各社のマイコン(シングルチップ・マイクロコントローラ、MCU)を経めぐっていると、Armばかりが蔓延って、独自「プロプライエトリ」コアの影がとっても薄い今日この頃です。どこかにArmを引っ込めるような「逆張り」なマイコン・メーカー居ないか?と思ってみたら、いらっしゃいました。日本に。
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何を隠そう(隠す必要ないか)、ラピス・セミコンダクタです。業界に詳しくない方は「ラピス」なんて聞いたことがないよ、とおしゃるかもしれません。元をたどれば沖電気の半導体部門です。由緒正しい半導体屋さん。なにかカタカナの名前になって外資に買われたのかと言えば、さにあらず。買ったのはロームです。こちらも由緒正しい京都の半導体屋さん。ロームは、凹んでいる会社が多い日本半導体の中では、好調な方じゃないでしょうか。かってはヤマハの半導体部門を買収し(東海道新幹線が横を通っているのでYamahaからRohmに看板が変わったときにはちょっとセンチメンタルな気持ちになりました)、それから沖電気の半導体部門を買収し、と規模を拡大してきたからです。
さて、沖電気、おっといけないラピス・セミコンダクタのMCUコアのラインナップを整理してみましょう
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- 8ビット、ラピス独自コア
- 16ビット、ラピス独自コア
- 32ビット、Arm Cortex-M0
なんだ、Armあるじゃないか。でもね、Armコアは1機種のみ。ML630Q790(データシート的にはML630Q791という型番に見える)という品種です。そしてその紹介の傍らには「新規設計非推奨」、出ました「保守品種」です。既に使用しているお客さんには「当面」販売を続けさせていただきますが、「ラストバイ」「ディスコン」「EOL」が近いので、新規設計には使わないでくださいね、という意味ですね。どう探しても、マイコンのシリーズには他にArmコア品は無いようなので、ラピスのMCUの製品ラインからはArmコア品は無くなるように見えます。(ここから新規ラインでどかんとArmプロモーションするようには今のところ見えません)
力を入れてプロモーションしているのは、U16と呼ぶ独自16ビットコアとU8とよぶ、やはり独自の8ビットコアに見えます。それら独自コアの「売り」を見てみましょう。
U16の売りは安全機能
ただ「安全機能」などと言われるとすぐに車載かなどと思ってしまいますが、このマイコンは家電などの普通の用途向けです。安全機能というのは、ハードウエアの自己診断機能や誤り検出、不具合時の代替などの機能(ハードウエアに14もの安全機能を組み込んでいるそうです)と、ソフトウエアの自己診断機能(こちらは10個)を合わせたもののようです。特にハードウエア組み込みの安全機能は、実際に動作している最中にも有効な機能が複数あるので、かなりよさげに見えます。
家電向けなど、汎用マイコンで安全機能を売りにしているマイコンはまずみないので、「刺さる」応用には「刺さる」かもしれません。それに16ビットマイコンにはArmのようなデファクト標準(古い言い方かも)はないので独自コアも気にならないのでは。
U8の売りはFlash品なのに超低電圧、超低消費電力
ちょっと「超」「超」言い過ぎている気もしなくもないのですが、ラピス・セミコンダクタ自身がそう書いているのでいたしかたありますまい。数字自体をみれば、確かにプログラムメモリがFlashのマイコンとしては電力小さくて、電圧低いです。ちょっとほめ過ぎかもしれませんが、
8ビットのFlashマイコンのくせに4ビットのマスクROMマイコン並み
な気がします。製品の用途としては時計的なところもやっているラピス・セミコンダクタですが、これがあるので4ビットは持たずとも8ビットで足る、ということなのでしょう。