なかなか読み進められない『オペアンプ大全』ですが、今回は第2部Chapter-1の4-6 オペアンプの周波数応答、に入ります。といっても今回は前半のみ。大信号特性(出力信号が元気よく振れるとき)です。小信号特性はまた次回。大信号(といっても振幅はV単位、多分)のときに支配するのはSlew Rateだと。
※『OPアンプ大全を読む』投稿順indexはこちら
※「オペアンプ大全」はアナデバ様の以下のページからダウンロード可能です。
OPアンプ回路の基本から応用まで、OPアンプ大全を無償提供中
原著はOp Amp Applicationsという書物だったらしいです。
スルーレート Slew Rate
スルーレートは、オペアンプの出力を変化させるときに単位時間、通常はμsecあたり、何Vの変化が可能かという比の数字です。大きければ素早く信号を変化させられることを意味する数字です。ただね、Slew RateのSlewって、オペアンプのここでしか「そういう意味」で使われているのを見たことない単語っす。ずっと気になっているのだけれど。わからへん。
どうもスルーレートは大きければ良いというもんでもない見たいっす。高速のオペアンプでは高速の信号を駆動するために大きくなければダメだけれども、大きくしたら大きくしたでトレードオフはあるみたい。知らんけど。前回、Avolの回で例としてあげたOPアンプ5種のSlew Rateを各データシートから抜き出して一覧にしたものが以下に。
OPAMP | Slew Rate (typ.)[V/us] |
---|---|
LT6206 | 450 |
OP37 | 17 |
OP27 | 2.8 |
LT1006 | 0.4 |
OP177 | 0.3 |
上記では、上にある品種ほどGBWが大でAvolは小という順番です。高速だけれども開ループゲインの小さいLT6206がSlew Rateも大。低速だけれども高精度(ゲイン大)のOP177はSlew Rateも最小っす。天は2物を与えず?
フルパワーバンド幅FPBW
Slew Rateの制限に引っかかると「スルー・リミッティング」と呼ぶらしいです。特定の信号振幅でリミットに引っかからない最大周波数をFPBWとよぶのだそうな。振幅Vpの正弦波に対するSlewRateとFPBWの関係式を『OPアンプ大全』から引用させていただきます。
今回は上記に尽きるっす。
ちなみにVp=1Vの振幅の出力の場合、上記のオペアンプ共のうち
-
- LT6206 FPBW=約72MHz
- OP177 FPBW=約48kHz
と計算できました。この限界まで使えるわけでないけれども、その差は「桁違い」。でもま、前回のAvolでは、LT6206の10万に対してOP177は1200万と圧倒していたのだから致し方ない?