前回は、LTspiceでシミュレーションしてみる(お茶を濁す)回でしたが、今回は実デバイスで実験です。前回手元に在庫が無かった「アンバッファ」タイプのCMOSインバータを入手したのであります。東芝製TC74HCU04APです。「普通の」74HC04同様の6回路入りインバータですが「シンプルな1段ゲート構成」なデバイス。
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前回は、ちょっと怪し気なSPICEモデルをDISKの肥やしの中から発見したCD4007をCMOSインバータ構成としてLTspiceシミュレーションしてみました。しかし参照させていただいております以下のアナデバ様の記事では、
CD4007でなければダメなわけではなく、CD4069A、CD4069UB、CD74HCU04のいずれかもよいとのご指定でありました。そこで購入いたしましたのがCDではなくTC(東芝製)となりますが、以下のデバイスであります。
「普通の」74HC04同様、6回路入りのインバータ(デジタルIC)の顔をしていますが東芝様のデータシートに曰く
『内部回路はシンプルな1段ゲート構成のため、水晶発振などのリニア応用も可能です。』
なデバイスであります。まさに今回はリニア応用?です。なお、普通の74HC04は外からはインバータ1段に見えますが、実際はバッファ付きの3段構成の回路になっているみたいです。普通の(ほぼほぼデジタル専用?)74HC04のデータシートはこちら。
単体CMOSインバータの特性を観察
まずは単体CMOSインバータTC74HCU04APの6回路のうち1回路だけを使い、5V電源を与え、入力信号として振幅2V、オフセット0V、周期1kHzの三角波を与えてみました(黄色C1。)そのときの出力信号の時間波形が青色C2です。「予定どおりな」波形であります。なおいつも通り測定に使っておりますお手軽ツールはDigilent社Analog Discovery2です。
上記から作成したXYプロット(Xが入力C1、Yが出力C2)が以下に。これまた期待どおりか。このプロットで見る限り入力2.5Vのときに出力も2.5V付近でいい感じです。
以下は、入力2.5V付近の「リニア」な感じのするあたりで、入力の変化に対する出力の変化を求めているときの作業図です。
でも計算はザックリです。入力C1が 2.39V から 2.69 V まで0.3V変化したときに出力C2は、-2.86V変化してました。ゲインは -9.53倍。ほぼほぼ20dBとな。ホントか?
フィードバックをかけた単一段のアンプ回路
さて、課題のCMOSインバータにフィードバックを掛けたアンプ回路の回路図(LTspice用、前回の再掲)が以下に。
上記ではCD4007のモデルを読み込んでますが、気にしないでくだされ。
さて上記をTC74HCU04APでブレッドボード上に実装したものが以下に。
振幅1V,オフセット0Vの1kHzの正弦波を入力(黄色C1)に与えたときの時間波形が以下に。青色C2が出力です。R1/R2=1なので、ゲイン1倍となるべきところ微妙に小さいです(これまたシミュレーション時と同じ。)
先ほど同様、XYプロットにしたものが以下に。「リニア」してる感じです。よきかな~。
さて肝心の課題、ボーデ線図を描けとのこと。アナデバ様の記事でも前回のシミュレーションでも10Hz から 100kHzでしたが、若干「画ずら」が寂しかったので、200kHzまでとしてみました。
最後にコマケー話を一つ。恐れ多いことなんだが、アナデバ様の記事の「ボーデ線図」を描けのところで「回路全体のゲインを10kHz~100kHz」と書かれてますけど実際に記事でしめされているグラフは 10Hz~100kHz です。10kHzからにするとグラフが本当に「寂しく」なります。どうせコマケー話です。