
今回は、Educationalフォルダ所蔵の回路図を漁っていて見つけた「ナニコレ?」的な記法についてです。「そういう書き方、使ったことないよ~」と調べてみたら以外に仕組みはシンプルでした。ホントか? 半導体モグリ老人には、ちょっと敷居がお高い設定だけれども、まあ、ヤリタイことは分かる、という感じ。大丈夫か?
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BandGaps.asc
LTspiceのEducationalフォルダ内のサンプル回路のファイルを漁ってます。今回は、以下です。
BandGaps.asc
BJTトランジスタを使ってバンドギャップ参照電圧源を作ってみるものらしいです。ファイルを開いてみればこんな感じ。
使われているBJTのモデルが、NPNはNとか、PNPはPとか「茫漠」とした感じで略されているだけに見えるその横に、上記赤枠つけたとおり、10という数字が続いてます。ナニコレ、SPICE素人老人はこんな書き方したことないよ。。。
面積係数
上記の回路の「N 10」の10がどんな働きをしているのか知るために久しぶりにSPICEネットリストを眺めてみることにいたしました。上記ではバンドギャップリファレンス回路が4種類も並んでいるので、一番左の「シンプル」なやつに着目。こんな感じ。
問題のNPNトランジスタQ3のところをみたらば、モデルである「N」の後ろにそのまま10がコピーされております。単なるコピペかい!
その意味はBJTトランジスタのSPICEモデルを見れば明らかっす。
modelの後にオプショナルなパラメータとして [area] がくるのね。面積係数ってかい。まあシリコンウエファ上での面積の「倍数」。ここでは、ざっくり言ったら、トランジスタを「10個」並列に並べた的な?いいのかそんな理解で。
当然、面積が10倍になっても全く変動しないモデルパラメータもあり、面積に比例して増えるパラメータもあり、その辺はSPICEモデルのディープなところに突っ込まないとならない感じ。モグリの老人は差し控えておきます。
まあ、何でここに面積係数が必要だったかは、バンドギャップ参照電圧源で温度特性を「相殺」する特性を記述するのに必要だったから、ということに他なりませぬ。いつものようにGoogleの生成AI、Gemini 2.5 Flash様に、お教えいただきました。
ここで注目するのは、2番の温度に比例して増加する特性ΔVBEです。緑枠をつけておきましたぞ。「異なるエミッタ面積を持つ2つのBJT」ってとこです。回路図上ではQ3とQ4のトコね。ここの特性に差を持たせられるらしいです。つまり異なるエミッタ面積=Q3はQ4の10倍って感じ。
Gemini様が教えてくだすっている温度特性の相殺のシミュレーションの様子が以下に。横軸の数値が消えてますが、温度です。左端がマイナス55℃、右端が125℃です。
V(a)は、上記の回路の出力電圧Aです。このスケールでみると、ほぼほぼ一直線で安定。温度気にせず参照電圧として使えるのね。
一方V(a)は、V(A-N009)+V(n009) です。V(n009)は、Q3、Q4のベース電圧、V(A-N009)は、抵抗R2の両端の電圧差です。上記をみると見事に右肩さがりと右肩あがりでクロスしてます。これを足し合わせると平になっちゃうのか。これがGemini様がお教えくだすっている相殺の正体みたいですな。
全体シミュレーション結果
折角なので、4種回路そろい踏みのシミュレーション結果が以下に。
縦軸みると、0.005Vくらいの狭いエリアでは上に凸な曲線を描いているみたい。でも遠くからみたらばほぼほぼ一直線だわ。