お手軽ツールで今更学ぶアナログ(88) バイポーラトランジスタのエミッタ・フォロワ回路その1

Joseph Halfmoon

「アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』を初回からすべて読む」の今回は2021年4月号です。ようやく1年遅れ到達。今回もLTspiceでのシミュレーションから始めたいと思います。回路5種類あり実機で全部やるのは辛いです。シミュレーションでお茶を濁して、実機実験の数を減らそうという魂胆。

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2021年4月のアナデバ様記事(日本語)へのリンクは以下です。

ADALM2000による実習:バイポーラ・トランジスタで構成したエミッタ・フォロワ

毎度毎度ですが、アナデバ製の学習ツール ADALM2000を使って実習せよ、との記事ですが、Digilent Analog Discovery2で代用させていただいております。実験部品の方はアナデバ製ADALP2000使用しております。

今回記事には、しっかり末尾問題の解答編(英語)がついています。

April 2021 StudentZone Quiz Solution

今回取り上げられている回路

エミッタ・フォロワ回路、大事なことは分かるのですが、基本「入ってきた波形がそのまま出ていく」回路であります。それに対して「充実の5回路」を組み立て、測定してみよ、ということなんであります。5回路を列挙します。

    1. エミッタ・フォロワ(原理回路)
    2. 改良版エミッタ・フォロワ回路
    3. オフセットを抑えたエミッタ・フォロワ回路
    4. スルー・レートのバランスを改善したエミッタ・フォロワ回路
    5. 相補型の帰還ペアを使用したエミッタ・フォロワ回路

一番シンプルな1の回路をやり、そこでの問題を2で解決し、さらに1,2で目立っていたオフセットの問題を3で解決すると。そして実験からは直接見えてこない、3のスルーレートのアンバランスの問題に4で対処すると。そして真打登場とばかりにシンプルな5の回路を実験する、と。こんな感じでしょうか。

一番複雑な回路(冒頭のアイキャッチ画像)でも6トランジスタなので大した規模ではないですが、ブレッドボード上で6トランジスタ接続するのはメンドイです。できれば実機でやるのは減らしたいということで「まずはSPICE」に逃亡。

エミッタ・フォロワ(原理回路)

最初はもっともシンプルなNPNトランジスタ1個のエミッタ・フォロワ回路です。原理回路といってもよいのかしら。入力V1に正弦波を与え、出力Outを観察します。

Apr_1_cir

シミュレーション結果が以下に。黄緑が入力波形、青が出力波形です。入力がQ1のベース、出力がQ1のエミッタなので、約0.6VのVBE電圧がモロ見えです。そのオフセット分を除けば「だいたいおんなじようなもん」?

Apr_1_tim

しかし、大体では次の回路との差が見えないので、入出力の電位差の変動を拡大したグラフを描いてもらいます。フォロワーといいつつも、良く見ると約30mVほど揺らいでいるのね。Apr_1_diff

改良版エミッタ・フォロワ回路

さて、この変動に対処したのが以下の回路だそうです。単純抵抗でなく、カレントミラーでQ1から電流を引く回路に改良。NPNトランジスタ3石(いまどき「石」なんて言わないか。)

Apr_2_cir

そのときの入出力の波形が以下に。これだけだと最初の回路との差が分かりませんな。

Apr_2_tim

入出力の差分を拡大したものが以下に。揺らぎはピークツーピークで5mVくらい。最初の回路が30mVあったので確かに改良されとります。

Apr_2_diff

 

オフセットを抑えたエミッタ・フォロワ回路

続いて、上2つで気になる入出力波形の電圧オフセットに対処する回路。PNPトランジスタ、入力側に3N3906登場であります。

Apr_3_cir

上の回路のシミュレーション結果が以下に。入力黄緑色の上に出力青色がほぼほぼ重なっております。いい感じ?

Apr_3_tim

私なんぞは、ピッタリ重なった上の回路でもう満足ですが、流石アナデバ様、上の回路にも問題アリみたいです。

スルー・レートのバランスを改善したエミッタ・フォロワ回路

3の問題は、負荷によっては登り下りの方向でスルーレートが異なるというもの。変化の速さの問題なのね。対策した回路、だんだん複雑になってきたような気がします。

Apr_4_cir

とりあえず、他と同じように波形は観察しましたが、「スルーレート」実験していません。測定方法から考えないと。

Apr_4_tim

 

 

相補型の帰還ペアを使用したエミッタ・フォロワ回路

最後に登場するのが、NPN、PNPのコンプリメンタリなトランジスタによる回路です。

Apr_5_cir

何故だか特に説明されていないのですが、この回路への入力波形の振幅が半分になっていました。言われたとおりにやってみたので、以下のグラフは他とちょっと異なります。同じ入力波形でも動きそうなのだけれど。。。

Apr_5_tim

入力波形が異なるので、直接1、2の回路と直接比較はできませんが、表面上の揺らぎは小さいです。でも、やっぱり入力合わせないと比較できんよな。Apr_5_diff

今回も分かったような、分からぬような結果だけれども、雰囲気は分かった。次回は回路を絞って実機で実験っと。

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