SPICEの小瓶(14) 異常発振させテ~。わざわざ使っちゃイケない領域を使ってみる。

Joseph Halfmoon

別シリーズ記事でマルチバイブレータをLTspiceしていて「初期値与えてやらない」とうまく発振開始しない件に遭遇しました。今度はYou Tube番組でオペアンプを発振させないためのテクをお教えくださっているものに遭遇。「発振させたくないのに発振しちまう」ところをむやみとやってみたくなりました。天邪鬼ね。

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アナログ素人は偉大な先達の方々の作られた回路を真似っこする一方(パクリ)なので、異常発振などそうそう遭遇いたしませぬ。ところが自分勝手に回路を作ると発振してほしくないところで発振いたします。なんでだ~。そのくせ、発振するハズの回路を作ると発振しないっと。トホホ。

さてYou Tube番組を視聴(たいていはエンタメ一方なのですが)していて以下の番組に遭遇いたしました。アナログの大看板、アナデバ社石井先生の番組(ちょいと古い)であります。以下のタイトルからわかるとおりビデオの趣旨は「異常発振させたくない」ための考え方をお教えいただいているものです。

そこで説かれていることを逆手にとって、お下品にも異常発振させてみた、というのが今回この投稿であります。

まずはLTspiceで発振しそうな雰囲気を出す

ビデオの中で発振しそうな回路例で登場するのが OP37オペアンプであります。帯域幅はそこそこ広いけれど、ゲイン5倍以下で使うと発振するかも知れん、という制約を頭に入れとくようにの品種であります。

そっかゲインを落としてやれば発振するのね。そこで向こう見ずな素人は石井先生のYou Tube番組を参考に以下のような回路にしてみました。非反転増幅回路、ゲインは1.5倍とな。OP37_BAD_DUT_CIR

まずはトランジェント解析やってみました。青色が入力V1の波形で、黄緑が出力OUTの波形です。OP37_BAD_DUT_TIM

かなり元気よくオーバーシュートしていて「良い感じ」です。まだ一応減衰してはいるものの、あと一息で発振継続しそう?ホントか。

AC解析もやってみましたぞ。修正したAC解析用の回路図が以下に。OP37_BAD_DUT_CIR_AC

AC解析結果のボード線図はこんな感じ。実線がゲイン、点線が位相っす。OP37_BAD_DUT_AC0

問題部分を拡大したところが以下に。縦棒左カーソル1はゲインに、縦棒右カーソル2は位相に紐づけてあります。OP37_BAD_DUT_AC1

位相が-180度でも、元気のよいゲインであることがわかります。

実機でやってみる

ブレッドボード上にOP37で回路を組んでみました。こんな感じ。

OP37_BAD_DUT

さて、1MHz、振幅50mVの矩形波入力(黄色C1)を与えたときの出力OUT信号(青色C2)の波形が以下に。おお、シミュレーションを超えて絶賛発振継続中のようです。そのときの測定値が右側に見えとります。OP37_BAD_BB

本来はゲイン5倍以上で使うお約束のOP37なので、抵抗値を変更してゲイン11倍としてみました。その時の波形が以下に。OUT波形の振幅が大きくなったので青のC2のレンジを10分の1にして圧縮して表示してます。OP37_10X_BB

お約束を守ったら発振はとまったみたい。当たりまえだけど良かった。

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