鳥なき里のマイコン屋(7) 益々快調Armのお供に8051説

今日は「Armのお供に8051説」ではなく「8051のお供にArm説」と逆転するべきかもしれません。どこの会社でも、崖っぷち、窓際、隅っこに追いやられている感じがする8051コアMCUなのですが、今日取り上げさせていただく会社から引用させていただくと「8051 マイクロコントローラ(MCU)の大手サプライヤーとして」と自ら8051大手を名乗っているのです。そんな好待遇に涙がでますね。もっと早くにとりあげるべきでした。

Nuvoton Technologyの会社の話はこちら 2019/11/28投稿

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その会社は、Nuvoton Technology さんです。台湾の会社です。なんだ聞いたことないな、と言わないように。もともとは「華邦電子」、日本ではWinbondと英語名の方が有名であろう会社のロジックICビジネス部分が「切り出された」会社です。第4回では富士通のマイコン部隊が切り出されたケースを見ましたが、まあ、毎度のこととは言え、切り出されるのはアナログでもなく、パワーICでもなく、ロジックICだと。ロジック屋には悲しい現実かもしれません。ただ、Nuvoton社の場合は、Winbondグループ内にとどまっているようなので、多くの日本のMCU部隊よりはましな気がします。

さて当然、8051コアのMCUの製品群を持っています。しかし、見慣れぬ表記があります。「6T/12T」とか「1T/4T」とか、8051コアにもいろいろあるのだ、という感じです。結構、台湾系の会社は仲間内で通じる符丁のようなものを全面に押し出してくるときがあるので、慣れないと言っていることが通じなかったりするのです。これも「8051業界」(この符丁でそういう業界が確かにある、と信じました)特有の符丁といっていいんじゃないかと思います。オリジナルの8051のクロックサイクルとマシンサイクルの関係を覚えている人でないとすぐに理解できない符丁です。インテルのオリジナルの8051は、6クロックで1マシンサイクルでした。命令により1マシンサイクルで完了するものと、2マシンサイクルで完了するものがありました。ぶっちゃけ1マシンサイクル内でROMからフェッチして解読して演算して書き戻しをするのでレジスタ操作だけなら1マシンで足ります。2マシンサイクル、つまり12クロック必要なのはメモリにアクセスするような命令です。そのオリジナルと同じ動作をするのが6T/12Tという分けですね。それに対して1T/4Tというのは、レジスタで動作するような命令はRISC並みに1サイクル、そうでない場合はちょっと時間をかけて4サイクルで処理するという意味でしょう。命令セットは同じでも実装が近代化されているコアなのだと思います。この辺のコアのバラエティを見ても、自ら8051の大手と名乗るだけの層の厚さです。確かに、今まで見てきた中では一番かもしれません。

当然、32ビットMCUはArm Cortex-Mシリーズです。小さい方はM0で、大きい方はM4という構成で、すっきりした感じです。さらに、ネットに接続されるIoT向けということでセキュリティを前面に押し出したM23コアの製品を現在拡充中、という感じでしょうか。ArmコアのMCUは、Armの意図どおりに素直にやっているように見えます。なにか、面白いものないのか、と見てみると、ありました。MCUでなく、Armコアのプロセッサという位置づけですが、ARM9が残っていました。コアはARM926EJ-Sです。昔々、ARM9が最新機種の頃、ARM9だったらARM926EJ-Sが欲しいよねと当時のARM社のセールスの人に言ったら、「お目が高い」とヨイショされたことがあります(諸般の事情で買えませんでしたが。)実際、当時としては主力機種だったと思います。まだ売っているということは使われているアプリがまだ現役、ということでしょう。なお、お気づきかと思いますが、ARM9と書くときは大文字にしてます。当時はARMで、最近のようにArmと綴らなかったので。

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