベース電流でなくコレクタ電流で規定し、DMMではベース電流で規定しておる、と。

ただ問題は上記のシミュレーションではVceの影響がデカイように見える点です。

そこで東芝様の古いデータシートからグラフを1枚引用させていただきます。縦軸、hFE、横軸Ic、そしてVce=6Vと1Vの場合の記載あるもの。Ta(アンビエント温度)により3本の線がかかれていますが

    1. Ic=30mA以下では、Vceが6Vだろうが1Vだろうが関係ない
    2. hFEは一定値

ということが読み取れるんであります。

hFE-IC

それからすると、DMMの測り方は間違ってない。データシートが規定しているhFE(1)と同じになるはず?。ううむ、素人にはシミュレーション結果とデータシートの差異が埋められませぬ。でもま、データシートのお墨付きあるのだし、ま、いいか。DMMで簡単に測れるし。

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