部品屋根性(1)

部品屋さん同士の会話を聞いているとよく「イチケー」「ニケー」などという言葉が出てきます。数の話のようなので「ニケー」というから二個なのかな、と思われるかもしれませんが、「ケー」はKで、接尾辞のキロ、1000の単位です。だから、「ニケー」などと言われたらそれは2000個のこと。2000個と言われると大量に思われるかも知れません。

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しかし、値段の張る一部を除き、この業界の大部分では「イチケー、ニケー」は数の内に入らない、と言われてしまいます。ま、実際、一円、二円といった単価の部品もままあるからです。では、1個2個なら只みたいな値段で手に入るか、というとそうでもありません。既に「ある」品物であれば、それこそ無料でサンプルを分けてくれることもありますが、量産時なら1個数十円といった部品が、試作品は1個何十万円相当ということもあり得ます。BtoBのビジネスなので、予め仕様がきまっている「標準品」だけでなく、相手先の仕様に合わせた部品を製造することが多いからです。半導体などでは、マスクなどと呼ばれますが製造するための「型代」がかかるからといってよいでしょう。古い製造プロセスでは数十万円とか数百万円くらいで一部仕様を変えられることもありますが、最新の製造プロセスで完全新規ともなると何億円もかかることがあります。もちろん、物のコストだけでなく設計料なども掛かってきます。昔、ちょっと特殊な仕様の部品が必要になって、試作品製造用に1000個と、量産を考えて10万個の見積もりを同時にお願いしたことがあったのですが、10万個の値段は1000個の時の値段の3倍でした。対数で値段付けているのかい!こちらも部品屋なので事情は分かっていたつもりですが、ちとツッコミたくなりました。それに、一度量産体制を整えるととても安く作れる、というより少量作る方が難しかったりするのです。半導体の製造はウエファーという円盤単位ですが、1ロットは25枚、とかいう数量だったりします。そして小さめのチップだと、1枚のウエファーから何万個も取れたりするのです。1ロット注文すると何十万個といった数が出来てしまう。だから部品屋の世界では、年間一億個といった数量でも普通にハンドリングされています。物も小さいことが多いのでそれほど嵩張らないのは救いですが。

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