IoT何をいまさら(11) HDKにみるセンサ品種展開の歴史

JosephHalfmoon

繰り返します「IoTはデバイス商売じゃねえ」と言われつつ、デバイス、それも一番先っぽのセンサにこのところフォーカスしております。観察するにセンサ屋さんにはどうも2つの流儀があるようです。ある特定のセンサ、測定対象にこだわってそこに集中するタイプと、各種のセンサを製品ラインナップに取り揃え、広い要求にこたえるタイプと。特定のセンサには、それぞれ特有の材料や製造方法などが必要とされます。集中タイプでは該当分野を深掘りしていくことになるでしょうが、「各種」を取りそろえる場合、異なる技術を次々と物にしていかねばならない筈。そんなセンサ品ぞろえの過程を、HDK(北陸電気工業)の沿革と公開資料から読み取ってみたいと思います。

HDK(北陸電気工業)は、富山の抵抗器屋さん、というイメージがあるのですが、最近の企業タグラインを引用すると

Sensor Inovation

です。センサを柱にしていこうという方針のようです。(公開されている製品別売り上げ高を拝見すると、モジュール製品<多分顧客毎のカスタムと思われる>がトップで、抵抗器などの部品が2番目、センサ分類は3番目ということで、売り上げ構成的にはここを伸ばしていこうということだと理解しました。)ホームページを見る限り、各種のセンサを全面に推しています。以下に列挙してみます。

  • 非接触温度センサ
  • 圧力センサ
  • 気圧センサ
  • 容量式湿度センサ
  • 抵抗式湿度センサ
  • 結露センサ
  • フォースセンサ
  • 3軸加速度センサ

抵抗器屋さんが、センサ屋さんに「発展」するにあたっては、それなりの経緯があったことだと思います。そういう視点で会社沿革を読んでいきたいと思います。

1943年 創業、富山県内で抵抗器製造を開始

第二次大戦中、そろそろ敗色漂う時期じゃないでしょうか。当時、抵抗器などを必要としたのは軍用の通信機などであったでしょうから、主要工業地帯を避けての立地だったのかもしれません。戦後は、民生、テレビ向けなどで需要が高まった各種の抵抗器などを作っていたと読めます。戦後の復興でラジオ、テレビなどは売れる時代になったでしょうから。その中で

1969年 厚膜混成集積回路の製造販売

という項がありました。これは現代的な「モノリシック」なシリコンの上の集積回路ではなくて、今の言い方であればモジュールに相当するものです。当時はそういうものも「集積回路」と呼んでいました。多分、モジュールビジネスのルーツはこの辺にあるのでしょう。その後、ようやくセンサが登場します。

1982年1月 大泉製作所と資本提携、サーミスタの販売開始

大泉製作所は、サーミスタ(接触型の温度センサ)専門のセンサメーカです。大泉製作所も抵抗器製造がルーツだったと思うのですが、早い時期に抵抗器そのものから温度変化で抵抗が変化するサーミスタの方に舵をきっていたのだと思います。この提携により北陸電工でサーミスタを販売するようになったのだと思います。抵抗器は温度で抵抗が変化して欲しくない素子ですが、サーミスタは温度に応じて抵抗が変化する素子です。しかし、基本は「抵抗素子」ということは共通します。この時点では引いてきたサーミスタを売るというスタイルだったのだと思いますが、「抵抗器屋」どおし技術的には通じるものがあったのではないかとも想像されます。このサーミスタの取り扱いが契機になったのかその後直ぐに

1982年5月 結露センサ製造販売開始

結露センサは、結露によって急激に抵抗が変化する素子で、やはり抵抗器といえば抵抗。でもこちらは製造販売とあるので、自社工場製だと思われます。この1982年辺が北陸電工のセンサの源流かと思われます。続いて品種の拡張が始まります。

1987年 抵抗式の湿度センサ

温度、結露が検知できるのなら湿度も、という流れは当然でしょう。両方測りたいという需要は常にあります。そこで湿度センサを追加したのだと思います。しかし、この時点ではこれも抵抗式。センサをいろいろ始めたといっても、やはり技術的には抵抗器屋さんだったのだと思います。現在では抵抗式の湿度センサよりは、容量式の湿度センサの方が使用可能な条件が広かったりして主流になっているのですが、この時点ではまだそこには至っておらず、後になってより性能のよい容量式湿度センサを追加したのだと思います。

その後、バブル崩壊、いろいろあった

みたいです。この中でセンサの発端になったと思われる大泉製作所との資本関係も切れ(しかし、数年前までサーミスタの売り上げは結構残っていたようです。その後最近はサーミスタは急減。)たようです。しかし、突如

2004年 半導体式3軸加速度センサの製造販売開始

資料を見ると

バルクマイクロマシーニング技術によるMEMSセンサ

のように見えます。これが大口で注目度の高い顧客に採用され

当たりを取った

のが結構なターニングポイントになったのではないかと想像します。沿革資料からはどこでどうこの技術を取得したのかは定かではないのですが、「バブル崩壊後いろいろあった」中で着々と抵抗器メインから踏み出すための技術を準備していたのは立派な布石じゃなかいかと感心します。そういう視点で、現在の製品ラインを改めて眺めてみると、シリコンMEMSをお得意にしている様子がみてとれます。

非接触温度センサ:原理的にはボロメータ、製造はシリコンMEMS。数年前まで大量に販売していた筈のサーミスタ(接触式温度センサ)に代わる温度センサ。とは言え、用途は大分違うが。

圧力センサ:これまた製造はシリコンMEMSと思われる。

フォースセンサ:力を検知するもの。これまた製造はシリコンMEMS。

しかし、最近の売り上げ構成を見ていると、売り上げの半分が中国向け。また売り上げの40%以上が自動車関連。両方のANDがどのくらいなのかは分からないですが、直近、中国の自動車、急減速と聞きます。大丈夫なのか?余計なお世話か。

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