土木でエレキ(2) 橋梁点検、基礎データの収集方法

JosephHalfmoon

前回の調査で、土木的インフラの維持管理のための「見守り」分野でも電子デバイスの「出る幕」はあることが分かってきました。しかし、土木素人の電子デバイス屋です。土木分野の方々が何を点検し、どうデータを収集しているのかを理解していかないことには、いくら出る幕があっても提案もできません。そこで、まずは前回も調べた「橋梁」を対象に、橋梁の点検ではどんなところをどうチェックするのか調べてみました。ちょうど良い資料が何点か見つかったので今回はそれに基づいています。

土木は公共性が高いので、いろいろ資料が公開されているので助かります。

参照したのは以下の3点の資料です。

国土交通省、道路橋に関する基礎データ収集要領(案) 平成19年5月

国土交通省、国土技術政策総合研究所資料 道路橋の健全度に関する基礎的調査に関する研究 平成19年4月

広島県、道路橋の損傷事例 広島県橋梁定期点検要領 第4版(平成28年4月)対応 暫定版

対象は全て道路橋(つまり鉄道橋は含まれません)です。5年に一度程度の「基礎」的な調査、定期点検を意図したものなので、人間で言えば健康診断的な検査だと思います。これで何か異常が見つかり、重大と判断されるとより精密な検査や補修といった対処につながるようです。

最初の資料は、検査項目の一覧と、各項目の検査要領を手短にまとめたもので、素人にも読みやすい資料です。気になるのは平成19年5月の文書なのに(案)であることです。素人的には、案から正式に制定、といった手続きがあるような気がするのですが、正式制定のような文書は見つけられませんでした。また、「新技術」に登録されているシステムのあるものはこの(案)に準拠と書かれていたので、案のままなのかもしれません。

この案によれば、大きな調査項目は12(さらにその内部に細かな項目がある)に分かれており、大項目を勝手に分類させてもらうと、大体以下の3種に分類にできます。

  1. 鋼部材に関する項目4
  2. コンクリート橋特有の項目3
  3. 橋梁の各部に特有の項目5

対象とする橋は、鋼鉄製の鋼橋か、コンクリート製のコンクリート橋の2種類です。特殊なものは別途ということになっています。鋼橋でも橋脚はコンクリート製でしょうし、コンクリート橋でも鉄筋は入っているので、検査する対象の材料としては鋼とコンクリートが中心です。ここで注目すべきは、その調査方法です。

目視によることを基本とする

「現場へ行って、現物を見よ」ということでしょう。電子デバイス業界でも三現主義は絶対です。しかし、目視だけでは電子デバイスの出る幕はないですね。でも、無暗やたらに目視と言っている分けではありませんでした。実に「見るべき」ポイントがいろいろあるので、まずは「万能な」目視、問題あれば物差し(コンベックス)で現物を測れ、ということです。また、無暗に「近接で目視」と言っている分けでもありません。そうすると検査のために足場を組んだり、特殊な作業車や装置が無いとできなくなり、定期健診が重い仕事になってしまうので、そうならないように現実にあわせてメリハリを付けている感じです。

橋の中で損傷が起きやすいのは橋げたの端

という経験的な知見に基づき、橋脚と橋台(両側の道路に接続する部分)、橋桁の端部とそれを支える支承については

近接で目視

具体的に言えば、梯子をかけるなりして橋脚などに登って、近づいて確認せよ、ということですね。それに対して橋げたの中央部分などは、無理に近づかなくてもよい、離れたところから双眼鏡などで「遠望」して確認しても良いようです。

現実の検査での電子デバイスの出番について参考になるなと思ったのが、3番目にあげた広島県の資料です。これは平成28年なので今現在の方法と理解しています。その資料の中の以下の表を参照します。

広島県橋梁定期点検要領 表3.1 定期点検の標準的な方法

細かな項目のほとんどが「近接目視、物差し(コンベックスと各種ゲージ)、点検ハンマー」での点検です。そして一部の項目で「必要に応じて」採用できる方法として、超音波、渦電流、インピーダンス測定、画像解析、赤外線調査などようやく電子デバイスが登場できそうな方法が挙げられています。実際、ある一つの電子的な測定方法で、調査したい項目全てを調査できるようなものはあり得ないと思いました。どちらかといえば、電子的な測定方法は、ある特定の検査項目について、正確かつ客観的に検査できるでしょうが、別な項目にはまた別な原理の測定方法が必要に思われます。全てを電子的な測定器でカバーするのは無理があると考えられます。

どちらかと言えば、人の目による1次検査の後の精密(客観)検査向け

と考えるべきかもしれません。あるいは、大規模なデータ収集を踏まえて、統一された基準に沿って集められたデータを処理して、問題点をあぶりだすとか、優先順位をつけるなどのAI/ビッグデータ系のデータ処理の役割こそが活躍の場、とも考えられます。

ともかく、これらの資料から「みるべきもの」は浮かんできました。以降これを頭に入れながら電子デバイスを使った橋梁の維持管理(見守り)新技術のいくつかを調べて行きたいと思います。

蛇足ですが、ちょっと気になったのが、第1の文書と第2の文書の「差」ですね。時系列的には論文型式の第2の文書が先で、その中で提案されている(案)の部分がほぼそのまま第1の文書になっています。発行元も同じ国総研で、内容的にはほぼ完全な横滑り。どちらの文書でも手引きの部分に実際の損傷例の写真が大量に添付されていて、非常に分かりやすいのです。しかし、論文型式の第2の文書から第1の(案)の文書になる過程で、損傷例の写真のごく一部が差し替えられているのに気づきます。第2の方が「酷い」写真で、第1の方は「やんわりした」写真に差し替えられています。より微妙なものでも気づけ、という意図なのですかね。

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