お手軽ツールで今更学ぶアナログ(28) LM386使用スピーカアンプの特性

Joseph Halfmoon

前々回の100円ショップのスピーカ、BBC micro:bitに直結で鳴らしていて思ったんであります。ざわざわした環境じゃ、もうちょっと音量ほしいぜ、と。対策はちゃんとうって(?)ありました。秋月通商殿から「モノラルパワーアンプキット」というのを仕入れてあったのです。最大出力700mWを誇る(?)スピーカ駆動用のアンプキットです。でもね、注文入れたのがチト早過ぎました。

※「お手軽ツールで今更学ぶアナログ」投稿順 indexはこちら

私は誓って回し者ではありませんが、秋月殿の通販サイトへのURLをまずは掲げておきます。

LM386G使用モノラルパワーアンプキット

電池でも駆動可能なオーディオ用アンプ、LM386のオリジナルはナショセミだったと思うのですが、「ナショセミ」も今は昔、TIになってしまいました。購入したキットには互換品の一つである台湾UNISONIC社製のデバイスが搭載されていました。しかし本稿のために再度、秋月殿の通販サイトへいって愕然(小心者です。)1文引用させていだきます。

※ディスコンになった新日本無線のNJM386BDを大量在庫しているため、キャンペーンで本キットにNJM386BDを1個お付けいたします。次回ロット分よりNJM386BDのみになります。お求めはお早めにどうぞ。2021.1.20

なんと私が発注した直後にキャンペーンが開始されており、もう一つのソースである新日本無線製のLM386相当のチップも付いてくる、と。どうせ今頃になって組み立てているので、もっと後になって発注すればよかった。後の祭り。

気を取り直して、まずは組みたて前のキットの様子から。

LM386Kit

約5cm角の小型基板で、まあ半田付けの不得意な私でもなんとかなる程度の部品点数、とくに難しい部品もありません。組み立て完了後の様子をアイキャッチ画像に掲げました。さて秋月殿のサイトからもう一文引用させていただきます。

※周波数特性はAnalog Discovery 2で測定しました。アンプの周波数特性を簡単に測定できる便利なツールです。

そして周波数測定結果のXLSXファイルが置いてあります。「お手軽ツール」の代表選手としてAnalog Discovery2を使わせていただいております。これは手元でもやってみるしかありますまい。ダウンロードしてきたEXCELファイルには20Hzから50kHzまでのゲイン測定結果が2つ記載されていました。

  • gain_highタブには20Hzでは32dB付近だが、100Hzを越えたあたりから40dB弱でほぼフラットなグラフ
  • gain_lowタブには20Hzから50kHzまで27dB弱でフラットなグラフ

こちらでの測定の様子が以下に。
LM386DUT

中央、上部にあるのがLM386のアンプキットです。右上の006P電池から5Vにレギュレートする電源(これまた秋月製キット)から5Vをもらっています。直接006P電池から9Vをもらっても動くと思う(その方が本来の姿かも?)のですが、折角電源組み立てたのでことさらに使ってみました(スイッチ入っているのでON/OFF楽だし。)右端に見えている配線群が 本体が見えていないDigilent社Analog Discovery2の接続端子群です。今回は以下のような接続です。

  • オシロのチャネル1をアンプの入力側
  • オシロのチャネル2をアンプの出力側
  • 波形ジェネレータ1をアンプの入力側

この設定でボード線図を測定すれば秋月殿のデータと同様なものが測定できる筈。そこでいろいろ迷ったのが、アンプの負荷です。

  1. アンプ出力には負荷抵抗など加えない(実際にはチャネル1内蔵の500kΩが負荷になる)
  2. アンプ出力には例の100円ショップスピーカ(白い丸いケース入り)を接続。一応、8Ω0.5W
  3. アンプ出力には、ほぼ8Ωの抵抗をダミーとして接続(定格のW数ちょっと心配)

アナログ音痴の私なのでどれが正しいのか判断つかないので、みなやってみました。後で測定結果を掲げますのでご確認ください。

ボード線図の測定の前に、入力信号の振幅を決めてみました。実際には付属の説明文書から最大のゲインは、39dBと知れています。その状態では入力振幅の約100倍近くの出力が得られるであろう筈。それに対して5V単一電源でアンプを動かしているので単純計算、入力振幅が25mVを越えると電源電圧を振り切れてしまう。まあ実際にやってみました。

このボードには、ゲインに関わる設定が2つあります。

  • ゲインの切り替えジャンパによりアンプのゲインLOWとHIGHを切り替え
  • 入力信号に10kΩの可変抵抗

ジャンパはLOWとHIGHの両設定で測ることにしました。可変抵抗は入力信号が最大になる側まで振り切った状態といたしました。以下入力側が黄色、出力側が青です。

ゲインLOWの時間波形:入力振幅10mV, 1kHz

in10mV1kHzLowWAVE

見た目ですが、波形は歪んでいません。当然か。

ゲインLOWの時間波形: 入力振幅100mV, 1kHz

in100mV1kHzLowWAVE入力振幅を100mVまであげると上のように波形が歪ます。ゲインLOW側であれば、なんとか入力振幅50mVくらいまではイケそうな印象。

ゲインHIGHの時間波形:入力振幅10mV, 1kHz

in10mV1kHzHighWAVE

ゲイン設定をHIGHにしても入力振幅10mVなら波形は歪まない感じ。これまた予想どおり。

ゲインHIGHの時間波形:入力振幅5in50mV1kHzHighWAVE0mV, 1kHz

ゲインHIGHだと、入力振幅50mVでも波形は歪んでいます。5V電源だと出力はピークツーピークで4Vまでは出ないようです。3Vちょっとくらい。

こんな感じだったので、入力振幅は切り良く10mV固定としました。そんなんでよいのか。

ゲインLOW設定のボード線図

秋月殿のデータは20Hzから50kHzだったのですが、周波数どのくらいでゲインが低下し始めるのか知りたかったので測定は500kHzまでとしました。目安としてだいたい1kHzのところにカーソルをおいてゲインを読み取れるようにしてあります。

最初は負荷無接続(実質500kΩ)のとき

in10mV1kHzLowWAVEno

ゲインはほぼ26dB強でフラット。秋月殿の資料と一致。500kHz付近で3dBくらい落ちてくる。

8Ωスピーカを接続したとき

in10mV1kHzLowWAVEspkフラットなところのゲインは変わらず。しかし、周波数の低いところでもゲインが低下。この原因を考察するに、出力に入っている470uFのキャパシタと負荷の8Ωが「ハイパスフィルタ」として動作しているんじゃね、と。でも自分で計算しなくてもちょっとクリクリやれば直ぐ分かります。良いツールを公開していただいていてありがたい限り。

OKAWA Electric Design CRハイパス・フィルタ計算ツール

雰囲気でてるんじゃね。でも、それくらい自分で計算しろよ。。。

ダミー負荷(8Ω抵抗)を接続したとき

Bode10mLowDummy8スピーカを接続したときとほぼ同じ。当然か。

スピーカとダミー負荷はほぼ同じ結果ですが、実験している最中、狭い小さな部屋で耳障りな音で鳴り続ける実スピーカ負荷と、まったく無音のダミー負荷と「実験環境」は大きく違います。スピーカでやっているときは、とてもうるさい騒音。ボード線図の測定完了即スイッチオフ。個人的には静かに実験できるダミー負荷に賛成。ただ、ダミー負荷に流れる電流考えるともっと電流流れても良いようにしておかないとイケなかった気がします。

ゲインHIGH設定のボード線図

ゲインHIGH、ダミー負荷のときの測定結果のみ掲げます。

Bode10mHighDummy8

まあ結果的に、秋月殿の資料にそっけなく書かれている

ゲイン… 26dB/39dB

小さい方の数字がLOW設定ボリューム最大で、大きい方の数字がHIGH設定ボリューム最大、と解釈すれば、資料その通りであったことを確認した、ということで良いのかな。

ついでに、ノイズの測定結果。入力にDC0V与えたときの2kHzまでのスペアナ測定結果であります。

LOWのとき。

SPE0INLow

HIGHのとき

SPE0INHigh

ゲインをあげればノイズもあがると。当然か。

しかしま、やっていてもアンプに関する知識不足を痛感。勉強しないとな。相当昔にダウンロードしただけで積読状態のアナデバ様の

オペアンプ大全

読もう。ページの多さに圧倒されてしまうんだけれども。。。

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(27) BBC micro:bitのスピーカ駆動波形 に戻る

お手軽ツールで今更学ぶアナログ(29) OpAmp大全とAnalogDialogue へ進む