だらだら継続中のフラッシュA/Dの実験ですが、前回、アナログ回路からデジタル回路へのインタフェースレベルが「多分OKだろうけれど気持ち悪」などと恐れ多いことを書いてしまいました。そこで問題部分に勝手に簡単なクリッパ回路を挿入してレベルを合わせてみました。これで74HCだろうとロジアナ端子だろうと接続OK?ホントか?
※「お手軽ツールで今更学ぶアナログ」投稿順 indexはこちら
クリッパ回路
クリッパ回路といって簡単なものです。信号の先にダイオードをとりつけ、その先に抵抗を介してクリップしたい電位に接続すると。回路的には以下のような感じになります(ただし以下の回路はそのままではLTspiceシミュレーション不可です。ダイオードモデルがデフォルトで含まれているのは1N4148のみで他の2つはありません。)
上記のようにダイオードを3種類も挙げてみたのは、手元「在庫」で使えそうなやつがちょうど3種類あった、というだけのことす。この際、どれが良いか実験してミヨーという魂胆です。ダイオードは以下です。
-
- 1N4148、小信号用のダイオードとして「ド定番」?LTspiceでも使えるし。
- BAT43、ショットキーバリアダイオード、電圧降下少ないっす。
- 1N4007、整流器用、1kVまで対応可能、牛刀割鶏?
3種ダイオードでの実験結果
まずは定番の小信号ダイオード 1N4148 です。黄色C1がVin信号(振幅2.5V、オフセット2.5V、周波数100Hzの三角波)で、青色C2がDIO2です。なおフラッシュA/D原理回路への参照電圧VREFは5Vです。
以下のように、前回見えていた0V以下-5V近くに達する負電圧部分はバッサリクリップできてます。クリップ回路、簡単ですが効果は絶大。
しかしね、問題はHighのレベルです。以下みると3.2Vくらい。5V動作の74HCのVIHスペック的には多分割れてます。まあ、CMOSだし、このくらい動いてしまう筈だとは思うのですが、気持ち悪さをぬぐう回路としては気持ち悪さが残る展開か?
次は、ショットキーバリアダイオード BAT43です。電圧降下が少ないだけあって、上記よりHighレベルが高い感じ。
測定してみると、以下のようなレベルです。これなら74HCのVIHのMIN既定には引っかからないか(といってデータシートには電源電圧4.5Vと6Vの規定しかないのですが。)もう一息いきたい?
最後は、牛刀割鶏な感じの1N4007です。あれれ、スイッチングのところで、負の電圧がポッコリと。
拡大してみました。-3V近くまで落ち取ります。この辺、どういう成分のためにこういう現象が起きるのか考察したら偉い人になれるのでしょうけれど、私はパス。ともあれ、負の電圧をさけるためのクリッパなので、1N4007は無しね(だったら最初から目的外使用のワシを呼ぶなと1N4007に言われそう。)
しかしねえ、コストを考えると本当は定番の1N4148で行きたいです(入手時の単価を考えると、数円で手に入る1N4148に対してBAT43のお値段は7倍以上。)今回はともかく「気持ち悪さ」を取り除く安心料なので、清水の舞台から飛び降りる勢いで(大袈裟だな高々数十円)BAT43といたしました。
また、プルダウン抵抗は大きい方がピーク電圧はダイオードのピュアなドロップ分に近づきそうだったので、10倍の10kΩとしてみました。後ろは74HCなので100kにしても多分大丈夫だけれども。
BAT43 + 10kΩプルダウンの結果
冒頭のアイキャッチ画像は、コンパレータの全端子にBAT43+10kΩのクリッパを接続した様子です。波形が以下に。コンパレータ出力は0Vからほぼほぼ4Vの範囲でキッチリ整形されてます。4Vであれば74HC(5V電源)のVIHは多分まったく問題ない筈。
まずは、Analog Discovery2のロジアナ入力(LVCMOSだけれども5Vトレラント)に接続してみました。OKです。
それに、エンコードもしてくれているし。わざわざエンコーダを組み立てて接続しなくてもいいか(メンドイからだな、自分。)
自分的には「気持ち悪い」ところは消えましたです。注射の副反応が消えたのと一緒じゃな、気分の問題?