後回しにしていたら、先月2019年2月に新製品のプレスリリースが出ていたことに気が付きました。TDK-Micronas社 堂々のArm Cortex-M3搭載MCUの新機種を発表です。TDKという名を冠しているとおり、日本のTDKの傘下にありますが、こちらドイツの会社です。マイクロコントローラメーカの一覧表の「欧州」分類に追加しないと(後で時間があるときに改定いたします。)TDK-Micronas社は、ホールセンサを車載や工業用途向けに売っているのがメインに見えるのです。そして、センサ側(位置を見張る側)からアクチュエータ側(位置を動かす側)に守備範囲を広げていくのにあたり、「スマートな制御」のためにプログラミングの必要が出てきて、徐々に「マイコン屋」化していったのではないかと推測されます。かなり珍しいケースではないかと思います。
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まずは、2019年2月19日付の新製品プレスリリース資料にリンクを張っておきましょう。
メモリ拡張を完全統合した車載用組み込みモータ・コントローラについて
製品は素晴らしいのですが、最初にちょっと「ディス」りたくなるのが、このプレスリリース資料の訳ですかね。頑張って訳した感(多分ドイツ語から)はあるのですが、日本語、それもマイクロコントローラ(MCU)のプレスリリースとしては、ところどころ引っかかる部分があり。あんまりマイクロコントローラ慣れしていない感じがします。新製品は、Armコアのマイクロコントローラとしては主流のコアであるArm Cortex-M3搭載のマイクロコントローラ
HVC4420F
です。過去機種に比べてメモリ容量を拡張したよ、という意味で「メモリ拡張を完全統合」という表現ではないかと推測されます。64KBフラッシュに4KB SRAM。まごうことなきマイクロコントローラ(マイコン)です。しかし、スペックを見ていくと非常に特徴あるマイコンであることが判明します。まずは電源電圧に注目。
5.4V-18V直結可能
オンチップのレギュレータを搭載しているマイコンは結構多いですが、一般に最近の製造プロセスはファインになった代わり、高い電圧に耐えられません。そこで、こういう高い電圧に直結できるマイコンは珍しいと思います(高耐圧&車載スペックのプロセスで製造しないとならないから)。このスペック、お分かりの通り、自動車の12Vの電源にそのまま直結可能!ということです。
当然、通常のシリアル系の通信ペリフェラルSPIなどに加えLINにも対応しています。LIN対応UARTだけでなくPHYまで搭載。LINなので、車の中でも周辺的な装置(運転席のボタンを押すと動く電動xx的なやつら)に使われるということが分かります。制御する相手は、
ステッパ/ブラシレス/ブラシ付きのモーター
のようです。高耐圧なプロセス使っているのは、モータと直結できるnチャネルMOSFETハーフ・ブリッジまで集積しているからに他なりません。他にもコンパレータ、12ビットAD、プログラマブルゲインアンプなどのアナログと、MOSFETを制御できるPWM、タイマ群などモーター制御向けの機能が非常に充実しています。このチップ1個で全部OKでしょうか?最近の車は、一台の車に何十台もモータが積まれているのだと思いますが、まさに
車のあちこちにあるモータ(ただし小さめのやつ)がターゲット
として、他社にない特徴のあるMCUに仕上がっているように思います。
しかし、個人的にちょっと心配なのが、
HVC24xyBの行方
です。これは、今回新機種が発表されたシリーズの「下位機種」にあたる品種です。ぶちゃけ、
8051コアのモータ制御マイコン
です。なんとここでも自説、「Armのお供にレガシー8051説」成り立っていたのです。コアは、8051業界的な言い方だと “2T” コアのようです。これまた非常に特徴のあるマイクロコントローラなのですが、いかんせんArmコアの上位機種と比べてしまうと、設計も古いし、8ビットコアだし、かなり見劣りすることは致し方ありません。それに、TDK-Micronas社のホームページ上での扱いも、いまいち「推し」な感じをうけません。もしかして保守品種化なのでしょうか? ただ、今回発表の新機種は、サンプルは今月2019年3月だけれど、量産は2020年ということです。昔の機種が直ぐにディスコンになることはありますまい。それに車載だし。