今回は能動素子であるオペアンプを使ってインダクタンス(コイル)をシミュレートする回路を嗜んでみます。汎用インピーダンスコンバータ(GIC)、というお名前のとおり、インダクタンスだろうが、キャパシタンスだろうが自由自在。オペアンプの特性の許す限りにおいてホンモノのインダクタンスと見分けがつかず、ホントか?
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Generalized Impedance Converter (GIC)
オペアンプを2個つかったGeneralized Impedance Converter(GIC)は、昔から知られている回路だと思うのですが、ちょっと探しただけだとなかなか解説ページなどは見つかりませぬ。使い途がビミョーなのかもしれませぬなあ。ブラウザに「GICとは」と問いかけたらば、生成AI殿が「金利」についてゴタクを述べ始めました。どうも常識的には
GIC=Guaranteed Interest Contract
ということで、金融関係の概念になってしまうようです。それでも『The Art of Analog Circuits』様の以下の日本語資料が見つかりました。あざーす。
さて、今回はこのGIC回路を使ってインダクタンス(コイル)をシミュレートする回路を組み立ててみたいと思います。作った回路をAnalog Discovery2のインピーダンス・アナライザにかけて「インダクタンス」として認識されていることを確認するところまでやってみます。
まずはシミュレーション
いつものようにLTspiceを使ってシミュレーションするところから行きたいと思います。オペアンプが2個必要なので2回路入りのオペアンプが良いのです。LTspiceを使うことから例によってアナデバ様忖度が発動。使用したのはADTL082オペアンプです。ぶっちゃけTL082互換品ね。LTspiceの回路が以下に。
下の方に、比較用にL1というホンモノのインダクタ(0.01Hつまりは10mHじゃね)がありです。そして上の方にオペアンプ2個、抵抗4個、コンデンサ1個の回路あり。これこそGICで作ったシミュレーテッド・インダクタンスなんであります。計算式については回路の横に書き添えました。これでインダクタンスに見えるのだ、と。
まずは過渡解析の結果です。緑が入力波形、上のグラフの赤が本物のインダクタ、下のグラフのピンクがGIC回路ででっち上げた?インダクタであります。
見分けがつかん?
まあ、過渡応答ではラチがあかんということで、AC解析してみました。AC解析用の回路図が以下に。
AC解析結果は、ついでにVをIで割ってインピーダンスらしきものに変換してみました。ただしグラフの縦軸の単位がdBとかのまま、トホホ。
上の「理想的」なインダクタは一直線。これぞインダクタンスだと。一方オペアンプを使った下の方は、100kHz近くなると外れてます。でもね、本物のインダクタンスだって、いろいろあってこんな感じのグラフになる筈だから。。。
現物回路で確かめてみた
左下の方にあるコイルが10mHの「ホンモノ」インダクタンスです。これに対して右側にある回路がGICであります。なお、ADTL082は、ADALP2000部品キット所蔵のブレークアウトボードを使っているので、端子配置は本来とは「鏡像」になってます。頭こんがらがる。。。
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- 本物のインダクタンス
インピーダンス・メーターにかけた結果が以下に。10.11mHとな。
なんだ、本物だって数百kHz付近に山が来てるじゃん。
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- GICでシミュレートしたインダクタンス
インピーダンス・メーターにかけた結果が以下に。9.699mHとな。いいんでないかい。
注目は、Qualityファクタ欄です。約57だと。本物は測定周波数1kHzで約2だったので、GIC使った「インダクタンス」の方がずっと良いってことじゃん。
LTspiceで予想された付近に山ができとりますな。
GIC回路で作ったL、意外と使えるんじゃない?