お手軽ツールで今更学ぶアナログ(17) LTM8067、絶縁型μModule DC/DCコンバータ

Joseph Halfmoon

たまにアナログなデバイスを実体験(というほど使い込んでいないですがね)しておりますと、電源足らないな、と思うことが度々あるんであります。足りないといって容量ではなく、供給可能な電圧範囲が足らないことがしばしば。とは言え「ちゃんとした電源」は重くてお高い。そう思っておりましたら灯台下暗し、箱の中に良いものが入っているじゃありませんか。アナデバ傘下のリニアテクノロジーLTM8067。

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ここまでのところ、以下のお手軽ツール2機種に電源も兼ねていただいてデバイスを動かしておるのであります。

  • Analog Devices社 ADALM1000(M1K)
  • Digilent社 Analog Discovery2

M1Kの方は、固定電圧源+2.5V, +5Vに加えて、2つのCHをプログラマブルな電圧源もしくは電流源として使えますが、0から5Vです。以前の回で、それでもうまく「立ち回れば」-5Vから+5Vまでの測定ができたりしたことがありましたが、基本的に電圧差は5Vまでです。Analog Discovery2の方は、固定電圧源が無い代わり、測定チャネルとは独立したプログラマブルな電圧源が2チャンネル使えます。-5Vから5Vまで設定できるので、片方を+5V、片方を-5Vなどとすれば電位差10Vまで可能。しかしどちらも

±12Vに加えて+5V

みたいなデバイス業界の古典は実現できませぬ。そんなおり、目を背けていたADALP2000 Analog Parts KitのPowerの部を眺めたならば、

LTM8097 isolated do-to-dc converter

なるものが入っているじゃありませんか。一言でいうと

2.8Vから40Vの入力電圧を、2.5Vから24Vの出力電圧に変換

してくれるデバイスであります。上のように書くと何かありがたみがないですが、5V入力から3.3V出力を作るような降圧はもちろん、5V入力から12V出力を作るような昇圧もできるものであります。便利。型式的にいえば、絶縁型フライバックコンバータというやつ。自分で説明しようなどと大それたことはいたしません、「絶縁型フライバックコンバータ」で検索すればその道の権威の方のご説明が沢山みつかるでしょう。そんな回路が、たかだか

9mm x 11.25mm x 4.92mm

というμModule内に格納されています。アイキャッチ画像の青いBOB基板上、Linearのロゴも勇ましい黒いデバイスがそれです。以下にURLを書き留めましたページからデータシート(日本語あり)をダウンロードすれば明らかなのですが、

  1. 出力電圧は、外付けの抵抗値で調整
  2. 入力、出力に何個かコンデンサが必要

です。抵抗は、出力電圧の設定が低い時に大きく、高いときには小さくする必要があります。また、コンデンサは、入出力電圧の設定に応じて、最低必要な容量が決まっています。それより大きい分にはOKみたいです。

LTM8067 入力電圧範囲が2.8V~40Vの絶縁型μModule DC/DCコンバータ

表面実装型のμModuleをBOB化したときに、ついで?にコンデンサと抵抗もBOB基板に載せてくれていました。ありがたし。入力のDC電源をつなぐだけで、即電源として使うことができます。(今まで良く調べもせず使わなかった私が悪い。)

表面実装のキャパシタの容量など一応確認しておこうと、ADALP2000 のLTM8067モジュールのBOBの回路図を調べてみたのですが、私は発見できなかったです。そんなん知らなくても電圧測ればつかえるっしょ、って感じですか。

善は急げ?ということで、手元にあった9V、2A出力のACアダプタのコネクタを急遽ブレッドボードに刺さるような変換基板を半田付けし、BOB基板と接続してみました。LTM8067から出力される電圧は、ハンディDMMで読み取れるようにしてあります。(入力電圧は、9.02V確認済)

さてこの小さなBOBの電源回路の出力電圧設定は、ポテンショメータになっていました。以下のデバイスです。

Bourns3386 3/8″ Square Trimport Trimming Potentiometer

3386という型番で外形がきまっても、中の抵抗値はきまりません。Resistance CodeというコードでStandard Resistanceがきまるらしい。コードをしらべるとパッケージ上面に103とあったので、10kΩの製品のようです。1.78kΩから15.4kΩまで変化させられればLTM8067の設定可能な全範囲をカバーできる筈なのですが、実際には上下でちょっと無理な範囲がある感じです。

なお、このポテンショメータを製造しているのは、

Bourns

という、米国の会社でした。1947年創業、70周年を越える電子デバイスの老舗らしいです。もともと草創期の航空産業向けに電子デバイスを供給するために設立されたとあります。ううむ、日本にも陸軍の飛行機用に抵抗器を作ったのが会社の始まりとかいうデバイス屋さんがあったなあ。。。なお、ポテンショメータだけでなく、各種デバイスをいろいろ作られています。本社はカリフォルニア州リバーサイド。つい年寄りは「ホテルはリバーサイド」などとうたってしまいますが、カリフォルニアのリバーサイドに確かにリバーはありますが日本の「リバー」を想像して行った私がバカでした。リバーサイドからちょっとばかし走れば、もはやモハーベ砂漠。

閑話休題。ACアダプタに電源いれて、LM8067の出力電圧を確認します。

まずは、ポテンショメータの中央付近。ほぼ5Vが出力されています。

次に、抵抗最大まで回してみると、こんな感じ。微妙だけれども3Vプラス5%ならOKか。余裕をみると3.3Vってとこでしょうか。

さて、逆方向(抵抗小な方向)に振り切ってみると、こんな感じ。15Vを越え、16Vに迫っている。

何分、ポテンショメータなので、グリグリ回しているとそのうち壊れるでしょう。12Vか15Vくらいの電圧に設定し、お手軽ツールじゃちょっと無理なときに使ってみることにいたしますか。

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