お手軽ツールで今更学ぶアナログ(168) AD22151ホールセンサーに電磁石を近づけてみる

Joseph Halfmoon

アナデバ社(ADI社)のWeb記事『StudentZone』2023年7月号の日本語版がアップされていたので、その実習開始です。今回の対象デバイスはAD22151リニア出力磁界センサーです。磁界に比例した電圧を出力するデバイスなので、スロットルとかペダルとかの位置検出に「もってこい」なデバイスらしいっす。でも実験するのに磁石がいるな。

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アナデバ様のStudentZone 2023年7月号記事(日本語版)へのリンクは以下です。

ADALM2000による実習:磁気近接センサーの基本

また実験に使用されているデバイス、AD22151の製品ページ(日本語)は以下に。

AD22151G 磁界トランスデューサ、リニア出力

AD22151は、アナデバ社の学習用アナログ部品キットADALP2000に所蔵のデバイスであります。表面実装パッケージ品なのでADALP2000では、BOB(ブレークアウトボード)に搭載されております。

毎度のことなんだが申し上げたい儀これあり

ADALP2000のBOBが登場する度にブツブツ言っている気がするんであります。手元のADALP2000のBOBはクセがあって、デバイスとDIP化されているピンが90度ローテイトしているのは構わんのですが、元のデバイスのピン配と「鏡像」な関係になっているのであります。秋月殿のDIP化ボードなどでは90度ローテイトしているのは同じですが、ピン配はそのままなのに比べるとチト見ずらいです。

そして見ずらいだけでなく、Student Zoneの記事の「実体配線図」、元のデバイスのピン配通りに配線してあるんであります。BOB使っているときに実体配線図を鵜呑みにして配線するとチップが壊れるかもしれませんて。

電磁石の作り方、目から鱗

頭の固い年寄です。インダクタンス(コイル)に電流流せば磁界が発生するということは記憶しつつも、ADALP2000所蔵のインダクタ使えば磁石が作れるじゃん、というあまりに端的な手段を考え付きもしませんでした。今回の実験じゃ、アナデバ様は100μHのインダクタ(コイル)に電流を流してテスト用の磁界を発生させる電磁石としてます。

ただしです。またもや実体配線図です。1枚のブレッドボードにコイルとAD22151を並べて(それもかなり遠くに)配置してあります。AD22151はパッケージに対して鉛直方向の磁界に反応するので、この配置じゃ検出するのはかなり辛いっす。多分、遠すぎて検出できませんでしょう。

電磁石の方は別基板にして、AD22151のパッケージ表面にコイルをひっつけられるくらいに近づけられるようにしておかないと「リニアに電圧が変化する様子」が観察できそうにありません。

アナデバ様記事では、電磁石の電源にADALM2000の+電源(5V)を使い、AD22151の電源はW1で賄う設定になってました。当方では、電磁石を「空間的に自由に動かし」たかったので、電池(006P)から5V作って与えてます。006Pなので電流がチト心配でしたが、実測したら140mAくらい流れていたので、短時間の実験ならまあいいか、というところ。いい加減な。

実験その1

実験に使った回路が以下に、左の小さいブレッドボードが「電磁石」基板で上の006P電池に「乗っかっている5V電源」から電源もらっています。単純な磁石なので、006Pそのままでもありかと思うのですが、スイッチでON/OFFできて既存配線が引き出せているので5V電源介して使ってます。

右側が、AD22151のテスト用回路っす。測定は例によってADALM2000ではなくAnalog Discovery2を使用。AD22151_DUT_wCOILa

まずはオフセット電圧の調整など無の素の状態、磁界をかけていないときの電圧出力が以下に。MAG_OFF

一方、電磁石をONにして、AD22151の直上にかざしたところが以下に。MAG_ON

電磁石を近づけたり、遠ざけたりすると「連動して」グラフが上下に動きますな。予定通りです。ふわふわした動きが素敵。

さて、磁界かけないときの出力電圧が大分Vcc/2に近いので、これを0.5V付近まで「引き下げて」なるべく広い電圧範囲で動作するようにアジャストせよ、というのが実験その1の課題です。

以下、「言われた通り」に測定して、「言われた通り」に手を動かして(といって計算は電卓ですが)アジャスト用の抵抗R4の値を求めてみました。まったく頭を使ってません。。。

Vcc: 4.84V
Vref: 2.39V
Vcm: 2.12V
Voutz: 1.75V

Vr2=Vref-Vcm=0.27V
Ir2=Vr2/235Ω≒1.15mA
Ir3=(Vcm-Voutz)/100kΩ=0.37/100k=0.0000037A
Vshift=0.5-Voutz=-1.25V
Ishift=Vshift/100k=-0.0000125A
Ir4=-Ishift
R4=(Vcc-Vcm)/Ir4=(4.84-2.12)/0.0000125=2.72/0.0000125=217.6kΩ

217.6kΩね。本文の「準備するもの」の中に200kΩが含まれているので、最初から200kΩになることがチラチラしてるんでありますが。一応、想定通りに近い値が出てよかった(考える気がないだろ~自分。)

さてR4=200kΩを挿入して出力電圧をアジャストした結果が以下に。AfterADJUST

目標の0.5Vまでは落ち切ってませんが、まあそんなもんかいという値?いいのかそんなことで。

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