帰らざるMOS回路(1) そういえばダイナミック、そういえばNMOS

JosephHalfmoon

この間、コロナのせいなのか夢見が悪いと書きました。ネット情報によれば、世界中そういう人が多数らしいですね。しかし私の場合、早くも解決策を見出しましたよ。トラ技2020年5月号のお陰です。この間からいじり始めたMOS-FETが、夢見の悪さを救ってくれるのです。MOS-FETを「考えて」おればぐっすり眠れる。MOS-FETは「私固有のソリューション」かもしれないですが、「何か」があれば良く眠れる人は私だけではないかも知れないです。昨日、秋月電子さんの通販サイトへ行ったならば、注文多くて遅れます的なお知らせあり。皆さんも巣ごもり需要?

今をさること数十年前、業界に新卒で入ったころ、毎日毎日

MOS-FET

を描いていたです。最新プロセスの数ナノメータなどという尺度からすると、500倍くらいくらいデカかったかも。でも当時の最小寸法は本当にゲート長だった気がするし。

当時のロジックLSIの設計は、まだ人手による部分が多かったです。ともかく小さく速い回路にするためにトランジスタを「描く」のですなあ。実際に半導体製造のマスクを作るためには、CADシステムに入力されたコンピュータデータになっていないとならなかったのだけれど(その前の世代はルビ切って写真製版?だったらしい)、CAD入力の元「図面」はマイラー紙に手書きということも多かったです。今回、トラ技の付録のお陰で、このMOSトランジスタレベルで「ゲート」を作るのを思いだしてしまいました。

  • 今回の付録基板の回路はCMOSスタティック回路
  • 私が数十年前最初に配属になったプロジェクトは既にCMOSだった
  • けれど、CMOSと言いながらもダイナミックな回路が跋扈していた。
  • さらに言えば前世代のNMOSのプロジェクトに駆り出されたことがある

今は無きNMOSの回路にお世話になった最後の世代かもしれません。また、今じゃお目に掛かれないダイナミックな論理回路で育ちました。当時はCMOSといってWELLを掘って2種類のトランジスタを作り分ける工程の多さも、スタティックなCMOSのトランジスタ数の多さもが、ともに許せなかったなかった時代だったです。それも自ら発する熱の中にNMOSが滅び、クロックの停止などを駆使して消費電力を下げるスタティックなCMOS回路の利点の前にダイナミックな回路が駆逐されるまでは、今から振り返えって考えると「一瞬」だったかも知れません。

古代に一瞬現れたけれどもほとんど失われた

技術であります。今ではスタティックなCMOS以外知らない世代ばかりだと思うので、ここで「古代技術」を書き留めおかないと「ミッシリング・リンク」になってしまうかも?ちょうど、ディスクリートでゲートを作るトラ技の特集に触発されたので、特集で使う同じディスクリートのMOSトランジスタを並べて動作させて比較してみつつ。

NMOS回路作るためには、NMOSといってもスレッショルド電圧の異なるトランジスタ(デプレッション型)が必要ですが、ディスクリートのデプレッショントランジスタなど売ってないだろ~。ショウガナイ、部品はトラ技の特集で購入したものを「流用」し、ディスクリートデバイスで作るので、ぶっちゃけ

デプレッショントランジスタを抵抗で置き換えて

も雰囲気はでるのかな、と。ダイナミックな回路をどこまで再現できるかは不明ですが(なんとなったら外付けキャパシタ使うか)、やってみるのは簡単。しかし、回路図エディタとSPICEくらいは欲しいものです。やはりLTspiceかなあ。LT(アナデバ社)のデバイスを使うためのシミュレータなので、後で、何かアナデバ社のチップを応用するからね、と心でいいわけしつつ、多分3年ぶりくらいで、起動してみました。

LTspice

このツールは、例によって、起動時にバージョンチェックが走り、アップデートを促されるです。しかし、3年ぶり、失敗します。この年月の間に、LT社はアナデバ社に買収され、LTspiceのWebサイトのURLも変わってしまったのだな~と、時の流れを感じます。しっかり最新版のLTspiceをインストールしなおしました。

3年もつかっていないと、使い方まったく忘れています。大体、回路設計苦手で、回路シミュレータ自体サッパリな私です。あれこれ思い出しながら、とりあえずインバータを1個書きました。

トラ技の付録基板の、PチャネルのMOSトランジスタBSS84は、LTspiceのpmosでもサポートされていました。プルダウンメニューからトランジスタを選択すればMOSモデルパラメータが設定されます。便利。しかし、NチャネルのBSS138は見当たりません。どこかにBSS138のMOSモデルパラメータが「落ちていないか?」と探したところ、以下のホームページにありました。

All-About調査室 Annex  画素回路の市販部品集め

ありがとうございます。しかしパラメータには「出所不明」とのコメントもあります。全幅の信頼、というわけにもいかなそう。なお、上記の記事はCircuit Makerでシミュレーションをかけておられます。MOSモデルパラメータの書式自体は問題なく読めるのではないかということで、コピペさせていただいたパラメータをbss138M.LIBという名でファイルに落として上のようにインクルードして使わせていただきました。

手順としたら、DC解析とかやってからでしょうが、今は実機のDC測定結果なども取得できる環境にありません。後で考えることにし、手っ取り早くトランジェント解析を一発走らせてみました。上の図の入力につなげたV2電源から1.5V中心で1.5V振れ幅の1000Hzの入力信号をインバータに与えてみます。当然、出力OUTには

方形波

が現れる筈。RUNしてみましょう。入力側の青線がちと見難いですが、期待どおりの「波形」な感じ。

とりあえず、回路図を描いて、SPICEシミュレーションできる「雰囲気」だけはしてきました。「実機」の測定環境はまたこの次ですかね。しばらく、トラ技付属基板の半田付けをしてスタティックCMOSのゲートを用意しつつ、古代の回路のレプリカを検討しようと。。。

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