鳥なき里のマイコン屋(3) ARMのお供にレガシー8051説

前回、米、台湾、欧州などを代表するMCUメーカ3社を調べていましたが、そこで思いついたのが、以下の説であります。

8ビットのレガシー8051は死なず、実はARMコアの32ビット製品ラインのお供に蔓延っている説

お供なのかどうかは別にして、前回とりあげた3社中3社該当(最初3社中2社と誤解していましたが、よくみたら3社とも8051製品もっていました)、本当でしょうか(自分の説だろ~)。ARMコアをMCUに採用している会社を調べるついでの「仮説」として調べてみることにしました。

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今回、調べてみたのは、米国Silicon Laboratories社です。SiLabsと略して書かれる場合が多い会社です。多分ですけれども、多くのマイコン屋さんが、自分のところのマイコンを開発しているシーンでも、実はこの会社のUSB-シリアルブリッジを使っていた、というケースが非常に多いんじゃないかと思います。簡単にUSBにつなごうとなったときのファーストチョイスじゃないでしょうか。そのせいでUSBブリッジの会社みたいな変な思い込みがある人が多いのではないかと想像するのですが(私がそうです)、立派なMCUの会社です。センサもあり、無線もあり(つまりはIoT)、車載もやっている「王道」なMCU会社であります(何が王道なんでしょうか、人によります)。しかし、なぜに今回この会社を取り上げたかというと、Z-Wave無線を取り上げた回で、Z-Wave大丈夫かというようなことを書いてしまった後、そういえばSiLabs社はZ-Wave無線にかなり深くコミットしているよな、と思ったからです。なにせ、Z-Waveの仕様書とか、認証の取り方とか調べているとSiLabs社のサイトに行きつきます。Z-Wave大丈夫?という問いはSiLabs大丈夫?という問いになるのか、と一瞬思いました。しかし、結論から書きましょう。

大丈夫、(Wifi, Buletooth, ZigBeeなどいろいろ)やってますよ。

Webサイトの扱い的にはZ-Waveは下の方に見えます。「一蓮托生」ということはないようです。(ますますZ-Wave大丈夫?とは思いましたが)

さてこの会社のMCU製品ライン、これは仮説がピッタンコでした。

  • 8ビットMCU製品のコアは8051
  • 32ビットMCU製品のコアはARM Cortex-Mシリーズ

製品ラインの一覧表など見ていると8ビットは、EFM8というコアとC8051と2種があるように見えるのですが、EFM8というのは8051と命令セット互換、SiLabsが高速化(3段パイプライン)したいわば強化版の8051です。オリジナルの8051は確か無理やりパイプラインといいつつ、実際はROMのアドレスが出てくるのが、前のマシンサイクルに掛かっているからパイプラインみたいな苦しい説明で、実際はほとんどパイプラインじゃなかった、というのが個人的な意見です。SiLabs設計は素直にあるべき姿で高速化したように見えます。いまどき再設計するなら当然だよな、とは思いますが。でも「8051の命令セット互換でいまどき再設計した」という事実を見れば(どこまでを今時というかですが、40年ほどの歴史のある8051なので。。。)力入っているな、と感じてしまいます。周辺もADコンバータなど含めアナログ充実、デジタル周辺回路も充実、センシング、LCD表示にも対応、汎用のインタフェース以外に車載向けの通信インタフェースもサポートと、この会社があれば8051現役バリバリな感じで、この先も8051盤石じゃないかとも思えてきます。

一方、32ビットはというと、完全にARM Cortex-Mシリーズです。すがすがしいMCU一本ぶり。MCU向けコアといえるMシリーズでM0+、M3、M4と3種のコアをそろえ、周辺回路も8051同様の充実ぶりです。MCUメーカは一般に、ROM/RAMのサイズやピン数などで、多品種を展開するものですが、SiLabs社も同様、いや最近品種を絞り気味のところと比べると、多い気もしてくるくらいです。

とりあえず今回は仮説成立。次回はどこか?

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