今回はそのルーツをフェアチャイルド・セミコンダクタに遡るレギュレータIC、723をつかって可変電圧のレギュレータを作ってみたいと思います。今回使用したのはNJM723D(日清紡マイクロデバイス社)ですが、寄る年波に勝てず?保守品種とな。でもま定番デバイス、代替品はあるみたいです。秋月殿ではまだNJM723D購入可能。
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同じ電源レギュレータでも見た目が違う723
前回まで固定電圧出力の3端子レギュレータばかりやってきました。単体トランジスタみたいな形の3端子で「とりあえず」外付けのコンデンサを2個とりつければ動作をするもの。それに対して今回の723は端子が多く見た目は全然違います。電源素人が、勝手な意見を述べるならば、3端子レギュレータの内部に「隠されている」基準電源、誤差増幅器、電流制限回路などの端子を「ボロリン」と外部からアクセスできるように出してくれているもの。基本は一緒、外に端子が出ているだけにいろいろ細工ができるもの。ホントか?
723自体はせいぜい150mAしか電流を流せないので、外付けのトランジスタを723で制御してもっと電流を流せる電源にすることが多いみたいです。知らんけど。
今回は単体723で流せる電流に限定。その代わり参照電圧を可変抵抗で調整することで出力電圧を1Vちかくから6V付近まで調整できるようにした回路としてみたいと思います。今回の実験回路の回路図が以下に。
上記の回路のVREF端子はは温度補償型の基準電圧源の出力です。データシートによるとミニマム6.8Vからマックス7.5Vを出力してくれます。これを外部の抵抗で分割して、誤差アンプの+端子に入力します。Vout出力が誤差アンプの-端子にフィードバックされているので、Voutが+端子の電圧と一致するように出力電圧が調整されるという塩梅であります。
上記より、目標の出力電圧を以下のように計算してみました。2kの可変抵抗(10回転できる細かい精度のやつです)を操作すれば低い方は1.1~1.3Vくらい、高い方は5.7Vから6.2Vくらいまでの電圧が取り出せる筈。
現物回路
とりあえずブレッドボード上に組み立てた上記回路が以下に。後ではんだ付けして固定しようかと思ってるのですが、はんだ付けメンドイです。
動作確認
上記回路に+12Vの電圧を与えて出力電圧を観察したところが以下に。まずは出力が高い方にくるように可変抵抗を振り切った場合。5.828Vとな。予定範囲内ね。計算通り。
つづいて低い方。反対方向に可変抵抗を振り切ります。1.136Vとな。これまた予定の範囲内ね。
NJM723Dは保守品種
NJM723Dのメーカである日清紡マイクロデバイス社の以下のページにNJM723Dはリストアップされてます。
保守品種ということは、まだディスコンではないけれど、そのうちディスコンになるだろ~という品種ですな。まだお客さんがついているので販売は継続(製造も継続しているかどうかは不明)、でも新設計には使わないでね、という感じですかね。
オリジナルのμA723(フェアチャイルド・セミコンダクタ、トランジスタの元祖ショックレー・セミコンダクタから分かれた「第1世代の」シリコン・バレーのスピンアウト、そこからさらにインテルなどの第2世代のスピンアウト会社が出てくる母体となった。ちなみにフェアチャイルドはオンセミに買収されてその一部になってるみたい。知らんけど。)から50年どころか60年近くも経つのでいたしかたありますまい。とは言え、いまだに723は人気があるみたい。まだまだ現役?