鳥なき里のマイコン屋(10) On Semiconductor

JosephHalfmoon

今日調べるのは On Semiconductor です。この名前になってからも20年くらい経過していますが、ある意味ここはとても歴史があるのです。母体となったのはモトローラ社の半導体部門の「一部」です。モトローラ社の半導体部門の分社化といえばフリースケール・セミコンダクタ社(今では第2回でとりあげたNXP社の一部ですが)が有名で、こちらの会社が旧モトローラのMCUを含む集積規模の大きな半導体製品は皆もっていったわけです。On社の方に残っていたのはディスクリート(集積回路でない)半導体と、パワー系、アナログ系といった渋い半導体ばかり。だからそのままではMCUの話には出てこない筈。でもこちらの方が実は儲かるのですかね。SoCプロセッサなど、開発にお金がかかるので、一発外れるとダメージが大きい。その点、渋い「玄人」向けのデバイスを受け継いだOn社は、着実というより、かなり急速に成長しています。原動力は「買収」です。

On社は、日本国内では三洋電機の半導体部門を買収しています。三洋電機の半導体部門は、自社の家電向けなどを中心にMCUを手掛けていました。この買収のときに、(いろいろ紆余曲折はあったにせよ)旧三洋電機起源のMCU群はOn社に「引っ越し」ということになったのだと思います。On社は、さらに日本国内で、富士通の半導体工場を買収したりもしています。買収後しばらくして、閉じてしまった工場もあるのですが、外資の半導体会社の中では、日本国内の拠点の規模もあって、プレゼンスが大きいように思います。

当然、On社の買収は、日本国内に留まりません、本拠地の米国でもほとんど毎年のようにどこかの半導体会社を買収している感じです。最近、話題になったところだと、フェアチャイルド・セミコンダクタを買収した、という件があります。フェアチャイルド・セミコンダクタは近年はそれほどぱっとした活躍をしていなかったとは言え、何といっても「シリコン・バレー」の起源の会社で、半導体業界では老舗中の老舗です。モトローラいらいの伝統のあるOn社ですが、この買収により、半導体ビジネスの起源にいたる系譜を受け継いだわけです(現在のビジネスには何の足しにもなりませんが)。

さて、本題に戻ります。買収を重ねて大きく広がり(そして整理も大分したように見える)On社の多様な製品群では、MCUはごくささやかな分野に見えます。しかし、ここには3系統のCPUを使った製品群がありました。最初に登場するのは LC87シリーズというMCU製品です。コアは以下のもの。

Xstormy16

これこそ、三洋電機のレガシーCPUだと思います。名前の通り16ビット機ですが、普通にgccでソフトがかけるようなCPUです。昨日もありましたが32ビットに近い16ビット機と言っておきましょう。このCPUはもともと日本起源なので、iTRON系のOSのサポートがあります。多分、日本人でよくわかっている人も多数いるのではないでしょうか。ただ、三洋電機亡き後、使い道が広がっているのかどうか?MCUのお客さんは、ソフトウエア、ハードウエアの開発に相当投資するので、一度使ってしまうとそう簡単にはCPUを交換という分けにはいかないものです。しかし、新機種の設計となると、新しい勢いのあるCPUコアに乗り換えるか、という気持ちになりがちです。勢いのあるものに載せておけば、先がつながる、と皆思うからだと思います。よって当然、

Arm

という選択肢が登場します。実際、調べるとArm コアのMCUの定番といえる、Arm Cortex-M0+ と Cortex-M3 コアの製品がありました。しかし、On社の場合、Armコアを用いているのは「特定用途向け」の製品に限られています。サブGHz帯のRF向けMCUです。まさにIoT向けど真ん中、IoTに使えそうなセンシングや電源ソリューションなどももっているOn社ですからデバイスの中心となるMCUは、ほぼ必然的にArmでやっている、という位置づけのようです。これに対して、旧三洋系コアはまず「汎用」MCUという位置づけ、「専用」MCUとしては液晶ディスプレイまたはUSBとの接続用。綺麗に用途が分かれます。そして最後に

8052

コアのMCUが登場します。8051と8052の違いは既に説明したのでそちらを御覧ください。CPUとしては同じと思っていいというのが私の意見です。よって「Armのお供にレガシー8051説」ここでも目出度く成立。その上、驚くことに8052コアの製品に”new”と書いてあるのです。他社の多くで8051コアが生き延びているのを見てきましたが、古い製品が残っているケースが多く、言っちゃ悪いですが「崖っぷち製品」も多かったです。しかし、ここでは新製品。そして用途を見ればArm同様、無線向けに特化したMCUでした。Armは、通信らしい通信をする標準的なプロトコルに向けた無線MCU、8052は、ともかく「ウルトラローパワー」で、多分ボタン電池くらいで動作可能な、アクティブ型のRFIDとか、ビーコンのような単機能の無線デバイス向け、という用途別構成のようです。まさにArmと8051(8052)のHiLoMIX。

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