鳥なき里のマイコン屋(19) 東芝、やっぱりArmか、MIPSどうなった?

本日、勝手に調べさせていただくのは、名門東芝のマイコンでございます。「かっては」家電から重電、コンピュータ、なんでもありの総合電機メーカでもあり、超分厚い製品ラインを持っていた、と記憶しています。自社アーキテクチャのマイコンコアだけでも複数持つ上に、RISCの草分けの一つMIPSアーキテクチャの牙城であったと言って良いでしょう。同じくRISCの草分けの一つSPARCアーキテクチャを担いだ富士通はHPC(スパコン)でSPARCを使い続けてきましたが、どうも「次」はArmに切り替えてしまうらしいです。東芝のMIPSはどうなんでしょうか?

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まずは東芝マイコンのコアの一覧をご覧ください。

TX09/03/04/00
TXZ0/3/4
Arm926EJ-S
Arm Cortex-M0
Arm Cortex-M3
Arm Cortex-M4
TLCS-870/C1東芝オリジナルコア8ビット
TLCS-900/H1東芝オリジナルコア32ビット
TX19A/H1東芝オリジナルコアMIPS

一番に登場してくるのは、やはりArmです。東芝はアプリケーションプロセッサも持っているのでそちらではArm Cortex-Aシリーズも使っています。しかし、MCUに関しては、Cortex-M0/M3/M4の3種類のコアを主力で使っているようです。Armコアだけで7つものシリーズが用意されています。その中では2つの世代に分かれるようです。型番の頭にTXをいただくのが古い世代の製品で「現在量産中」のもの。型番の頭にTXZとあるのが新しい世代の製品です。TXZの方は、量産になっているものもあれば、まだ開発中というものもあるようです。ホームページをみても、TXZ0というシリーズは、ロードマップにはありますが、製品一覧にはまだありません。

東芝のArmマイコンのシリーズ命名規則はなかなか分かりやすいです。

  • TX00 または TXZ0 は Cortex-M0コア
  • TX03 または TXZ3 は Cortex-M3コア
  • TX04 または TXZ4 は Cortex-M4コア

そして

  • TX09は Arm926EJ-S コア(これは古い系列)

です。Arm社のMCU向けコアの特徴については、こちらにまとめた回があるのでご参照ください。ザックリ言うと、M3が現在のMCU向け標準機、M4は浮動小数点演算までできる高級なMCU向け、M0は小型、ミニマム構成という感じです。

次の2つは、東芝オリジナルコアのMCUです。TLCS-870が8ビット、TLCS-900が32ビットです。8ビットといっても世間的には4ビットに近いような製品から16ビット的な製品まで存在しますが、東芝の8ビットマイコンは16ビット的で強力なものです。しかし、意外だったのは昔はもっと大量にあったのではないかと思われるオリジナルコアのシリーズが8ビット、32ビットとも1シリーズを残すのみ、となっていることです。寂しいものです。TLCS-870/C1のスラッシュの後のC1という部分に違う型番があったんじゃないかと思います。TLCS-900/H1の後のH1という部分もそう。H1じゃない他の型番があったような微かな記憶があります。

きっと、製品ラインを絞り込んでしまった

のでしょう。まだ「保守品種」とか言われて邪険にされていないだけましかもしれません。ただ、この絞りようではオリジナルコア品の先行きは不透明と言わざるをえません。

そして最後に登場するTX19A/H1シリーズこそが、MIPSアーキテクチャの生き残りだと思います。「東芝オリジナルコア」の中にMIPSが入っているのは、MIPSにライセンス料は払ったけれど、あくまで自社開発、「MIPSの命令セット互換だけれど、コアそのものの設計は東芝」だということを強く主張しているのだと思います。ただ、残念なことにこのTX19も残る品種は2品種のみ。機種のスペックを見ると、

MCU搭載としては大容量2Mバイトのフラッシュメモリ品

が特長で残されているような気もしないでもありません。TX19シリーズもまた先は無さそうな雰囲気を醸してしまっています。昔を言うとなんですが、東芝というとMIPSコア製品、大量にあった筈なのですが。

さて、前向きに東芝マイコンの「売り」という点を見ましょう。

モータの制御、特にベクトル制御

です。モータの制御にもいろいろありますが、中でもベクトル制御は一番スマートな制御です。ただし、計算量が多いし、計算そのものも難しい。このベクトル制御用に東芝マイコンには専用のハードウエア・エンジンを積んでいるものが多数あるのです。それも歴史があります。4世代の開発を経ているようです。

  1. ベクトル・エンジン
  2. 新ベクトル・エンジン
  3. アドバンスド・ベクトル・エンジン
  4. アドバンスド・ベクトル・エンジン・プラス

命名的にはちょっとベタな感じがしないでもないですが、「力入っている」ことは強く伝わってきます。コアはArmだけれども、東芝伝統のベクトル・エンジンで他社と差別化できるからいいや、という主張を感じます。どこかの会社はマイコンコアはLCDドライバのオマケ、という感じでしたが、東芝の場合、

モータ制御用のベクトル・エンジンのオマケにArm

といったところでしょうか。

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