介護の隙間から(47) ポケベルは死なず、TLM 280MHzデジタル同報「防災ラジオ」

Joseph Halfmoon

TLM、東京テレメッセージ社のポケベル使っていた、という方は結構多い(そして多くはそれなりの御年齢)でないかと思います。2018年末にポケベル廃止のニュースが流れました。当時のユーザ数1500名様。しかし、ポケベルというサービスは終わっても、ポケベルの技術の延長上のシステムがしっかり生き残っていました。

ポケベル廃止のニュースの折に、ついポケベルよ安らかに眠れ、みたいな投稿をしてしまいました。しかし、そんな安らかに眠るタマではなかったことに最近気づきました。独居で要介護の実家の親に、居住の自治体から「防災ラジオ」を貸与してくださるということで、装置を御借りしたためです。自治体の「防災無線」が受信できるラジオ、という理解でありました。実家の親の枕元には古い「トランジスタ・ラジオ」があり時々聞いているようです(スイッチ入れて、ダイヤルで選局し、ボリューム回して音量調整する古典的すぎるラジオです。耳が遠いのでボリュームはかなり大きめに設定済。)このラジオの代わりに「防災ラジオ」を設置すれば、地震、台風などの折、安心が高まるのではあるまいか、と考えてのことであります。

各種レベルの「防災無線」

防災無線と言えば、屋外に設置されたスピーカから、市のお知らせなどを放送してくるアレ、という認識でおったのです。窓閉め切って屋内にいると良く聞こえないアレ。最近すこしタイミングを改良した気がするのだけれど、昔は複数のスピーカからの音声が被って良く聞きとれないアレ。しかし、どうもそれだけではなかったようです。中央防災無線という日本国レベルでのシステム(無線だけでなく有線、光ファイバに衛星など各種通信手段を駆使)から、都道府県単位の「防災行政無線」そして、一番身近な市町村単位での「防災行政無線」。それ以外の組織のものもあるらしいです。防災無線の中にはデータを集めるためのテレメータ系などもあり。各種レベルと各種の通信方式が併存するかなり複雑なシステム?あるいは「各種詰め合わせ」に見えます。詳しくは 総務省 関東総合通信局 防災無線 に説明あり、です。

なお、私が居住している自治体は昔ながらの屋外設置スピーカによる防災無線なのですが、最近は放送内容をemailでも配信してくれています。internetにつながっている層にはメールとかlineとかお知らせする手段がいくらでもあります。それでも、すべての人、停電など非常事態を想定すると防災無線の役割は終りますまい。

280MHz帯デジタル同報無線

今回貸していただいた「防災ラジオ」は市町村レベルのもの。市町村レベルでは60MHz帯の無線方式を採用して屋外スピーカ利用の自治体が多いようです。しかし自治体によっては280MHz帯のデジタル同報無線を採用しているところもあり、そこで登場するのが、

東京テレメッセージ株式会社

なのであります。280MHz帯デジタル同報無線やそれを採用した「防災ラジオ」については、上記ページに仕組みの説明へのリンクがあります。また、採用の自治体のリストもあります(リスト更新されておらずチョット古いのではないか、と思われます。)

装置についていた銘板(シール)からすると、システムを作って販売しているのは東京テレメッセージ社ですが、「ラジオ」本体の製造は以下の会社ではないかと思われます。

株式会社ムサシ電工

なお、東京テレメッセージ社の上記ページを見ると、貸与していただいている「280MHz個別受信機 防災ラジオ型」のお値段は19,800円と明朗な価格付けです。いかにも官公庁向けの配慮かと。

280MHz個別受信機 防災ラジオ型、現物

以下、現物写真であります。エンジニアとしての個人的な意見ですが、かなり良く考えられた装置に見えます。基本の防災無線は、ポケベル技術の流れで文字メッセージを受信するようになっており、それを音声合成で出力しています(お値段のお高い機種では文字でも読めるみたいですが、貸していただいたのは音声のみの機種。昭和の要介護の年寄りは老眼なので文字が表示されてもまず見ないように想像されます。)聞き取りやすい音声で、耳の遠い要介護の年寄りでも聞きとれていることは確認できました。音量の調整もできますが、緊急時には自動で音量大になるみたいです。また、音声メッセージの到着時には中央上部で赤のLEDが点滅し、メッセージ到着を知らせてくれるので聞きそびれの心配はありません。そして聞き直しボタンを押せば、何度でもメッセージを聞くことができます。

Radio00bラジオについては、既にプリセットで主要放送局(納入先の自治体によって設定替えるのかな?)がセットされており、ボタン一発での選局も可能です(AM/FMの切り替えあり。)昔のカーステレオの選局ボタン的なUI。

防災用になかなか配慮が行き届いているなと思ったのが電源です。通常は付属のACアダプタで動作するのですが、裏蓋を開くと単三電池3本を入れるようになっており、ACが停電した場合には、即座に電池に切り替わるようになっています。また、停電時には、中央上部のLEDが白くかなりな光量で光ります。停電でも安心だな。正面の照明ボタンを押せば停電時でなくても照明ONにすることができます。

裏面の様子がこちら。当然ですが、技適マークが燦然と。
Radio00backB

要介護者のUIへの難癖にあえなく別室へ

この「良くできた装置」を古いラジオのリプレースとして要介護者の枕元に設置いたしました。喜ぶかと思いきや撃沈であります。

まず、文句がついたのは「電源が切れない」という点です。防災無線なので、常時電源ONで運用する前提であります。当然、緑の電源LEDが点灯しています。しかし、「電気をつけたら消す」のが絶対の習慣になっている昭和の年寄りにとっては、電源が切れないラジオというのが気に入らなかったみたいです。コンセントに差し込んであるACアダプタを取り外して電源を切ろうとしたみたい。停電対策に内部に電池を持っているので本装置が停止することはありません。それどころか「停電」なので上部のLED照明が強烈に光ります。「コンセント抜いたのに電源切れない、光っている」と電話がかかってきました。ラジオを聞かないときも電源いれっぱなしで使うものなのだ、と納得してもらうのが中々難儀。

続いて「苦情電話」が度々かかってきました。上部の赤いLED(2灯)が点滅している、何が起こったのか?と。この赤の点滅は、防災メッセージの到来を知らせるものなので見逃されないようにでしょう、これまたかなり強烈に光るのです。情報の到着は「確実に」伝わっていることが確認できるのですが、これが気になってショウガナイ。聞いてみると「自治体から定期的に送信される確認」メッセージのようで、内容的には緊急性はないものでした。いざ緊急時に送信したけれど届かない、という事態を考えれば、時々、お知らせメッセージを送信して動作確認しておく、というのは当然すぎる手順だと思います。ただ、スイッチ一つ押せばいろいろ動作する装置なのですが、点滅を止めるためには、スイッチ一つ押すだけではダメで、2手順必要なのです。聞き落とし防止のための安全設計なのでしょう。しかし、「ステート」のあるUIが昭和の年寄りには難しい。

自治体からの動作確認的なメッセージの到来毎に赤のLEDが点滅し、その度に「何があった」と電話がかかってまいります。これはやってられん、ということで装置を別室へ移動、枕元には古いラジオを戻しました。まあ別室は、介護に行った介護者が寝ている部屋なのではありますが。。。年寄り向けのUIの難しさよ。トホホ。

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