個人的に「なんちゃら」コンバータというものに思い入れがあり、ふと例の箱(Analog Devices ADALP2000 Analog Parts Kit)をみやれば、V/Fコンバータなるものがあるではありませんか。これは早速動かすべし、と決意して、アナデバ様のホームページからそいつのデータシートをダウンロードしようとしたところ、残念な事実が明らかになりました。
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まずは、「そいつ」の型番と、ホームページへのリンクを貼り付けておきましょう。
AD654 VF(電圧 / 周波数)コンバータ、低価格、モノリシック
残念な理由は、上のページの右肩にひっそりと書かれています。
新規設計には非推奨
まあね、販売はされている。まだ、ディスコンにはなっていない。昔から継続して使っているユーザさんが購入されるのはいたしかたないけれども、新規設計に使うと、結構早い時期にディスコンになるかも知れませんよ、という注意書きであります。
得てして古い設計の製品だと、古い工場の古いプロセスで製造されていたりします。古いプロセス、古い設計は競争力がなかったりするので、だんだん先細りになっていくものです。また、半導体工場も劣化して行きます。製造装置だけでなく、配管とか設備関係の老朽化は結構問題の筈。なにせ「超危ない」ガスなども普通に使うのが半導体工場なので配管から漏れたとかいうのはシャレになりません。よって、古い工場を閉じる見込みがあれば、そこで製造されている「奴ら」はまとめてお陀仏になる可能性が高い。勿論、ベストセラーで売れ続けている、というような製品であれば、ほっとかれませんな。寄ってたかって後継品種を新工場の新プロセスで立ち上げて、スムースな移行(通常お客さんの再評価が必要)が計画される筈。
非推奨、と書かれていて、それでは同等品とか、類似新製品とかが紹介されていないのは、「使命を終えた」感があります。ほんとうはどうなのか。
さて、そのAD654 VFコンバータです。V(電圧)をF(周波数)に変換するICであります。変換というと漠然としてますが、電圧に「おおむね比例」した周波数のパルス列(矩形波)を出力してくれるICという理解で良いんじゃないかと思います。アナログの電圧をデジタルな0/1の信号に変換するので、一種のADコンバータとも言えます。何が利点かといえば、取り扱いの「難しい」(遠くまで引っ張るなんざ恐れいる)アナログ信号を「優しい」0,1のデジタル信号に変換してくれ(遠くまで「送る」手段はいろいろあり)、さらに言えば、ごく初歩的なデジタル回路であるカウンタで数えれば数値化できる、というところ。その代わり、周波数という時間に引っ付いたものになってしまうので、瞬間の値であっても、ある時間をかけないと読み取れない、というのが最大の欠点でしょうか。、昔はこの手の回路が多かったような気もします。なにせ、ADコンバータ搭載というと高級マイコンという感じがあったので。今や、ほとんどのマイコンにはADコンバータが搭載されているので、確かに電圧を周波数に変換してくれるだけでは、なんだかな~という感じもあります。ただ、なにげに良いところもあって、
- 電源電圧5Vからだが、30Vといった高い電圧まで変換可能
- 入力インピーダンスは高いようなので、電流を流し出せないようなセンサにも直結可能で、比較的容易に精度を出せそう(時間はかかるけれど)
測定レンジの調整などは、上のページからデータシートをダウンロードすれば分かりますが、抵抗とコンデンサだけでできます(ただし、よく考えて値を決めないとなりません。新規設計非推奨なので?今回はヘタレで適当な値で動かしてみました。)
まずは、Analog Devices ADALM1000(M1K)で、動かしてみます。M1Kの5V電源を、AD654のデジタル側の電源(出力信号、プルアップでつなぐ)としても、アナログ回路の電源としてもつなぎ(特にアナログ電源に使うための手当などもせず)、CH.Aで周波数を測るために波形を見、CH.Bで入力電圧を与えてみました。
ちゃんと動作はしました。が、下の波形をみるとちょっとガッカリ。
折れ線グラフ?
なにせ、M1Kの「オシロ」は100kSPSであります。AD654は最高500kHzの周波数出力までできるので、M1Kでは足りませぬ。
そこで、例によって、手元にあるもう一つのお手軽ツール、Digilent社Analog Discovery 2をばとりいだしました。こちらなら500kHzは全然問題ない。それにに、周波数をそのまま数字で表示してくれる機能もある。計算面倒な私にはうってつけ。
下の写真のように、入力電圧76.978mVのとき、77.409Hzだそうな。(入力電圧の生成にはパターンジェネレータ使っていて、設定は100mVなのだけれど)
続いて1V。
本当は、入力に緩い速度の三角波など与えると、波形が広がったり狭くなったり面白いのですが、動画じゃないので残念。たった3点ですが、グラフにしてみるとこんな感じ(適当な定数で動かした一例ということで)。
素性のよい、綺麗なグラフにみえます。やっぱりいいものだな~、残念ですねえ。