元より機械工学科卒、電気電子には弱いんであります。そこで唐突ですが、定番回路を経めぐることにいたしました。第一回は定番中の定番、 NE555アナログタイマICを使って矩形波を作ってみたいと思います。NE555は今から50年前の1972年に発表のIC、それが今まで売れていると。ロングセラーにしてベストセラーぞなもし。
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NE555のオリジナルは、米シグネティクス社でありますが、シグネティクスも既になく(フィリップスに買収されたのち、フィリップス半導体はNXPとして分社化?)しかし、世界中にNE555の「セカンドソース」はあり、いまだに大量に製造されておると。
今回実機回路を動かしてみるために、手元在庫を漁って見つけたのが、以下であります。
「業界最速の非安定周波数: 3MHz」を誇る製品です。この書き方からは「NE555業界」というものの存在を前提としとりますな。
LMCで始まる型番からするとナショナル・セミコンダクタ製品ですが、例によってナショセミ既になく、TIが買収済なんであります。LMC555は、NE555「コンパチ」の製品としては「モダーンな」CMOS製品です(オリジナルNE555はバイポーラ。)
今回動かしてみる回路
NE555は抵抗とコンデンサの値を変更することで周波数やデューティを変更できるRC発振回路です。単純なICに見えるのですが、結線により、ワンショットのモノステーブルになったり、マルチバイブレータになったり、モジュレータ的に使ったり、実にいろいろな回路になります。古くから応用を考えた人が多いのでしょう。変幻自在な感じがします。今回は基本中の基本「マルチバイブレータ」「非安定モード」を使ってみます。
さて、ど定番のICだけあって、手元のスマホにインストール済の以下のアプリでも発信周波数が計算できるとです。
まず「非安定モード」を選択し、R1、R2、C1に手ごろな値を入力してその周波数を求めました。こんな感じ。
次に「非安定モード(デューティ<50%)を選択してみます。このモードになると、7番6番間にダイオードが挿入されます。
アプリの計算結果は、ダイオード無のときに約48Hz、ダイオード有で約72Hzです。しかし、どんなダイオードとは何も書いてない。いいかげんな。
LMC555のデータシートから計算
ダウンロードしたLMC555のデータシートの astable オペレーションの項目を参照すると周期の計算式が載っているので計算してみました。
ダイオード無のときはアプリの結果と一緒ね。
LTspiceでシミュレーション
LTspiceにもNE555のモデルは含まれており(miscのフォルダ内)、シミュレーション可能です。まずはダイオード無。
測定値を見ると、約48Hzとな。一致。当たり前か。
続いてダイオード挿入してみました。ONセミコンダクタ製1N4148です。こんな感じ。
約63.4Hzとな。アプリの計算結果よりチト低め。アプリはダイオードの特性がエイヤーだからか?
実機動作を測定
今になって4番、5番ピンを始末してなかったのが悔やまれる実機回路が以下に。後の祭りというやつ。
Digilent社 Analog Discovery2で測定した波形(ダイオード無の場合)が以下に。周波数は48.5Hz。ま、RもCもそれほど精度のよいパーツでないので、こんなもんかい。
つづいて、ダイオード1N4148挿入したもの。周波数は約63Hzとな。シミュレーション結果とほぼほぼ一致。アプリの結果はやっぱり「ほどほど」?
一歩、常識が身に付いたのか?よくわからんが。