連載小説 第150回 4ビットAI内蔵 “詠人舞衣子” の思い出

Momoe Sakurada
ペンネーム
桜田モモエ

<これまでのあらすじ>

サイコーエジソン株式会社の詠人舞衣子(よんびとまいこ)です。訳あって4ビットAIを内蔵しています。心理学科卒文系女子ながら先端技術製品の営業に携わっています。10年近くに及ぶ海外赴任(アメリカ、ドイツ)を経て、今は東京から海外市場をサポートしています。インターネット、IT機器、携帯電話など新しい技術や製品が日々生まれ、それらをサポートする我々の電子デバイスビジネス(半導体、液晶表示体、水晶デバイス)も大忙しですが、台湾や韓国などの新興勢力も台頭してきて、日本の電子デバイス業界も大きな影響を受けていました。

(日本半導体の栄光と挫折?『詠人舞衣子』総目次はこちら

 

第150話 携帯とカーエレ

私、詠人舞衣子(よんびと まいこ)は、サイコーエジソン株式会社の24年生。文系ですが技術製品(半導体などの電子部品)の営業に携わっています。10年にわたる海外赴任生活(アメリカ、ドイツ)を経て東京勤務中。世界のIT産業はどんどん変化していくので、ビジネスも大忙し。我々の半導体の売上げも2000年にはサイコー!だったのですが、その後、状況は変化していきました。市場がどんどん動いていく中、我々の電子デバイス営業本部にも変化が。

 

「それでは、それでは~、期待される新規2部門の責任者を私の同期君たちが担当する事を祝して~、カンパ~イ!」

「かんぱ~い」

「かんぱ~い」

という事で、同期一かわいい私がご発声をさせて頂きまして、トム君と工作君とビールの一夜を開始したという次第です。あ、営業本部の同期で女子は私だけですけど(笑)

前回お話しした通りですが、電子デバイス営業本部の中に、期待されるマーケットに特化した営業部門を二つ新設する事になり、工作君が携帯電話市場、トム君がカーエレクトロニクス市場の営業部長を担当する事になったのです。

「それにしても、俺たち同時に発令されるとはな」

「そうなんだよ。ボクは何にも言われてなかったから、ちょっとびっくりしたよ。トムは?」

「いや俺も聞いてなかったから、え、そういう事?って感じさ」

「ねえねえ、それはそうと、二人とも、地域の営業はどうなっちゃうの?」

「俺の方の名古屋はカーエレ分を除くと売上げが小さくなっちゃうんで、大阪に統合されちゃうんだってさ」

「そっかあ。じゃあ、名古屋営業部長はもういなくなっちゃうんだ」

「そういう事だな」

「じゃあ、トム君は名古屋を拠点にしながら、カーエレクトロニクス営業部長をやるって事なの?」

「そうだよ」

「ていう事は、これまでとあんまり変わんない?」

「いや、変わらないのは、トヨタとかデンソーとか、これまで名古屋でやってきたカーエレ分だけど、他のエリアのカーエレ分も担当する事になるんだ」

「そっかあ。東日本も西日本もやるなら面白そうじゃん。トヨタ系だけじゃなくて、日産ホンダマツダもやるんでしょ?」

「ああ、そうなるな。色々開拓の余地はあるよな」

「海外はどうなるの?」

「うん、そこはこれから決めていくんだけど」

「ふうん。現法もあるし、海外営業もあるから、海外分は業務分担がちょっとややこしいね」

「まあな。でも、まずは、海外営業部と協力してやってくよ。舞衣子にもまたあれこれ世話になるかもな」

「任しといて。ヨーロッパだと、ICも水晶も一応、電装系のお客さんに入り込んでるもんね」

「ああ、それはよく分かってるよ。そもそも俺たちがミュンヘンでやってた仕事だもんな」

「そうだね。それはそうと、今のところ、液晶は殆ど車載市場でビジネスがないでしょ。何か入りこめないの?」

「実はな、舞衣子、もしかしたらのスゴいのがあるんだよ」

「え、何それ?」

ヘッドアップディスプレイっていうアプリがあってさ」

「うん」

「フロントグラスの向こう側に表示が見える車って見た事ないか?」

「え、そんなのってあるの?」

「うん。これから段々普及するんじゃないかと思うんだけど、まだ一般的ではないね」

「それが流行るとうちの液晶が売れるの?」

「ああ、まだトラタヌだけど、一発当たったらでっかいぞ」

「トム、それってあれだろ、高温ポリ使うヤツだよな」

「お、さすが工作、よく知ってるなあ」

「うん、この前、展示会で見たよ。運転中に視点をいちいちインパネに移して計器類を確認すると危ないから、視点をあまり変えずに見える方法がヘッドアップディスプレイだろ?」

「へえ、そうなの、工作君。さすがよく勉強してるわね。ステキよ。うふっ!

「おい、舞衣子、うふっ!てなんだよ。やめろよ、工作に変な事言うの」

「何よトム君、焼き餅かしら?」

「焼き餅なんかじゃないよ」

「ステキな工作君にジェラシー感じちゃったのかしら」

「ジェラシーじゃないよ。でも、まあ、ちょっと、自分にもステキよって言って欲しかったっていうか・・・」

「へえ、そうなんだ。かわいい(笑)

「何言ってんだ、やめろよ、大の大人の男に向かって、かわいいとか」

「だって、かわいいじゃん」

「・・・」

「アハハ、舞衣子、もうそのくらいにしとけって。トムが珍しく静かになっちゃったぞ」

「うるせ~よ。静かじゃね~よ」

「分かった、分かった。ボクもトムもステキでかわいくてで、いいじゃないか」

「・・・」

「ま、いいわ。二人とも、許してあげる。うふっ」

「・・・」

「許してあげるわよ。うふっ」

「・・・もう何だよ、舞衣子、勘弁してくれよ。許してあげるって、何の儀式だよ」

「いいじゃないの。トム君、かわいいんだから」

「だから、やめろって」

「うふふ」

「アハハ」

「えへへ・・・」

という訳の分からない会話の先に工作君のお話がありました。

「ねえねえ、工作君、それで、携帯電話の客先を全部見る事になったら一体どうなっちゃうの?」

「そこなんだよねえ。すごい事になっちゃうと思うんだよ」

「そうだよな、工作。今でも殆どの国内携帯電話メーカーに液晶を売ってるだろ。それに加えて海外の大手もってなったら、やりきれるのか?」

「でしょでしょ。私、工作君が倒れちゃうんじゃないかって心配になっちゃうよ。トム君は売上げ伸びなくて倒れちゃうんじゃないかって心配だけど(笑)」

「いいよ、おれの心配はしなくても」

「ま、トムは売上げがなくても、明日があるさ、って歌いながらヘラヘラしてるだろうから、ボクは心配してないんだけど(笑)、自分の方はちょっと心配だよ。携帯系は全部スゴい客で、毎日色々な事が起こってるからなあ」

「だよな」

「だよね」

「ただ、一番大きなフィンランドのお客さんだけは別部門が専任でやってくれるっていう事だから、まだ助かるんだけどね」

「ああ、あれまで全部やったらホントに倒れるぞ、工作」

「うん」

「ねえ、工作君、ホントに身体気をつけてね。エネルギー摂取大事だからね。毎日、ビールちゃんといっぱい飲んでね」

「ああ、それだけは怠らない自信があるよ(笑)」

「アハハ」

「おほほ」

というようなおバカな会話が続き、夜は更けていったのでした。

その後、同期の二人がそれぞれのマーケットに特化した営業部長として成功したかですか?

それはまた、これからのストーリーを楽しみにしていてください。なにしろ、大河小説なので、まだまだお話は続いていくのでした。

 

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