SPICEの小瓶(10) 電圧制御Switch、.model文が必要なのね。

Joseph Halfmoon

そういえばSPICEには電圧制御スイッチがあった筈、使ってみるべしと思い立って、プチはまりましたです。「スイッチだろ~ON/OFFするだけじゃん」などと思って回路図に挿入したら動きませぬ。まあLTspiceのHELPファイルを読んで、教育用サンプル回路を開いたら疑問は氷解しましたです。先に読めよ。自分。

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※実験は LTspice XVII(x64) (17.0.34.0) で行わせていただいております。

電圧制御スイッチ、Voltage Controlled Switchは、現実の部品というよりはシミュレーションモデルを作るときのお役立ちコンポーネントとしての役割なんじゃないかと思います。シミュレーション中にスイッチのON/OFF動作をしたいときに使うと。

名称的にはスイッチですが、その動作としては抵抗値が切り替わる抵抗です。2端子の制御ノード(+、-)間に印加される電圧に応じて、スイッチ両端の2端子間の抵抗値が切り替わります。オン状態(導通状態)でデフォルト1Ω、オフ状態ではデフォルト 1/gmin (gmin値はデフォルトで1e-12のようです)Ωの大きな抵抗値となります。

スイッチでしょ、適当につなげばうごくんじゃね、ということで接続したら以下のようなエラーがでました。

SW_ERROR

要は、swというお名前で現れるVoltage-Controlled Switchを、素のままぽろっと回路図に置いたら、モデルSWなんて無い、と怒られてしまった、と。結局、自分の「モデル」を1行追加すれば良かっただけのことなのですが。

LTspiceのHELPファイルを開いて、S. Voltage Controlled Switch を読めば解決します。そのページの中に書いてありますが、LTspiceのexamplesフォルダの中に以下のサンプル回路が置かれているので、こいつを開いて真似すればOKでした。

\examples\Educational\Vswitch.asc

電圧制御スイッチを挿入したかった回路

電圧制御スイッチを使いたかった回路が以下です。トラ技2016年4月号P.44に掲載されている「1.5Vを昇圧してVF=3VのLEDを点灯する実験」の回路です。乾電池1本相当の1.5V電圧から簡単な回路で昇圧して3V以上の電圧を作ってLEDを点灯させてます。面白いんじゃね、と。オリジナル回路を当方でLTspice化してみたものが以下に。

P44LED

そのシミュレーション結果が以下に。青がLEDにかかる電圧、黄緑がLEDに流れ類電流です。そして赤が2N2222のベースに与える1.5V振幅の矩形波です。P44TIM

確かにLED点灯しそうな感じがします。でもま、LEDを点灯、消灯するのに電池のところにスイッチつけたいよね、ということでVoltage-Controlled Switchを挿入、そしてエラーを受け取った、ということであります。

Voltage-Controlled Switchを追加した回路

結局、ぽろっと置いた Voltage Control SwitchのValueとして設定されているswをMySwitchというお名前に書き換え、.Model文を1行追加いたしました。ON抵抗は0.01Ω、オフの時は100MΩです。またHelpファイルみると制御ノードのスレショルドVtのデフォルト値が0V(つまり正負の電源使うときを想定しているみたい)だったので、Vt=1.0Vとしました(今回、1.5V単電源。)

modifiedCircuit

下のシミュレーション結果では、赤の線が制御ノードに加わる電圧で、1.5Vのとき、スイッチがONして回路が動きます。黄緑がLEDにかかる電圧、青色がLEDを流れる電流です。ModifiedCircuitTIM

スイッチ一つ入れるのに結構時間かかりました。普段から一通りコンポーネントをさらっておかないといざ使おうとしてもダメじゃね。

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