お手軽ツールで今更学ぶアナログ(67) OP37でアナログコンパレータ4種、ヒステリシス

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」は、ようやく2020年2月号に到達。今回はオペアンプ使ったアナログコンパレータであります。非反転、反転、ヒステリシス対称、ヒステリシス非対称とやること多いです。今回も恐れ多いが申し上げたい儀これあり、なのだな。

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まずは、アナデバ様の記事(日本語)へのリンクを以下に貼り付けさせていただきます。

ADALM2000による実習:オペアンプ・ベースのコンパレータ

上記のようにタイトルに「ADALM2000による実習」と銘打たれているのに、Digilent Analog Discovery2で「実習」させていただいております後ろめたい私であります。まあね、教材用のパーツキットはアナデバ製のADALP2000を使っておりますので、許してくださいまし。

今回は、解答編もちゃんとありました。よかった。URLは以下です(英語版。)

February 2020 StudentZone Quiz Solution

今回実習は、OP97またはOP37オペアンプを使うように、とのご指示であります。記事の内部をみるとOP37を使って回路が描かれていました。ADALP2000には両機種入っておりますが、回路図どおりにOP37で行いました。OP37の製品ページは以下です。

OP37データシートおよび製品情報

ただし、「新規設計には非推奨」とあります。諸行無常、半導体にはつきものですが、OP37に親しみをおぼえているのでちと残念。ADALP2000のようなキットは、ぶっちゃけ「有料の」販促ツールといった割り切りで、非推奨機種はノンテンダー?的にして、「推し」の最新鋭デバイスてんこ盛り、ってな具合にしたらよかろうなどと外野は思うのですがね。ううむ、ADALP2000、チョイスが結構渋いよね。コスト優先?

今回の恐れ多い事

今回のアナデバ様に申し上げたき儀は、記事の最初の方、図1、図2、図3のあたりであります。

図1 シンプルなコンパレータの回路図

オペアンプの非反転入力に接続している電圧源 V2が Sine(0 1 1k)となっております。さすれば反転入力側の電圧源V1は参照電圧、DCでしょう。シンプルなコンパレータの回路からはさもありなん、と思うのでありますが、オシロスコープCH1のプローブはV1に接続されておりまするで(CH2はオペアンプの出力に接続。)

CH1で入力波形を観察し、CH2でコンパレートされた出力波形を観察するのであれば、CH1のプローブはV2側だと思うのですが、どうざんしょ。

図2 シンプルなコンパレータの実体回路図

上記の図1では波形ジェネレータのW1が反転入力側に接続されていて、波形ジェネレータのW2の接続は無かったです。実験手順からいうと正弦波などをあたえる入力信号源としてはW1、参照電圧(DC)としてW2を使う意図のようです。しかし、

図2には、W1が2本描かれており、W2は不在です。

オシロのCH1は左のW1の方に接続されている(図1の回路通り)ので、そちらを正弦波のW1、もう一つのW1をW2と考えて動かすと、「反転型」のコンパレータとなってしまいます。すると以下の図3のグラフと矛盾します。左がW2でDC参照電圧。右がW1で入力波形。そしてオシロのCH1の接続を左から右に変えないと図3のような波形は得られないように思います。どうざんしょ。

図3 シンプルなコンパレータの入出力波形

時間波形が示されているのですが、明らかに「非反転型」の挙動に見えます。前述のとおり、図3と図2は矛盾しているので、どちらかに合わせる方がよろしいと思います。

そのくらい分かるだろ、いいんだよ、コマケーことは。

シンプル(ヒステリシスなし)なコンパレータ、非反転型

以下は時間波形です。参照電圧を0Vにとった場合。例によって黄色がCH1の入力波形、青がCH2の出力波形です。

simpleVREF0V上記は参照電圧0Vですが、以下は参照電圧に300mVを与えた場合の波形です。黄色の入力波形が300mV付近で変化するようになっているので、矩形波のハイの期間が削れているのが分かります。

simpleVREF300mV

ヒステリシスありなコンパレータ、非反転型

まずは時間波形。ヒステリシスしていることが分かりますな。

NIH_TIMEヒステリシスの様子をXYプロットで眺めたものがこちら。ハイからロウ、ロウからハイへの遷移のところは測定点数がとれないので、飛び飛びになってしまっています。点をつなげば、よく見るヒステリシスのプロットに見えるかと。値を蓄積すればそれらしいプロットになるような気もするのだけれど、どうしたら良いか私は知りません。

アナデバ様の記事では、グラフの上に手書きと思われる矢印が書き込んであって良い味だしているな、などと思ったのです。わざわざ別ソフトで手書きするのはメンドイし、Analog Discovery2の制御ソフトでは、文字列を書き込むことしかできないようでした。とりあえず文字で矢印を追加してみました。小さくて見えない?

NIH_XY

ヒステリシスありなコンパレータ、反転型

縦方向のスケールを倍にしてます。先ほどとは出力波形が反転。

INVH0_TIMEXYプロットは以下に、先ほどとは回る方向が逆(時計回り)です。

INVH0_XY

ヒステリシスありなコンパレータ、反転型、スレショルド電圧非対称

上のケースと比べると、スレッショルド電圧が非対称になっているのが良く分かります。まずは時間波形。

INVHVal_TIMEXYプロット。High期間が延びている分、ヒステリシスのプロットも大きく変形。

INVHVal_XY

問題

例によって、実習の後には問題がづづきます。今回は、4つのケースそれぞれでスレショルド電圧の計算値と実測値を比べてみよ、というもの。

冒頭にリンクを置いた解答編では、各ケースの計算値を示しています。なお、そのときに、Vp=5V、Vn=-5Vの電源条件にて

    • VOL = -5V
    • VOH = 5V

という理想的なケースとして計算されているようです(計算値というからにはそうか。)

ただ、OP37は「出力レールツーレール」のオペアンプではありません。プラマイ5Vまでは振れないです。実機で見たところでは、Vp=5V、Vn=-5Vの電源条件にて

    • VOL = -4.2V
    • VOH = 4.2V

といった感じでした。以下の自前の「計算値」では、VOL/VOHに上記の値を用いて計算しましたです。結果は以下に。

VTH_TABLEま、だいたい合っている気がする。珍しいな。。。

とは言え、今回は問題の後にも

追加の実習と問題

があるのです。ちょっと今日は無理。予定時間超過、また次回だな。

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