お手軽ツールで今更学ぶアナログ(1) OP97のSlew Rateを測ってみる

JosephHalfmoon

「コロナのせい」で妙なものが欠品。家の近くではLR41電池がありません。多分、体温計用?でしょうか。「帰らざるMOS回路」シリーズは、デスクリートのMOSトランジスタで「古代のMOS回路」を振り返ると言いつつ、「お手軽なアナログ学習ツール」のテーマの回がままあります。ツールはMOSの話とは違うし、やっているとバイポーラも出てくるし、で今回別シリーズに分けさせていただくことにいたしました。

※「お手軽ツールで今更学ぶアナログ」投稿順 indexはこちら

まず、「お手軽なアナログ学習ツール」ということで取り上げさせていただくのは、

  • Analog Devices社、ADALM1000(M1K)
  • Digilent社、Analog Discovery 2

の2つであります。すでに取り上げさせていただいておりますが、Analog Discovery 2は、Analog Devices社のADALM2000に「クリソツ」なんであります(ハード仕様は微妙な違い、ソフトの見た目は大違い、ですが。)

さらに言えば、学習教材として以下を使わせていただく予定。

ADALP2000 Analog Parts Kit

アナデバ製品だらけ(アナデバ社の回し者ではありませんよ)ですが、まあ、アナログ苦手でこの歳にいたった筆者が心を入れ替えてアナログ業界の大立者アナデバ社の製品を使わせていただいて自主学習すべし、ということであります。なお、先行する「帰らざるMOS回路」シリーズでは、以下の回で、学習ツールにお世話になっております。

(3) アナデバM1KでIV特性?

(6)M1KとAnalog Discovery 2

(7)M1Kでインピーダンス測定

(9)M1Kでボード線図

(13) AD584でDC電圧キャリブレーション

(14) ADALM2000とAnalog Discovery 2、他人の空似?

 

さてま、本シリーズのテーマの一つといたしまして、

ADALM2000でやる実験は、Analog Discovery 2でもできるよね

という確認がございます。「クリソツ」などと軽薄なことを言ったからには、確かめていきたい。当然、何か違いや注意点があれば報告をさせていただく、と。

今回行ってみるのは、アナデバ社の充実のWeb上の「学習教材」からADALM2000で行ってみるべし、という設定になっている

Activity 1. Simple Op Amps

というページの前半であります。ぶっちゃけ、非常にプリミティブな

ボルテージ・フォロワ

を構成し(ページ内ではUnity-Gain Amplifierという呼び方ですが、日本だとボルテージ・フォロワの方が一般的じゃないかと思うので<個人の意見です>そう書きます)、

入力波形が「だいたいそのまま」出力されてくるよね

という確認をし、それが出来たらオペアンプの

Slew Rate

を測定してみよう、という「実験」です。使用するのは、アナデバ社の数あるオペアンプの中から

OP97

という品種です。この品種には日本語データシートもあり、それはこちらからダウンロード可能です。タイトル「低消費電力、高精度オペアンプ」とありますが、両電源のそれほど特殊な感じはしない品種<個人の感想です>です。

上のActivity 1. Simple Op Ampsのページには、ブレッドボード上に部品を配置した結線図まで掲げてあるので、そのとおりにすれば動く筈なのですが、ページ上で使っているブレッドボードは両側に電源レーンがあるタイプで、上に+電源、下に-電源を配置して両側から供給しています。そして上下ともGNDと電源の間に「ちゃんと」パスコン0.1μFが入っています。

ところが、ADALP2000に入っているブレッドボード、DIPのピンが刺さる優れものなのですが、生憎電源レーンが片側にしかありません。しかし、調べてみると、半分づつ分かれていました。そこで、片側の右をマイナス電源、左をプラス電源用として中央付近にOP97を刺して、こんな感じにしてみました。ちょうどいい長さのジャンパ線が足らなくてナナメになっているのがちと気になります。

さて、上記に、Analog Discovery 2を接続してみます。こんな感じ。

 

プラス電源は+5V、マイナス電源はー5V指定です。これはAnalog Discovery 2のプログラマブル電源出力のそれぞれ上限と下限です。(OP97自体はプラマイ20V電源まで対応ですが)

まずは、指定どおり入力波形に振幅2V、1KHzの正弦波を与えて出力を観察してみます。黄色が入力、青が出力、どちらも1DIV=2Vなので、ちゃんとボルテージ・フォロワとして動作しております(あたりまえか)

Activity 1. Simple Op Ampsのページにも同じようなグラフが掲載されているのですが、その上部にめっちゃいろいろな計測値が出力されています。今回、Analog Discovery 2の「WaveForms」というソフトウエアを最新版にアップデートしたところ、ほぼ同様な計測値が表示できることに気付きました。まず電圧軸方向がこちら。

通常は、常に変動するValue欄だけなのですが、Average表示を追加しています。時間軸方向も電圧方向と同時に表示できたのですが、同時表示するとAverageの計算がなにか変だったので、別々に表示させました。時間軸方向はこちら。

昔のAnalog Discovery2のソフトには無かった(と記憶している)機能が追加されていたのでちょっと嬉しい。

さてSlew Rateの測定ですが、Activity 1. Simple Op Ampsのページから1文引用させていただきます。

increase the frequency until you see a significant departure from ideal behavior, that is, when the output starts looking more like a trapezoid than a square wave.

入力信号を方形波にして、周波数をあげよ、さすれば出力波形が台形的になるから、そこで、信号電圧の10%点から90%点に登るときと降りるときの時間を測れというのです。とりあえず10kHzにしたら「良い感じ」になったのでそこで測ってみました。

今回、Analog Discovery 2のソフトもいろいろ改良されているので楽です。特に時間軸とか変更しなくてもZOOM機能が追加されていたので、下の画面キャプチャのように、オシロ画面の一部の拡大画面を表示できます。

さらに、拡大画面の中にコメントを書き込みながら、計測値等が表示されるオプションまであります。凄い便利になっている。なお、データシート上のSlew Rateは(正確な品種はOP97F)

  • Min 0.05V/μs
  • Typ 0.15V/μs

です。下のグラフでは、159.67V/ms、つまりは0.16V/μsくらいか。ほぼTyp値、若干よさげ。

フォリングエッジの方は0.19V/μsくらい。こちらも問題なし。

 

今回のところは、(ソフトウエアがアップデートされていれば)Analog Discovery 2で何の問題もなく、実験ができました。

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