連載小説 第47回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>

サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。わけあって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品のICを販売する米国現地法人のSS-Systemsへ赴任しちゃいました。食生活の変化による水平方向成長をものともせず、同期の工作君とトム君とも一緒に毎日忙しくやっています。青井倫吾郎さんからの電話が途中で切れてしまうという不運を克服し、再会を果たしました。私って絶好調かも・・・。

 

 

第47話 イエノミします?

 

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社で10年になりました。文系ですが技術製品(半導体)を販売するアメリカの現地法人SS-Systemsへ赴任。しかも、同期の富夢まりお君も島工作君も一緒で、何てステキ!と思いきや、思わぬ落とし穴が・・・。だって美味しいレストランが多すぎて、私の見事な肉体(笑)にも水平方向成長化という由々しき異変がおこり、偶然再会した“青井の君”に私だと認識してもらえない事態に・・・。しかし、数々の困難を乗り越え、日本食スーパーのお味噌売り場で青井倫吾郎さんと再会を果たしました。

 

「青井の君」こと、青井倫吾郎さん(AKA Ringo Aoi)に自宅と会社の電話番号をお聞きした私は、週明けの月曜日に早速、同僚のロバート・チェン君を捕まえ、その情報を伝えました。因みにAKAというのは also known as の略で、通り名としてこうも呼ばれている、というような意味です。私のように本名も通り名も同じ人には不要ですが、同期の富夢まりお君のような人は Mario Tom (AKA Tom Tom) 、島工作君は Kosaku Shima (AKA Ko Shima) みたいに書かれたりします。

結局、ロバート君はAppleで働く倫吾郎さんと連絡を取ってキーパーソンを紹介して貰い、サイコーエジソン株式会社のSRAMをApple に売り込む事に成功しました。ビジネスボリュームはそれ程大きくはありませんでしたが、その後、i pod, i phone, i pad と立て続けに世界を変えるアイテムを発売した企業との繋がりを作ったという意味では、スゴイ成果だったと言えます。そのプロセスで一役かったワタクシ詠人舞衣子も間接的ながら多少なりとも世界のイノベーションに貢献できたのではないかと思っています。(って大げさでしたね(笑))

しかし、この時代から10年以上も経ってのことですが、実際、i phone にはサイコーエジソン株式会社の電子デバイスが数多く使われ、革新的な製品の世界的な普及に寄与したのは事実です。その時期になると、半導体よりは液晶表示体や水晶部品が多く使われたのでしたが、それはまだまだ先のお話ですね。

 

さてさて、Appleへの売り込み成功は良しとして、私と倫吾郎さんがどうなったかについて、一応お話しておきましょう。

そもそも、私の水平方向成長によって、倫吾郎さんが私を詠人舞衣子と認識できなかったところに発端はあるのですが、“認識できずにすみませんディナー” を約束しつつ、電話回線の不調で宙ぶらりんになっていたディナーを改めて決行する事になり、たまにはステキなおフランス料理?と思いきや、「江戸は東京」にて、居酒屋的メニューとなったのでした。ま、気負う事なく日本食レストランでお会いできたので、すれ違ってしまっていた誤解も解け、これまでで一番リラックスしてお話ができたという次第です。

 

「舞衣子さん、ようやくきちんとお会いできてボクは嬉しいです」

「私もです、倫吾郎さん」

「何だか、これまですれ違ってしまったようで、申し訳ありませんでした」

「いえ、私こそ、変な勘違いをしてしまって・・・」

「今日は大丈夫でしょうかね」

「ええ、大丈夫だと思います」

「舞衣子さんは何かお飲みになりますか?」

「そうですねえ、お茶でいいでしょうか」

「じゃ、ボクはビールといきたいところですが、車なのでCokeで」

「私もビールといきたいところなんですけどね」

「まあ、今日はお互い車ですから」

「じゃあ、今度車でない時にビールなんていいですね」

「そうですね。でも、カリフォルニアでは殆ど車しか移動手段がないですから」

「じゃあ、今度、イエノミしましょうか」

「イエノミ?」

 

注: 当時、イエノミというような言葉は一般に流通していませんでしたが、そんな感じだったという事で・・・

 

「家で飲むって事ですね、ウフッ」

「家で?」

「そうです。家なら酔っ払っても大丈夫でしょ?」

「家で?」

「ええ、家で、ウフッ

「どこの家で?」

「まあ、それは誰かのおうちで、ですね」

「誰かの、ですか」

「じゃあ、こうしませんか。私のお茶が先に来たら私の家で、Cokeが先に来たら倫吾郎さんのおうちで、どうでしょう」

「そうですね。それもいいかも知れません」

「じゃ、決まりですね、ウフッ

 

という会話がありまして、ちょっとドキドキしながら待っていると、ウェイトレスの方が、二つ一緒に運んで来て下さいました。あら、どっちが先にもなりません。

 

「舞衣子さん、この場合はどうしたらいいんでしょうか?両方一緒に来ました」

「そうでしたね。おバカなルールでしたね(笑)」

「あはは」

「あはは・・・」

 

で、それから先がどうなったか、ですか? その辺はまた、おいおいお話していく事にしますが、波瀾万丈の幕開け? であったとだけ申し上げておきます。

 

 

 

 

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